2008年03月07日発行1025号

【米海兵隊暴行事件 / 被害女性に責任転嫁する「産経」 / 悪は100%米兵、米軍基地だ】

 沖縄の米海兵隊員による女子中学生暴行事件について、一部メディアは「被害女性にも責任はある」とする言説をたれ流している。少女の側にも落ち度がある事件を基地問題に結びつけるのはおかしい、というわけだ。これはメディアによるセカンドレイプである。性犯罪被害者の人権を貶めてでも日米軍事同盟を守る、ということなのだ。

〈リード終〉

 2月18日、沖縄の地元紙『琉球新報』は「それでも少女に非はない」と題した社説を掲載した。こんな当たり前のことを新聞が社説で訴えなければならないのは、インターネットの掲示板などに被害女性を傷つける書き込みが絶えないからだ。

 「ついていくやつがわるいじゃん。普通の知能があればついていかんだろ、馬鹿か」「中学生が夜に繁華街を歩くのもどうかと思う」「つうか沖縄の教育はどうなっているんだ? 知らない奴にホイホイついて行けとでも教えているのか?」等々。

 事件に抗議する運動団体を揶揄した書き込みも多い。たとえば、「男や男社会が悪いという前に、その悪い連中から身を守る術を教えるのが本来のフェミニズムの仕事じゃないのか? 無防備宣言ですか?」といった具合である。

「しつけ」に矮小化

 被害女性に対するこのような誹謗中傷を煽動し、基地撤去を求める声が広がることを防ごうとしている連中がいる。産経新聞に代表される体制御用メディアのことだ。

 「『反基地』勢力が叫ぶいかがわしさ」と題した産経新聞のコラムをみてみよう(2月13日付 / 執筆者は同紙客員編集委員の花岡信昭)。花岡は今回の事件を「反米」「反基地」勢力が政治利用していると批判する。そして「一部メディアのヒステリックな伝え方」にも問題があるとし、「事件は事件、安保は安保、と冷静に切り離し、日米同盟の死活的な重要さに思いをはせてこそジャーナリズムだ」と論じている。

 花岡は被害女性の身を案じるふりをして、事件を「政治闘争の具」にすべきではないと言う。しかし彼が被害者の人権など何とも思っていないことはコラムのしめくくり部分を読めば明らかだ。

 いわく「『知らない人についていってはダメ』。筆者などの世代は子どものころ、親から口うるさく言われたものだ。(中略)夜の繁華街で米兵から声をかけられ、バイクに乗ってしまう無防備さ。この基本的な『しつけ』が徹底していなかったことは無念、という以外にない」

 米軍基地があるゆえの犯罪を被害者側の「しつけ」の問題に矮小化することで、事件が名護新基地建設などの米軍再編問題に及ぼす影響を最小限におさえる−−花岡の一文からは日米両政府の薄汚い意図が透けて見える。

まさにセカンドレイプ

 花岡というゲス野郎に一言言っておく。性犯罪の責めを負うのは加害者であって、被害者ではない。襲った側が100%悪いのだ。被害者にも落ち度があったと書き立てる貴様の行為はセカンドレイプという人権侵害なんだよ。

 花岡はコラムの中で「基地との共存共栄以外に沖縄がたどるべき道はない」という本音をもらしている。「死活的に重要」な日米同盟を維持するためなら一部住民の犠牲は仕方ない。沖縄は基地被害を受忍せよ、というわけだ。日本政府にとってもこれが本音なのだろう。

 体制御用メディアが何と言おうが、今回の事件を沖縄の米軍基地の問題と切り離して考えることはできない。頻発する米兵犯罪の背景には戦争の影がある。「人の殺し方を自慢げに話す人や、いつもすきを狙うような鋭い眼光の人がいて、緊張する。訓練された兵士は、スイッチが入ったら止められない」。ある基地従業員はこう証言する(2/16沖縄タイムス夕刊)。

 特に、明日にでもイラクやアフガニスタンの最前線に送られる海兵隊員の精神状態は尋常ではない。イラクでは米兵による残酷なレイプ殺人事件が発生しているが、そうした「人殺しの訓練を積んだ野獣」(2/19北谷町砂辺区自治会長の発言)との“同居”を基地周辺の住民は強いられているのである。

基地が起こした犯罪

 沖縄では今回の事件以降も、飲酒運転や住居侵入容疑で米海兵隊員が逮捕される事件が起きている。さらには米陸軍兵によるフィリピン人女性暴行事件も発覚した。基地がある限りくり返される犯罪に住民が抗議し、海兵隊撤退・基地撤去を求めるのは当然のことだ。それを「政治闘争」とあげつらう連中こそ「いかがわしい」というものだ。

   *  *  *

 海上自衛隊のイージス艦が漁船と衝突し沈没させた事件でも、産経新聞はとんでもない権力迎合ぶりをみせている。「これらのニュースをNHKが連日トップで扱い、基地反対派を活気づかせているのは釈然としない」(2/20産経抄)というのである。

 人命よりも軍隊の体面を重要視する感覚には恐れ入る。戦争屋に媚びへつらう体制御用メディアとは、かくも非人間的な連中なのだ。 (M)

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