2009年02月20日発行 1072号

【雇用破壊がつくった「返済できない」現実 / 「奨学金ホットライン」に相談殺到 免除・猶予の申請で、学生支援機構・文科省を追及しよう】

 2月8日、各地のなかまユニオンなどが呼びかけた全国一斉の奨学金ホットラインは大反響を 集めた。日本学生支援機構(旧日本育英会)による機械的な返済金取り立てに、どうすればという本人・家族から相談が殺到。恐慌が若者らの雇用・収入を直撃 し、返済しようにも返せない実態が浮かび上がった。2月16日のワンデイアクションでは、返済金免除、猶予の集団申請を行ない、いまやただの貸金業になっ た同機構、そして文部科学省を追及する。

本島全域から相談 「ずっと悩んでいた」 沖縄

 2回目となる沖縄での奨学金ホットラインは、8日午後1時から5時までの4時間。面談と電話での相談体制をとった。

 会場となった那覇市内のNPO活動支援センター会議室には、12時40分に最初の相談者が訪れ、午後1時前には電話が鳴り始めた。またたく間に面談待ち の椅子が4人、5人と埋まる。午後4時過ぎまで息つく暇もなく窓口相談が続き、沖縄なかまユニオンの4人のスタッフは、連続3時間以上フル回転で対応を続 けた。電話での対応が間に合わず10件以上が留守電メッセージとなり、相談時間終了後の5時以降にも対応。申請書類を相談者に郵送するなどすべての事務作 業が終わった時、時計は午後8時を回っていた。

 この日、面談が16件21人分、電話が22件23人分、合計38件44人分の相談が殺到した。12月のホットラインでの14件18人を大幅に超える数 だ。

 家族・親戚まで督促

 相談者の多くが「支払わないとは言っていない。収入が減ったので毎月の負担を少しでも減らしてほしいと、請求先の民間委託会社に話しても一切相談には応 じてくれず、日本学生支援機構に電話しても、ナビダイヤルは通じない。どうしたらいいかわからず、ずっと悩んでいた」というものだ。

 一家族で3人が借用しているケースでは、親戚まで連帯保証人になっているため、奨学金問題が個人から家族、親戚まで及び催告通知や電話での督促が広がっ ている。

 「駐留米軍内のレストランで働いているが、専門学校で聞いていた条件と違い月収11万。とても支払えない」といった話から、「出稼ぎでトヨタ関連会社に 勤めているが残業代カットになり困っている」「本土の会社で11月末に解雇になり実家に戻ってきた。市役所の臨時採用になったが3月末までなので分割を安 くしてほしい」。「非正規・派遣切り」は、奨学金返済にまで影響している。個人信用情報機関への情報提供の同意書問題では、取り返してほしいという相談も あった。

 面談者は、本島北部の今帰仁村(なきじんそん)から2時間かけて訪れた人をはじめ南部の糸満市まで。電話では、最北・国頭(くにがみ)郡の辺土名など、 沖縄本島全域から相談が寄せられた。

もはや貸金業だ 「元本が減らない」 関西

 関西地方でも奨学金ホットラインが取り組まれた。大阪・京都・阪神地域のなかまユニオン分会事務所に電話が設置され、3か所で合計19件の相談が寄せら れた。

 当該返済者や家族の相談内容からは、厳しい生活の中で必死に支払っている姿が浮かび上がる。「200万円借りて残額100万円を支払っている。休職中で 最初は傷病手当で、今は月5万円の障害年金の中から支払っている」「派遣で働いていたときは支払っていたが母親が倒れて仕事を辞めざるをえなかった。実家 に帰りアルバイトの収入なので、国民年金の支払いを奨学金返済にあてている。4月以降は小学校の臨時講師の職に就くが1日2時間の仕事。とうてい支払えな い」など、切実な声だ。

 「延滞金が高い」

 学校を卒業しても就職先がないとの訴えも目立つ。大学院生の母親は「就職希望だが受け皿がなく、就職できていない。返済できない」。さらに「今はアルバ イトで支払えない。正職に就ければ返済できるのだが」との相談も。

 また、「延滞金が高い」「返済続けても元本が減らない」と、貸金業となり「奨学金」の名に値しない実態を多くの声が告発している。

 ホットラインを担ったなかまユニオンの井手窪啓一委員長は「みんな一生懸命に支払おうとしている。現実には卒業しても正規職がなく、非正規で働かざるを 得ない。返したくても返せない現実を突きつけられた。訴えを聞けば、返済は実態として無理がある。日本学生支援機構の奨学金制度はダメだと問題提起した い」と強調した。

就職先がない 猶予申請も却下 首都圏

 首都圏なかまユニオンが8日午後開設したホットラインには2件の相談があった。

 相談者の1人は大学院博士課程を修了した女性。受けた奨学金は500万円を超える。研究職として就職すれば返済は免除されるが、その募集は非常勤の1名 だけだった。研究職どころか就職先がない現状で返還のめどが立たない。友人を通じてホットラインを知り、相談に来た。

 もう1人は、猶予申請したが認められなかった。現在病気休職中のため日々の生活維持さえ困難な実情を訴えて、再申請手続きをするという。

 同ユニオン副委員長の伴幸生さんは「今回はネット上でしか事前告知できなかったにもかかわらず、相談が入った。返済できずに困っている若者はまだ多数い ると思う。今後も継続的に取り組み、問題を掘り起こしていきたい」と語った。
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