2009年09月11日発行 1099号

【試用期間中の解雇は無効だ 本田さんの裁判闘争始まる 若者の使い捨ては許さない】

 日本基礎技術社による試用期間中の不当解雇と闘う本田福蔵(よしぞう)さんの第1回口頭弁論が8月27日、大阪地裁で開かれた。若者使い捨てを許さぬ闘いの象徴となった裁判に、勝利を願う人々が多数つめかけ、法廷からあふれる状態になった。

意見陳述に拍手

 早朝から日本基礎技術本社前と大阪地裁前で、本田さんと日本基礎技術・本田君の不当解雇を撤回させる会が宣伝行動。地裁前でマイクを握った本田さんは 「経歴に傷がつかないからと自主退職を求められたが、『納得できない、仕事を続けたい』と返事したら解雇された」と試用期間中の解雇の不当さを訴える。

「解雇は死刑宣告」

 GS―YUASA関連企業合同労組の田中充朗委員長が「昨年7月、本田君は試用期間中に不当解雇された。おなじ日にもう1人が自主退職に追い込まれた。 日本基礎技術社は過去に何人もの新入社員を解雇に追い込んでいた。若者たちをいつでも解雇するのは許せない」、松下PDP争議を闘う吉岡力さんは「働いて いる者にとって解雇は死刑宣告に等しい。若者の夢と希望を奪うことは許されない」と訴えた。

 満員の法廷で本田さんは、不当解雇への悔しさと職場に戻りたい思いを陳述(要旨別掲)。「よかったよ」と声援・拍手が送られた。

悔しさが伝わった

 報告集会で田中泰雄弁護士は「社員としての地位確認と未払い賃金の支払いを求めている。今回会社側から分厚い答弁書が出された。本格的に論破していきた い。今日、本田君は自分の言葉で不当解雇についてしっかりと陳述できた。彼の早く職場に戻りたい気持ちに合わせて裁判長も訴訟指揮を考えているようだ」と 成果を述べた。康由美弁護士は「会社側の答弁書には数々のミスが並べられ、原告本人が一番つらい思いになる。傍聴など分厚い支援体制を」と呼びかけた。

 撤回させる会の深江伊都子事務局長は「早く職場復帰できるように会社内部の情報収集を開始する。関西ワンデイアクションや東京総行動などと連携して抗議・要請行動に取り組み、解雇を撤回させよう」と行動方針を提案した。

 参加者から「本田君の悔しさ、働きたいという思いが伝わってきた。未来ある若者がこんな形で切られるなんて私も悔しい」「ちょっと失敗したらすぐに首を切られる今の社会。この裁判は世直し裁判だ」と支援の声が集中した。

法廷外の闘いを強めて

 母の本田尚子さんは「若者の未来につながる闘いに支援を」と訴え、なかまユニオンの井手窪啓一委員長が「裁判と同時に会社に圧力を加えて、職場復帰に結びつく環境を作り出していこう」と法廷外の闘いの強化を呼びかけた。

 本田福蔵さんは「緊張したが、言いたいことは言えた。午後からの事業所要請行動でも自分の主張をしっかりと伝えたい」と職場復帰に向け闘う決意を表明した。


【本田福蔵さん陳述要旨 この屈辱的な現状を終わらせ 職場に戻り働きたいです】
 見習い期間途中に採用を取り消され、解雇になった本田福蔵です。私は日本基礎技術株式会社に対し、解雇の撤回を求め、職場に戻って働き続けることを強く望んでいます。

 私は入社するにあたり、できる限り早く技術者として認められるよう、現場での経験を積みながら、知識と技術を身に付けていきたいと考えていましたし、現在でもその気持ちに変わりはありません。

 私は研修時、新しい環境や生活に自分を合わせる努力を続けてきました。また、指導を受けたことについては改善しようと努力し、指導員からも日誌で「以前よりは良くなってきていると思います」と評価された点もありました。

 7月、同期生が現場に出ていく中で、「もう少し研修を頑張ってもらう」という話がありましたが、指導員からも来月には現場が決まると聞き、いよいよだと 思っていた矢先に突然呼び出されました。嶋田部長は私に就業規則を示し「見習い期間中、会社はいつでも採用を自由に取り消すことができる」と退職を強要し ました。そして「君がね、例えば警察沙汰になった方が解雇はし易い」と言われた時には本当に驚きました。

 その時提示された研修状況報告書には、「注意不足な行動を繰り返した」といった抽象的な表現で書かれてあるものもあり、疑問に思いました。特に「研修中に上手くいかないと機械に八つ当たりをして蹴っ飛ばした」など事実でないことが書かれていました。

 全く身に覚えがなく否定したのですが、聞き入れてもらえず、上司は「当てはまること、当てはまらないこともあるかもしれん。中身が違うこともあるかもしれんが、経営者を含めて実質的な判断をしたわけだから。お前の意思を聞きに来たわけではない」と言い渡したのです。

 続けて「次の就職のためには解雇より自主退職なら経歴に傷がつかない」と言われましたが、どうしても納得がいかず、自分から辞めることはできないと言うと、一方的に解雇にされたのです。

 その後、労働組合に加入しての1度目の団体交渉でも、「業務能力云々ということは会社としては一切考慮していない。適性という面で、という話」と能力面 は否定されなかったのですが、2回目の交渉で解雇理由書に「作業能力及び時間管理能力不足」「規範意識の欠如」が付け加えられていました。解雇理由がコロ コロと変わり、次々と理由が追加される会社側のいい加減さに私は憤りを感じました。

 さらに、会社側の働きかけによる自主退職について「見習い期間中に辞めてった子は何人もいます」と答えたこと、私が解雇された日に同期の一人が上司から の呼び出しを受け自主退職したことから、試用期間を第2の採用試験として使っていたのではないかと思います。正社員として入社できる貴重な新卒の機会をそ んな風に使われたのなら悔しいし、納得いきません。

 本来なら毎日仕事に励み、様々なことを体験していく時期。それが、同期や同世代の友人からも取り残され、親や周囲にもいらぬ心配や迷惑をかけ続けている、この屈辱的な現状を一刻も早く終わらせ、職場に戻り働きたいです。

 試用期間中解雇は自由であるという会社の誤った認識の下で行われた解雇は不当です。公正な判決で解雇を撤回していただきますよう、よろしくお願いします。
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