2010年04月16日発行 1129号

【「沖縄海兵隊=抑止力」はウソ 普天間基地は無条件撤去だ】

  普天間基地の「移設」先政府案は結局、沖縄県内に絞り込まれようとしている。その理由として持ち出されるのが、「沖縄に海兵隊が駐留し続けることが、日本 の安全保障の根幹にかかわる」(長島防衛政務次官・3/1産経)といった「沖縄海兵隊=抑止力」論だ。だが、基地や軍隊の存在は決して住民を守らず、むし ろ危険にさらす。さらに米軍サイドの文書や過去の経過から見ても、「抑止力」論はまったくのウソだ。

沖縄はベストではない

 モレル米国防総省報道官は3月30日、前日のゲーツ国防長官と岡田外相との会談について「日本防衛の義務を果たすために海兵隊は沖縄にいる必要があると 外相に伝えた」(3/31毎日)と述べた。平野官房長官も「(在沖海兵隊は)北朝鮮のミサイルの脅威、アジア全体の諸処の政治状況を含め、わが国の安全保 障上の観点から必要」(3/31沖縄タイムス)との見解を示した。

 だが、沖縄県民をはじめ日本国民はそうした説明では納得しなくなっている。そんな民意の変化を反映したのが、東京新聞(3/26付)と毎日新聞(4/1付)の記事だ。

 前者によると、普天間基地の「移設」が問題になった際に、在日米軍司令部作戦部が複数の移設候補地を比較検討した。その結果、「本土の自衛隊基地」が最 高点(満点)だったが、「自衛隊基地を有事に利用する日米合意は存在しない」として、結局は二番目の評価だったキャンプ・シュワブに絞られていくことにな る。沖縄(県内移設)はもともと「ベスト」ではなかったわけだ。

 また、昨年11月に米海軍グアム統合計画室が発表した「沖縄からグアムおよび北マリアナ・テニアンへの軍移転に関する環境影響評価書」では、沖縄は「活動の自由」がマイナス評価で、グアムよりも評価が低かった。

 後者は、2月17日の日米防衛当局幹部の会合でのスタルダー米太平洋海兵隊司令官の発言を暴露したスクープだ。同司令官は日本側からの問いかけに対し、 「実は沖縄の海兵隊の対象は北朝鮮だ。もはや南北の衝突よりキム・ジョンイル体制の崩壊の可能性の方が高い。その時、北朝鮮の核兵器を速やかに除去するの が最重要任務だ」と述べたというのだ。

 これらの事実が明らかにしていることは、いま語られている「沖縄海兵隊の存在意義」はすべて後付けの理由にすぎないということだ。「キム・ジョンイル体制崩壊時の核兵器の除去」に至っては、「沖縄海兵隊=抑止力」を自ら否定するものだ。

沖縄海兵隊は侵略部隊

 もともと米海兵隊は米本土防衛を任務とせず、敵国に先頭を切って侵入し陣地を確保する海外遠征部隊だ。沖縄海兵隊の歩兵大隊、砲兵大隊、航空戦闘飛行隊などの実働部隊は約6か月のローテーションで米本土やハワイから派遣されて来る。

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略す)と直接対峙している在韓米軍部隊が海外遠征をせずに韓国内にとどまっているのに対し、在日米軍、なかでも沖 縄海兵隊はイラクやアフガニスタンでの戦闘に参加したり、同盟国との合同訓練のためアジア太平洋各地を移動している。海兵隊はそもそも日本防衛のための 「抑止力」として沖縄にいるのではない。

 軍事評論家の田岡俊次も、「海兵隊の特徴は敵地にいち早く上陸する先制攻撃能力であり、北朝鮮のミサイルや中国の艦船などを防御、抑止する機能はない」(3/31沖縄タイムス)と指摘している。

 キャンベル米国務次官補も、98年当時、日本政府との非公式協議の中で「日本政府が、沖縄以外で海兵隊のプレゼンスを支える基盤を米側に提供することが 政治的に不可能だ、ということだろう。日本側の政治的事情と米側の作戦上の理由を混同してはならない」(09年11/15琉球新報)と述べ、「県内移設」 とならざるを得ないのは日本側の事情だと指摘していた。

「移設」ではなく撤去を

 宜野湾市が明らかにしてきたように、米軍のグアム統合計画によれば沖縄海兵隊全体を収容するだけの施設をグアムに造ることは既定方針となっている。にも かかわらず、米国はなぜ「沖縄海兵隊=抑止力」論を今になって主張しているのか。それは、せっかく自公政権時代に日本側の負担でできる約束の新基地をみす みす放棄する手はないからだ。

 鳩山内閣がいくら「県内移設」を決めようと、沖縄県民が受け入れることはない。また候補地として名前のあがった徳之島でも、3月28日に移設反対の住民集会が4200人の参加で行なわれている。米国は地元の合意のない案は受けないと言っている。

 普天間基地を「移設」をしようとすれば、いつまでたっても決まることはなく、危険な状態は解消されない。「世界一危険な」普天間基地は即時無条件返還(撤去)しかないことを日米両政府に対してはっきりと突きつけていかねばならない。
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