2010年04月23日発行
1130号
【解雇撤回求めるパナソニック吉岡争議 なかまユニオンが労働委員会申し立て 労働者・労働組合の権利守る】
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パナソニック・プラズマディスプレイ(以下、PDP)の偽装請負、不当解雇と闘う吉岡力さんが所属するなかまユニオンは3月1日、大阪府労働委員会に対し
て不当労働行為救済を申し立てた。この労働委員会闘争は、PDPを断罪し吉岡さんを職場に戻す上で、きわめて大きな意義を持つ。
許されない報復行為
請求した救済の内容は、(1)06年の吉岡さんの解雇を撤回し、再雇用すること(2)PDPは吉岡さんへの人権侵害・雇い止め等について団体交渉を拒否
してはならないこと(3)吉岡さんの労組加入・偽装請負告発への報復行為への遺憾の意と将来にわたって同様の行為を行わないことの表明、の3点だ。
吉岡さんは05年、北摂地域労組に加盟しPDPの偽装請負を大阪労働局へ告発。あわせてPDPに対して直接雇用するよう申し入れた。PDPは、吉岡さん
を期間工として直接雇用したが、他の労働者から隔離し不必要かつ苦痛を与えるリペア作業に従事させた上に、期間の定めのない労働者(正社員)として雇用す
るよう訴訟を提起した吉岡さんを06年1月に解雇。以降の裁判では、最高裁判決もPDPの行為を違法と認め、損害賠償を命じている。
これらのリペア作業や解雇は、労組に加入した吉岡さんが労働組合員の正当な活動として偽装請負を告発し正社員化を求めたことに対する報復行為だ。
団交拒否は違法
裁判闘争の間に吉岡さんが改めて加入したなかまユニオンは、損害賠償を命じた最高裁判決後、PDPと親会社であるパナソニックに対して賠償金の支払い・
原職復帰などを要求し、団体交渉を申し入れた。しかし、PDPはファクスで「判決で認められている金銭債務の履行方法につきましては、すでに当社代理人か
ら吉岡力氏代理人に対して提案しておりますので貴組合と話し合う事項はなく、またそのような必要もないと考えております」と団交を拒否。恥知らずにも最高
裁がPDPの主張を認めなかったことについて「誠に遺憾」と判決への不平まで述べ、吉岡さんに対する不法行為の謝罪すらなかった。
裁判の当事者は吉岡さんとPDPだが、労働組合が所属する組合員の地位について使用者と交渉に臨むのは当然のことである。まして、PDPによる吉岡さん
への不法行為は労働組合員としての正当な活動に対する報復であり労働組合として絶対に見過ごせないことだ。PDPの団交拒否理由は全く不当なものだ。
労働三権はゆずれない
憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定める。団結権、団体交渉権、争議権の「労働三権」と呼ばれるものだ。
労働者個人と使用者では、圧倒的に使用者側が優位であり、減給や解雇をちらつかされれば労働者はまともな要求も口にできなくなる。個人では弱い立場の労
働者が、他の労働者と結束して使用者と対等に渡り合えるようにするために、団結権が認められ労働組合が存在する。その労働組合が労働者の権利擁護のために
使用者と交渉する権利が団体交渉権であり、要求を勝ちとるための闘いを正当な権利として認めるのが争議権だ。争議権の行使には、ストライキや作業所閉鎖な
ど「業務の正常な運営を阻害するもの」(労働関係調整法第7条)が含まれる。集会・構内デモだけでなく、個人では「威力業務妨害罪」に問われかねない工場
閉鎖ですら労働組合であれば合法となる。
グローバル資本の代表である日本経団連は、労働争議を理由とした労働組合への損害賠償請求権を法文化することを企んだが、小泉自民党政権でも実現することはできなかった。労働三権とは、それほど強い権利なのだ。
これら労働三権を保障するために、労働組合法は、使用者に対し、組合活動を理由とした労働者の不利益扱い、団交拒否、労働組合に対する支配介入を「不当労働行為」として禁じている。
吉岡さんは、組合員としての活動を理由とした不利益取り扱いを受けた。偽装請負を告発した吉岡さんは、その報復として雇い止め・解雇された。さらに、偽
装請負で働かされていた他の労働者は現在その多くが正社員として雇用されており、解雇された吉岡さんは明らかに差別的取り扱いを受けている。当然、不当労
働行為にあたる。また、組合員である吉岡さんの権利擁護のために団体交渉を申し入れるのは労働組合の当然の権利である。PDPは誠実にこれに応じる義務が
あり、拒否することは不当労働行為にあたる。
この不当労働行為を是正する役割を担うのが、都道府県労働委員会だ。とはいえ、労働委員会は労働者・使用者それぞれの代表と公益委員とで構成されている以上、その職責を正しく発揮させるには闘いの力が不可欠だ。
今、非正規労働者の権利擁護のために各地のユニオンなど様々な労働組合が立ち上がっている。また、日航の大量首切りなど、グローバル資本は正規・非正規
を問わず労働者の生存権を脅かしている。PDPの不当労働行為の数々は労働組合の存在を否定する行為であり、それらを断罪し救済を求めることはすべての労
働者・労働組合の課題だ。吉岡さんとなかまユニオンの労働委員会闘争の今日的意義はまさにこの点にある。
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