2010年06月04日発行 1135号

【専門26業務の見直しを逆手にとり 派遣拡大を狙う民主党政権】

 鳩山内閣は4月6日に労働者派遣法「改正」案を国会に提出。4月16日に衆議院本会議で、4月23日には同厚生労働委員会で審議が行なわれた。その短い審議からも、派遣労働の対象業務を拡大しようという政府・民主党の狙いが明らかになっている。国会終盤の「優先法案」として、まともな審議を抜きに強行する動きが表面化しており、改悪阻止・廃案への闘いを強める時だ。

直接雇用の道閉ざす改悪

 今回の「改正」案では、専門26業務について登録型派遣の原則禁止の例外とされたばかりか、はっきりとした改悪が盛り込まれている。

 現行法では、派遣先企業に派遣労働者への雇用契約申し込みが義務づけられており、それは次の2つの場合に分けられる。

 1つは、派遣受入期間に制限のある業務(製造業など多くの業務。最長3年)において、その期間を超えて派遣労働者を使用する場合(法40条の2)。もう1つが、派遣受入期間の制限のない業務(専門26業務など)において、同一業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その業務に新たに労働者を雇い入れる場合(法40条の5)だ。

 今回の「改正」案では、40条の5に「ただし書き」を追加し、派遣先が派遣元から「期間を定めないで雇用する労働者である旨の通知を受けている場合」は、2つめの直接雇用申し込み義務の適用を除外しようというのだ。そうなれば、専門26業務に従事する派遣労働者は直接雇用の道を永久に閉ざされてしまうことになる。

 鳩山首相はその点について、衆院本会議(4/16)で「専門業務で3年を超えて従事する労働者に対して優先的に直接雇用を申し込む義務については、この義務があることで派遣先に引き抜かれる懸念から、派遣元が能力開発を行なう意欲をそぐマイナス効果が生じているなどの指摘もあり、派遣元で無期雇用されている派遣労働者に限って除外することとした」と説明した。人材派遣会社の都合は配慮しても、派遣労働者の人生などどうでもいいというわけだ。

待遇改善せず派遣で調達

 さらに専門26業務は、派遣労働の拡大の隠れみのにされようとしている。

 初鹿議員(民主党)は衆院厚生労働委員会(4/23)で専門26業務を取りあげ、「介護とか看護とか、ただでさえ人材が不足をしている分野が専門に入っていないという問題もあるわけです。このようなことを考えると、やはり専門26業務の見直しというもの、対象を絞り込んだり、また、新しく広げていったりということをするべきだと思いますが、お考えを伺います」と質問した。

 これに対して長妻厚労相は、「時代とともにやはり職業や専門性というのは変遷していくわけでございますので、…その見直しが必要か否かも含めた検討をしていただこうというふうに考えております」と答弁。初鹿議員が、登録型派遣の原則禁止が施行される3年後までに見直すよう求めると、長妻厚労相は「できる限り3年以内に結論が出るようにお願いしていきたい」と応じた。

 そもそも介護や看護の分野で人材が不足しているのは、厳しい労働実態に見合わない劣悪な労働条件・低賃金に原因がある。そうした労働環境や待遇の改善を放置したまま、人をモノ扱いする派遣労働の拡大で労働者を調達しようというのだ。低労働条件、人権無視はさらに深刻化する。

偽装請負の合法化も狙う

 また法案が国会に提出される以前の2月23日に行なわれた厚生労働省政策会議では、出席議員から「士業や医師等の国家資格を取得する業務については、明らかに専門性があるものなので、専門26業務の中に入れるべきではないかと考えている」という意見も出されていた。

 士業とは、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士など最後に「士」のつく職業の総称で、現行法では派遣を行なうことができない。それは、「士業については、それぞれの業法で無資格者から指揮命令は受けないと規定されているので、通常は請負等で行なう」(厚労省)ためだが、厚労省側は「今後、審議会での議論を踏まえ適切に対応してまいりたい」と含みを残した。仮に「士業」を解禁することになれば、偽装請負を合法化するものになることは必至だ。

 介護、看護、医師もまた、現行法では派遣を行なうことができない業務とされている。こうした業務を「専門業務」の名の下に派遣に組み入れ、派遣をさらに拡大するのが、政府・民主党の狙いだ。そうした狙いを暴き、改悪案を阻止し、労働者派遣法そのものを撤廃させていかなければならない。
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