2010年06月04日発行 1135号

【国会は当事者の声を聞け 改悪を阻止し、派遣法は廃止せよ 認識がなければ罪に問わない悪法だ 吉岡力さん 阿久津真一さん 一度派遣になれば脱け出せない法案】

 労働者派遣法改悪阻止の闘いが重要局面を迎えた。連合などの要請を受け、政府・民主党は今国会で成立させることを確認。5月26日の衆院厚生労働委員会で審議を再開し、6月初めまでの衆院通過をもくろんでいる。当事者を先頭に「改悪阻止、派遣法は廃止せよ」の声を国会にぶつけよう。

 雇い止め・解雇と闘う非正規労働者が次々と国会に押し寄せている。5月19日には終日「改正ではない、改悪だ」と訴える行動を展開した。

「改正でなく改悪だ」

 口火を切ったのは、日赤献血センターを雇い止めされた廣瀬明美さん。「私たちは派遣法改正案に大反対です。禁止される製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の3つとも例外の大穴がある。みなし雇用が適用されても労働条件は派遣と同じ内容で、全く救われない。奴隷制度である派遣労働は、なくしてほしい」

 日産自動車のデザイン部門で3か月契約を25回更新し6年3か月働いた末、雇い止めに遭った女性労働者は「とうてい改正案とは言えない。専門26業務は使用者側の拡大解釈し放題。日産では事務員も秘書もオペレーターも開発エンジニアもみな専門5号の事務機器操作だ。直接雇用申し込み義務がなくなれば、何年も細切れ雇用を繰り返され、待遇格差は縮まらない。派遣社員を正社員にする立法を」と訴えた。

 ヤンマー争議原告の稲森秀司さんは『ヤンマー争議の歌』を国会に向けて歌った。「歌の内容はメディアも報道したまぎれもない事実。派遣法はこういう企業を合法化する法律だ。それをさらに改悪し、派遣労働を常態化し、一部の正社員と大多数の非正規労働者という構造を作って労働者の団結する権利を侵害し、生きる権利を奪う―政権政党のすることではない」

 この日の行動の大きな成果は、昼に開かれた「派遣法抜本改正国会行動」の集会で非正規争議の当事者が「改悪反対」の発言をきっぱりと行なったこと。パナソニック争議の吉岡力さんは「骨抜きの立法化に絶対反対。違法行為企業に違法の認識がなければみなし雇用しなくていいというのは、盗みは窃盗罪と認識していなければ物を盗んでも罪に問わないのと同じ。立法府のやることか。NTT西の社員が女性を暴行し、『仕事の上では俺は神や。言うことを聞かなければ契約を打ち切る』と脅した事件があった。直接雇用申し込み義務撤廃は、こう言われても泣き寝入りするしかない雇用形態で一生働き続けろというもの。言語道断だ。私は何回でも訴える」。

「何回でも訴える」

 キヤノン争議原告の阿久津真一さんは「労働者保護をうたっているが、私たち当事者にとっては改悪。みなし雇用は派遣と同じ条件で雇用主が派遣先になればいいというもの。正社員化を求めている者には何の救いにもならないどころか、雇い止めを立法が認めている。この改正案が前に通っていれば私たちは偽装請負を申告しなかっただろう。何年も正社員と同じように働いてきて、申告したとたん悪ければ3か月で契約を切られ、待遇は今まで変わらない―これでどうして偽装請負に対して声を上げられるだろうか。一度派遣になってしまえばそこから脱け出すことができない―それが今回の改正案だ」と強調した。

 この集会では「必要な修正・補強の上、今国会で成立を!」のスローガンが掲げられ、他の発言も「自民党などの妨害を許さず、何としても成立させよう」と主張するものが目立ったが、争議当事者の訴えにはそれらを圧倒する強いインパクトがあった。
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