2011年03月25日発行 1175号
【長野県中川村 全村挙げてTPP反対デモ 「エジプトにならい、恐れずに主張しよう」】
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信州・上伊那、天竜川の流れに沿う自然豊かな村、長野県中川村で2月20日、全村挙げての
TPP(環太平洋経済連携協定)参加反対デモが行われた。デモはどんな動機で企画されたのか。曽我逸郎村長から寄せられた報告をもとにまとめた。
右から左まで勢ぞろい
出発点の中川村役場前には子どもたちを含め約400人が集まった。人口5200人の1割近い。「アフリカンドラム」「ピースウォーク」などの若者グルー
プが村内外から参加し、組合主義アナキストの旗も。東京からはフリーター全般労働組合が駆けつけた。
軽トラックやトラクターも加わり、空き缶や太鼓を打ち鳴らす。2・5キロをにぎやかに楽しく歩いた。「村の暮らしを壊すな」のシュプレヒコールは、村を
はさむ二つのアルプスの山々にも届いたにちがいない。
中川村全村挙げてのTPP参加反対実行委員会(代表・曽我村長)は、村議会・農業委員会・農協支所・農民組合・商工会・建設業協会・新日本婦人の会支
部・農団労支部・村職員労組の9団体で構成。保守派から共産党系までの農業団体だけでなく村内の主要団体が右から左まで勢ぞろいしたのは画期的なことだ。
曽我村長によると、これは次のような問題意識が共有されたからだという。
TPPについては「1・5%の農業のために98・5%を犠牲にするのか」といった言い方で農業が悪者に仕立てられ、本当の問題が隠されている。
TPPは農業のみならず24もの幅広い分野に関わる。医療では混合診療が導入され、公的保険のカバーする範囲が縮小されるのではないか。海外企業が参入
する政府調達には、市町村の物資・サービス調達まで含まれ、給食で食育の一環として地元農作物を使うことも外資差別とされかねない。冷凍野菜や狂牛病の心
配のある牛肉、除草剤まみれの遺伝子組み換え作物を使わないと、「安いのになぜ使わない」「非関税障壁だ」と訴えられたらどうするのか。それも外国の法
律、裁判所で。
何より村落が維持できなくなる。かつて山持ちは資産家の代名詞だったのに、木材の自由化で山村は「限界集落」化している。中川村のような中山間地も
TPPで同じ運命をたどる。人が一層いなくなり、祭や共同作業、集落の暮らしはできなくなる。農地も山も荒れ果てる――。
地域の未来を破壊する
実際、こういった問題点を指摘するのは農業団体ばかりではない。村のホームページに掲載された商工会の意見は「TPPは私たちの会社とそこに働く社員の
皆さんを不幸にする」、建設業協会の決意表明も「地元を愛し労力を惜しまず働いても外国から企業が突然来て仕事をする。地域を守るためにも声を大にして反
対を」と述べている。
全村デモは最後に「私たちの『食』『文化』『暮らし』『地域の未来』を変えてしまうTPP参加に断固反対する」との宣言を読み上げた。
曽我村長は無防備地域運動にも「日本国憲法の根本精神に則った宣言」「地方から国を動かし、『軍事力は時代遅れ』という新しい常識を世界の市民に」と賛
同を示している。無防備平和を希求するとは、新自由主義の地域破壊に反対することでもある。
「チュニジアやエジプトにならい、恐れずに思うことを主張していかねばならない。他の市町村でも反TPPの運動が広がるとうれしい」と曽我村長は話して
いる。
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