2011年04月22日発行 1179号

【被曝を強要され続ける原発労働者 人間と原発は共存できず廃止しかない】

 「収束」の展望が全く見えない福島原発で、奴隷的労働に従事させられている労働者の大量被曝が続いている。

 連日の事故報道のさなかにも、インターネットには福島原発作業員の求人広告が掲載されている。仕事内容は「原子力発電所内の定期検査・機械・電気・鍛冶 溶接及び足場作業」、給与は日給で9千〜1万1千円。応募資格、スキル・経験は不問。雇用形態は「正社員以外」、つまり請負や派遣、アルバイトなどの非正 規雇用だ。

 現在、原子炉建屋からは近づくのも困難な水準の強い放射能が漏れ続けている。原発内はもちろん周辺でも放射線濃度はすさまじく、重装備でも被曝する。そ の中で作業にあたっているのは、電力会社や発電機メーカーの正規労働者だけではなく、「協力会社」「グループ企業」と報道される下請け社員、多数の非正規 労働者だ。作業中、強い放射線を常時浴び続けるにもかかわらず、東京電力は、福島第1原発の復旧に当たる作業員のうち180人に放射線量を測定する線量計 を持たせていなかった。

 また、線量計を持っている労働者もそれを外して作業をすることがある。そうしないと、法令が定める被曝線量の限界にすぐに達してしまい、作業にならない からだ。

野宿労働者を作業員に

 国内マスコミはこうした原発労働者の実態を伝えようとしないが、海外メディアには報道が見られる。原発労働問題を取材したスペインの新聞『エル・ムン ド』紙の記事「日本の原発奴隷」(03年6/8)はこう伝えた。「失うものを何も持たない者たちの仕事」として福島原発作業員の仕事が「ホームレス」に あっせんされる。作業員たちは正社員が決して入ることのない、最も危険な業務へと送り込まれ、被曝量が一定レベルに達すると「本人の健康のため」として解 雇される。元作業員は「時間内に作業を終えないと給与が支給されないケースさえあった」と証言する。それでも、過去の労働歴を隠して原発から原発へと渡り 歩く「原発ジプシー」と呼ばれる労働者がおり、深刻な健康被害がもたらされている。

 放射能漏れ事故が起きた場合、真っ先に原発内に送り込まれるのも非正規雇用の作業員だ。原発作業員に野宿労働者をあっせんする慣習は30年以上にわたっ て続けられ、現在に至っている。電力会社が作業員のあっせんに暴力団を使ったケースさえあると記事は指摘する。藤田祐幸・元慶応大学助教授の調査によれ ば、その間に700人から千人の下請け労働者が亡くなり、数千人ががんを発病した。

政府は早くも「規制緩和」

 一方、国は、福島第1原発で事故を起こした原子炉の冷却等の作業に当たっている作業員を守るどころか、早々と被曝線量の上限を引き上げる「規制緩和」を 行った。労働安全衛生法に基づき、放射線業務に従事する労働者の被曝線量等を定めた「電離放射線障害予防規則」を改悪し、作業員の被曝量の上限を年間50 _シーベルト(緊急時は100_シーベルトまで許容)から、250_シーベルトへと引き上げたのだ。

 年間被曝線量250_シーベルトは、めまい・頭痛など急性症状が出る水準だ。政府や御用学者たちはつねに限度を高く設定するが、放射性物質の影響は個人 差が大きく、それ以下で障害が発生する可能性もある。人体への影響も考慮せず、いとも簡単に被曝線量の限度を引き上げた国に抗議する闘いが必要だ。

 政府と東京電力は、この期に及んでも人件費増=コスト増の回避ばかり考えている。

長靴も支給せず

 3月24日、福島第1原発内で復旧作業に当たっていた作業員3人が、タービン建屋内の放射能汚染水にくるぶしまで浸かって被曝し、病院に緊急搬送され た。驚くことに、東電は長靴さえ支給していなかった。作業員のうち2人は普通の靴でタービン建屋に入り被曝した。汚染水の放射線濃度は2千〜6千_シーベ ルトに達していた。6千_シーベルトの場合、全身に浴びれば致死量だ。

 事故発生以来3月末までに東電が発表しただけで、負傷者・行方不明者は東電社員が13人、協力企業作業員が13人の26人。100_シーベルト以上の放 射線量を浴びた社員・作業員が16人とされるが、その詳細も現状も不明だ。

 原発労働者の非人間的な労働実態は今もひた隠しにされている。原発は、大量の労働者を破滅的な健康障害に追い込むことでしか成り立たない。

 人類が原発と共存することはできない。直ちに全廃を求めなければならない。
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