2011年07月15日発行 1190号

【東京電力株主総会行動 脱原発の発言が圧倒】

  東京電力の株主総会が6月28日、都内で開かれた。昨年の約3倍の9309人が出席。所要時間も最長の6時間9分となり、脱原発を求める多くの個人株主の 発言が圧倒的に議論をリードした。

 会場の外では、朝5時に福島を発った上京団がカラフルな横断幕「さよなら原発」を掲げる。「脱原発・東電株主運動」の株主402人が提案した「定款に 『原子力発電からの撤退』の章を新設する」議案への賛成を呼びかけるチラシが次々と手渡されていく。

 郡山市議会議員の蛇石郁子さんは「『原発さえなければ』と自殺した人もいる。子どもに『今日は外で遊んでいい?』と尋ねさせる環境でいいのだろうか。安 心して子育てしたいというお母さん、お父さんの気持ちをくみ取ってほしい」と訴えた。

 子どもたちの疎開を進めるプロジェクトを立ち上げた滝田春奈さん。「事故は、健康に生きる権利を子どもから、福島でがんばろうという希望を若者から、築 き上げたすべてを高齢者から、奪った。今の大人たちの利益ではなく子どもたちの未来を考えて英断を」の訴えに、「原発NO」の手書きポスターを広げて応え る株主も。

史上最悪の人災

 総会は10時、勝俣恒久会長を議長に開会。しかし、早々「福島も日本も世界も元に戻らない。その責任を感じるなら議長は務められないはず」と不信任動議 が出された。清水正孝社長が事業報告で「多大なご迷惑をおかけしている方々への対応」を説明しようとすると、すかさず「迷惑じゃない、損失だ」のヤジが。

 追及は途切れることなく続く。「戦争を除いて史上最悪の人災」「現役員・元役員は全財産を売却して補償に充てよ」「清水社長は退任後、福島で除染作業す るのか」「あなた方には事故は収束できない。役員を続けるなんてとんでもない」「柏崎刈羽(新潟)も東通(青森)も直ちに廃炉に」…。

 賠償責任について勝俣会長が「原子力損害賠償法3条1項ただし書きの『異常に巨大な天災地変』で当社は免責との解釈は可能。しかし、免責を主張すれば長 期の裁判となり、被害者が救済されず、当社も事業継続が困難になる」と答えると、株主から「賠償責任がないように言いながら賠償する? 施しのつもりか」 と批判が浴びせられた。

「さよなら原発」の議決を

 原発撤退議案の補足説明に立ったのは、17年前に自給自足をめざして東京から福島に移り住み、事故後は金沢に避難している男性(70歳)。

 「社長の言う誠意とは何か。誠意は形で表してほしい。南相馬市の病院に東電病院の医師や看護師をなぜ応援に出せないのか。役員報酬を返上して被災地に回 すことは考えないのか」。会社側株主もヤジ一つ飛ばせず聞き入っている。「第1原発の炉心隔壁にはひび割れが入っていた。昨年は緊急炉心冷却装置の制御 ケーブルを抜く誤りを犯した。わが社はハードもソフトもひび割れしている。原発を動かす資格はない。まして原発は人知を超えたもの。子どもたちや孫たちに これ以上ツケを回してはならない」。会場からは「そうだ」「その通り」の声。「福島に帰りたいが、帰れない。流浪の民となった。こんな体験は私たちだけで 十分。株主の皆さん、『さようなら原発』を高らかに議決してください」

委任状で正当化

 株主提案に正面から反対する発言はない。父の代から東電の応援団という63歳の女性株主は「会社を守る熱い思いが原発一つで吹き飛ぶ。社員も絶望し、株 主も絶望し、福島の人たちも絶望する。それはない。方向性を変えて原発以外の新しい電力の形を提供しませんか。東電を応援してきてよかった、と思えるよう に」と賛成を表明した。

 しかし、この議案を含めて株主側が出した動議はことごとく、挙手数も数えず否決とされた。勝俣会長は「事前に2名の株主から委任状が出され、その議決権 数は出席株主の議決権の過半数を大きく上回っている」と正当化した。
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