2011年10月21日発行 1203号

【米国で広がるウォール街占拠行動 「われわれは99%だ」】

1万人超の労働者・市民も


 ニューヨークのウォール街を中心に、「ウォール街を占拠せよ」を合言葉とする若者たちの抗議行動が続いている。参加者の大半は、これまでデモに参加した こともない10代後半から20代前半の若者たちだ。連日千人から1500人ほどが集まっている。

 抗議行動は9月17日から始まり、すでに3週目に突入した。午前9時半の株式市場取引開始時と午後4時の取引終了時には、プラカードを掲げ、太鼓やラッ パを鳴らして証券取引所前を練り歩く。近くのズコッティ公園を根拠地に、ユーチューブやツィッターでデモの模様を流す。ミニ新聞「オキュパイド・ウォール ストリート(占拠されたウォール街)・ジャーナル」(米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」をもじったもの)をつくる。夜はそのまま野宿する。

 10月1日、5千人が結集し700人が警察に逮捕されたが、翌日も運動は収まらず約千人が集まった。参加者の1人は「1人が逮捕されても、2人が(運動 に)参加する」と書かれたプラカードを掲げて行進した。

 5日には、全米運輸労組や看護師組合、全米教員連盟など多くの労働組合も合流し、これまで最大の1万人を超えるデモがマンハッタンの中心部を席巻した。 学生たちも全米の大学で一斉ストライキに立ち上がった。労働運動が行動に加わり始めたことに、支配層は「階級闘争のようなものであり、危険だ」(ロムニー 前マサチューセッツ州知事)と危機感を募らせている。

失業と貧富の差に怒り

 今回の抗議行動には特定の指導部はなく、自発的に参加してきた若者たちがその場で議論して翌日の行動などを決めている。参加者の要求はさまざまだが、 「われわれは99%だ」というプラカードが目立つ。これは、「金融街など人口のわずか1%の人たちが世界を仕切っていて、99%の人々が苦しんでいるのは おかしい」(メリーランド州在住の24歳の男性)という思いを端的に表現するスローガンだ。



 いま米国では、高い失業率と厳しい経済情勢の中で国民の大多数は苦しい生活を送っている。9月13日に発表された国勢調査によると、貧困ライン(家族4 人世帯で年収171万円、単身世帯で年収85万円)以下の貧困層は4618万人で、人口の15%を占める。失業率は9・6%(2010年)に達し、若年層 (16〜24歳)に限れば18・1%とさらに高い。にもかかわらず、3年前の金融危機を起こした金融機関は公的資金(税金)で救済され、業績が戻るや経営 者らは何事もなかったように高額の報酬を受け取っている。1%の富裕層が国全体の所得の25%を受け取り、富の40%を保有する。若者たちはウォール街を 1%の富裕層の象徴とみたてて抗議に押し寄せている。

 参加者たちは口々に「貧しい人も生きていけるように、資本主義を変えるべき」(メイン州在住の19歳の男性)「父親が家を失い自殺した。今の経済の仕組 みを変えたい」(サンフランシスコ在住の女性)「大学に行く資金もなく失業中。大企業にもっと税金を払わせるべきだ。変革が訪れるまで、この場を離れな い」(21歳の男性)などと訴える。

 配られている「オキュパイド・ウォールストリート・ジャーナル」は「2500万人以上が無職で、5千万人以上が健康保険に入っていない」「われわれのシ ステムは壊れている」と訴え、大企業や富裕層による富の独占を糾弾している。


全米から海外にも

 抗議行動はフェイスブックやツィッター、ユーチューブなどを通じて賛同者を増やしている。これはチュニジアやエジプトの民主主義革命で若者たちがソー シャル・メディアを活用したのと同じだ。

 参加者の1人は「中東で起きた市民運動が私たちを動かしている。アメリカの将来を憂える普通の市民が参加する運動であることを知ってもらいたい」(コロ ンビア大学の20歳の男子学生)と語る。

 ニューヨークの行動が成功したのを受けて、デモは、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコ、フィラデルフィアなど全米各地に広がっている。デモ計画 は、全米50州のうち46州147都市で進行中という(10月5日時点)。

 さらに運動の賛同組織は12か国に広がり、英国では10月15日から「ロンドン証券取引所を占拠せよ」という行動が提起されている。

 この運動は、貧困と貧富の格差を生み出してきた新自由主義政策に対する「ノー」の表明だ。10月2日の集会にはノーベル経済学賞受賞者であるコロンビア 大学のスティグリッツ教授も参加し、「2500万人が正規の雇用に就けない現状を考えれば、こうした運動が起きるのは自然で、むしろ遅すぎたくらいだ。現 状を変えようという大きな運動の始まりなのだと思う」と激励した。

 グローバル資本主義の無法に多くの若者・市民・労働者が憤り、このシステムを変革しなければならないと、いま立ち上がり始めた。
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