2011年11月04日発行 1205号

【「避難の権利を認めよ」 区域外避難者が審査会で訴え】

 10月20日、文部科学省内で開 かれた原子力損害賠償紛争審査会で、国が指定した避難区域外から避難した住民のヒアリングが実現した。

「命を守る一点で」

 子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの中手聖一代表は、避難の時期で賠償を線引きしようとする動きを「避難の決断に影響を与えた出来事はずっと つながっている。境目はつけられない」と批判。「専門家も正しい答えを出せないのに、親であるわれわれが答えを出さなくてはならなかった。安全側に立って 判断するのは当然ではないか。事故前からあった法令や基準、公衆の被曝限度や放射線管理区域の線量も、避難の合理性を示している」と指摘し、「避難する 者、とどまる者―地域のきずなは引き裂かれた。賠償だけでも、きずなをもう一度結び合えるよう、可能な限り幅広くという考え方で議論を」と求めた。

 宍戸隆子さんは札幌市に避難している。避難先の団地には160世帯の区域外避難者が暮らす。「シングルマザーが多く、経済的に苦しい。北海道に避難した その日から就職を探していた人も。自主避難者はお金に余裕がある、というのは違う。命を守る一点で避難を決めたんです」。宍戸さんは避難者の自治会を立ち 上げた。「皆さん福島でとても傷ついて出てきたと知ったから」だ。避難を口にしただけで「頭がおかしいんじゃないか」と言われた。「国の言うことに逆らう のか」と「非国民」のレッテルまで貼られた。「それでも命を守りたかった。そこをくんでください」と訴える。

 区域外避難者への補償実現は金銭的次元にとどまらない意義を持つ。「福島にいるお母さんたちと話すと、『国がうんとさえ言ってくれれば私も避難できる』 と言う。自主避難の補償それ自体が、避難する権利、命を守る権利を認めること。福島の生活はもう成り立たない。私は自主避難者の権利と合わせて福島県全体 の補償を求める」と宍戸さんは締めくくった。

ごう慢な東電の姿勢

 いわき市の渡辺淑彦弁護士弁護士は、賠償問題に対する東京電力の姿勢に怒りをぶつけた。「なぜ賠償請求書を被害者に書かせるのか。交通事故の示談でも加 害者の側が示談案を持ってくることから始まる。東電は『書類を出さなきゃカネは出さない。書いてみろ』という態度だ」

 ヒアリング後、能見善久・審査会会長は「自主的避難は賠償に値する一つの大きなグループ。残っている人たちの賠償の問題と同時に解決していきたい」とま とめた。


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