2011年12月09日発行 1210号

【「雀の涙」見舞金を許すな 区域外避難者への賠償指針後退】

 11月25日、文部科学省で原子力損害賠償紛争審査会が開かれ、区域外避難者に対する賠償 問題が話し合われた。前々回審査会での2人の避難者による直接の訴えを踏みにじり、実際の避難費用をはるかに下回る超低額の「見舞金」で指針がまとめられ る可能性が強まっている。

 審査会に先立ち、福島老朽原発を考える会などの呼びかけで「幅広い正当な賠償」を求める文科省前アピール行動が行なわれた。

値切りは許さない

 福島県西郷村から傍聴にかけつけた地脇美和さんは「面的に高濃度に汚染され、除染では放射能値は下がらない。その間にも子どもたちの被曝は累積する一 方。でも、大量の鼻血を出す子を医者に診せても『花粉症』と片付けられ、県の健康調査票も行動記録をとるだけで『体調はどうか』『心配事はないか』と聞く 項目はない。被害が出てからでは遅い。なぜこんなことが認められないのか」と訴える。郡山市から静岡県富士宮市に避難している長谷川克己さんからは「子ど もたちの未来より目先の経済を選ぶ人たちに期待はしない。かちとるべきは名誉。『勝手に逃げた』の汚名に甘んじるわけにはいかない」とのメッセージが寄せ られた。

 審査会は、しかし、前々回と前回の「避難者も避難せず残った人も賠償の対象」とする確認点を骨抜きにし、「手続きが煩雑」などを理由に実際に避難にか かった費用を含めない一律同額の低額賠償とする方向で議論を進めた。事務局(文科省)が用意した資料には、慰謝料額に関する裁判例として、道路騒音やマン ション内騒音、犬の鳴き声、豚舎の悪臭などをめぐり月額数千円程度の慰謝料を認めた事案を列挙したものまであった。放射線防護学が専門の草間朋子委員から は「賠償期間は緊急時避難準備区域が解除された9月末まで」とのむちゃくちゃ発言が飛び出した。

 雀の涙の見舞金による値切りを許さず、避難の権利の保障に立った完全な賠償を行なわせる闘いが急務だ。


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