2012年01月06・13日発行 1214号

【「社会保障の財源」はウソだ 消費税増税は大企業減税のため】

 消費税増税に向けた動きが急だ。野田首相は12月5日、年内に消費税増税のための素案をと りまとめるよう政府・与党に指示した。「この改革に不退転の決意で臨む」とも宣言し、来年3月末までに関連法案を国会に提出する方針を明らかにしている。 消費税増税で99%の人々の生活を破壊する一方、1%のグローバル資本や富裕層には減税する。この不公平極まりない増税攻撃に、「われわれは99%だ」と ノーを突きつけなければならない。



 野田政権が進める「社会保障と税の一体改革」では、2010年代の半ばまでに消費税を5%引き上げて10%にすることで約13兆円を生み出し、「社会保 障の機能を強化し、安定財源を確保して将来にわたって持続可能なものにする」としている。ところが、この「一体改革」の社会保障部分では、社会保障の全面 改悪(年金の支給額減額、外来受診に定額負担の上乗せ、保育制度を崩壊させる「子ども・子育て新システム」の推進など)を狙っている。

 「社会保障財源のために消費税を」という宣伝は今回が初めてではない。1989年に消費税を導入するとき、97年に消費税3%を5%に引き上げるとき も、同様のことが言われた。だが、その宣伝はウソだった。

 89年には、法人税の基本税率42%から40%への引き下げ、個人所得税の最高税率60%から50%への引き下げなどが実施された。消費税を5%へ引き 上げた橋本内閣は、法人税の基本税率37・5%を34・5%へ引き下げた(97年)。このように消費税増税の裏側には法人税減税が控えていた。つまり法人 税減税のための消費税増税だったのだ。

 経団連は07年ごろから「ほとんど経団連と考えが同じ」であった野田議員に目を付け、主だった経団連の副会長らに引き合わせてきた(9/28日経)。米 倉会長はその一人であり、復興財源をめぐって法人税の5%減税案を政府案に盛り込ませたことから、経団連幹部は「“野田効果”で連携できるようになってき た」と発言している(同)。

復興増税でも法人税減税

 法人税減税は復興財源確保法における増税においても貫かれている。マスコミは「法人税は実効税率5%減税を実施した上で、その範囲内で3年間増税する。 増税規模は所得税7・5兆円、住民税0・6兆円、法人税2・4兆円で総額10・5兆円」(11/30産経)と、法人税も増税されているように報道する。だ が、そこには巧妙なからくりがある。

 法人税率4・5%引き下げを実施するが、引き下げ後の法人税率に10%の付加税を3年間かけて2・4兆円を生み出すという。現行の法人税率30%を 25・5%に下げたものへの付加税だから、25・5×1・1=28・05%となり、実際は現行の税率より低くなる。3年が過ぎると25・5%とさらに引き 下げられる。つまり、復興増税においても法人税は減税されるのである。
 財務省は昨年12月、法人税の基本税率を4・5%引き下げた場合に単年度で1兆2千億円の減収と試算している。復興増税での方法でなく現行の税率のまま にしておくだけで3兆6千億円(3年間)を生み出せる。

 グローバル資本は、法人税を下げないと国際競争力が弱まり海外に逃げる、と脅しをかけている。だが、経済産業省の「海外事業活動基本調査」(09年度実 績)によれば、海外投資決定のポイントに「現地の製品需要が旺盛または今後の需要が見込まれる」を挙げる企業が68・1%で、「税制、融資等の優遇措置が ある」は10・6%。グローバル資本は海外と日本の税率差から「海外に逃げる」のではなく、あくまで儲けをさらに増やしたいとの衝動から、国内の法人税減 税を求め、かつ海外にも出て行こうとしているのである。

大企業と富裕層に増税を

 資本金10億円の大企業の内部留保は240兆円(08年度)を超えている。消費税が導入された89年から約140兆円も増やした。全産業の内部留保が約 430兆円なので、企業数で0・28%しかない資本金10億円の企業が全体の内部留保の約56%を占める。それには、研究開発減税や外国税額控除など大企 業優遇税制が大きく影響している。

 さらに、こうした儲けは役員報酬や株式配当の急増にもつながっている。富裕層は証券優遇税制でさらに資産を増やした。所得5千万円以上の高額所得者への 減税だけでも1兆2千億円以上となる。

 結論は明確だ。消費税増税など必要ない。不公平税制を正すだけで消費税増税分の財源は生み出せる。さらに財源を得るためには、法人税増税と富裕層増税を 行うことだ。
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