2012年03月09日発行 1222号

【橋下占領軍の怪しい面々/大阪に群がる新自由主義勢力/お前らこそがシロアリだ】

 橋下徹・大阪市長のブレーンたちが、大阪市や大阪府の特別顧問に次々に就任している。ま た、大手私鉄の副社長を市の交通局長に起用したように、橋下は主要幹部の「民間登用」も進めていくという。狙いは、大阪を一種の実験場として、新自由主義 「改革」を断行することにある。大阪に群がるシロアリどもの正体をみていこう。

 橋下や松井一郎・府知事が起用した府市共通の特別顧問は現在7人。このほかに府・市それぞれの特別顧問がいる(表参照)。メンバーには、企業経営者や元 中央官僚、学者や自治体首長経験者など多彩な顔ぶれがそろう。

 特別顧問の役割はあくまでも政策助言のはずだが、実際には様々な政策立案に関与している。教育・職員基本条例案をはじめ、彼らの鶴の一声で物事が決まる パターンがほとんど。その姿は橋下占領軍の総司令部を思わせる。

 橋下が「僕の身代わり」という特別顧問とは、いかなる連中なのか。主なメンバーのプロフィールをみていこう。

資本の代弁者だらけ

 堺屋太一 作家で元経済企画庁長官。橋下を府知事に担ぎ出した張本人である。「小さな政府」が持論で、道州制の実現や規制緩和、官僚主義排除の旗を振っ てきた。担当は橋下「改革」全般。高校の学区制撤廃も、堺屋が府教委の反対を押し切った。

上山信一 橋下の代表的ブレーンで、大阪都構想の中心的立案者。現在は慶応大学教授だが、かつては経営コンサルト会社マッキンゼーに在籍していた。ちなみ に、橋下は同社出身者の代表というべき大前研一を師と仰いでおり、ブレーンには同社OBが大勢いる(次にあげる余語。そして市特別参与に3人いる)。

余語邦彦 上山の推薦で起用された。地下鉄やバスなど交通事業について助言するという。カネボウ化粧品などの「企業再生」に携わった経験を買われたらしい が、その手法は「赤字部門を切り捨て、売れるものはすべて売る」。

野村修也 思想調査と悪名高い職員アンケートの実務主体。こんな男が国会の福島原発事故調査委員会の委員でもある。本業は弁護士。所属する大手法律事務所 は、社員を辞めさせるために「違法ではない嫌がらせ法」を指南するなど、ブラック企業の守護神として有名。

中田宏&山田宏 前横浜市長と前杉並区長。区政改革担当。ともに松下政経塾の出身。首長時代に、侵略戦争を正当化する「つくる会」系教科書の採択を主導し た。

利権がらみの人事

本間正明 府特別顧問。経済学者。小泉政権下の経済財政諮問会議の民間議員を務め、構造改革路線を推進した。企業減税が持論である。政府税調の会長時代に 女性スキャンダルで失脚したが、府知事に就任した橋下に拾われた。

渡邉美樹 外食チェーン店ワタミの会長。報道(12/28朝日)によると、橋下と松井の要請を受け、教育アドバイザーとして府市特別顧問に就く予定。教育 再生会議(安倍内閣)の委員時代は、教育バウチャー制度(家庭に教育クーポン券を配布し、学校を選択させる。学校は受け取った券の枚数に応じて予算を受け る仕組み)導入論の急先鋒だった。「教員の半分を非常勤講師にすれば、教育の質が向上する」が口ぐせ。

藤本昌信 彼は特別顧問ではなく、大阪市の新しい交通局長。地下鉄民営化の推進役を期待されての起用。京阪電鉄出身。この人事を「良い所に目をつけた」と 激賞した佐藤茂雄・大阪商工会議所会頭は京阪の相談役。橋下が選挙公約に掲げた地下鉄なにわ筋線が完成すれば、閑古鳥が鳴いている京阪・中之島線の乗客数 増加がのぞめる。要するに、利権がらみということだ。

狙いは財産ぶんどり

 いかがであろう。いずれ劣らぬカネの亡者(グローバル資本の代理人)ばかりではないか。彼らが大阪に集まった理由は「何といっても実現可能性がある」 (上山)から。橋下人気を利用して、大阪を新自由主義路線にもとづく自治体改造の実験場にしたいらしい。その目的はもちろん、営利企業による公共財産のぶ んどりである。

 今の大阪は、グローバル資本の草刈り場と化した占領下のイラクのようなものだ。橋下は大阪市長選挙を「大阪市役所からの解放戦争」と位置づけたが、実際 に行ったのは新自由主義勢力にる大阪乗っ取りだった。まさにイラク戦争とよく似ている。

   *  *  *

 世論調査によると、大阪府民の橋下支持率は70%に達している。この「民意」をかさにきて、橋下は「選んだ人間に決定権を与えるのが選挙。ある種の白紙 委任」(2/12朝日)と豪語する。

 冗談ではない。橋下が勝手に連れてきたブレーンたちのやりたい放題など誰も認めていない。彼らこそ、橋下流に言えば「税金をむさぼり食うシロアリ」なの だ。

 こんな連中に大阪の、いや日本のかじ取りをゆだねてはならない。中島みゆきも言っているではないか。「お前が消えて喜ぶ者にお前のオールをまかせるな」 (『宙船』より)        (M)

主な橋下ブレーン
・府市特別顧問
 堺屋太一 元経済企画庁長官
 上山信一 慶応大学教授
 古賀茂明 元経産省官僚
 原 英史 元経産省官僚
 飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長
 余語邦彦 元カネボウ化粧品会長
 橋爪紳也 大阪府立大教授
・市特別顧問
 中田 宏 前横浜市長
 山田 宏 前杉並区長
 野村修也 弁護士
・府特別顧問
 本間正明 元政府税制調査会会長
 藤原和博 元杉並区立和田中学校長


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