2012年04月06日発行 1226号

【非国民がやってきた!(131)  泣くのは嫌だ 笑っちゃおう(3)】

偽モッキンポット師――次の中で井上ひさしの本名はどれや。1.井上*、2.井上厦、3.井 上*、4.井上*、5.井上*。どや。

偽博士――(下を見おろしながら)浅草もずいぶん変わったけど、浅草寺と雷門は同じですね。

偽モッキンポット師――フランス座はどこや。

偽博士――ひさし先生が文学修業したフランス座も随分昔になくなっています。

偽モッキンポット師――何が文学修業や。ストリップの踊り子目当てで通っただけやないか。小松青年も書いてるで、一度くらい相手にしてくれるかもしれない と期待してたんや。

偽博士――コント作成の基本はフランス座の経験のようですよ。

偽モッキンポット師――それよりクイズの答はどや。さすがの博士もギブアップかいな。

偽フン――(絨毯の裏から声がして)正解は2の井上厦じゃ。

偽博士――(絨毯の裏を覗きこんで)あれれ、フン先生が絨毯の下に逆さまに座ってる。

偽フン――ブンのおかげで空中浮揚も思いのままじゃ(と言いながら絨毯の上に)。

偽博士――凄いな。

偽モッキンポット師――はん、小松青年がやっつけ仕事で生み出した三流作家の大友憤か。相変わらず憤慨してるんか。

偽フン――ブンのおかげで売れっ子作家じゃがね。アイウエオ順で大江健三郎と並ぶ大物作家で、大物政治犯でもある。破廉恥神父のあんたとはエライ違いや。

偽モッキンポット師――ふん、「フン」じゃあらへんよ。ほんで厦という字は「ひさし」と読めるんかいな。

偽フン――厦は「カ」としか読めないそうじゃ。ひさし君も、高校時代に教師から「ひさし」とは読めないとブツクサ言われたとか。

偽モッキンポット師――読めへんなら間違ごーとるやないか。

偽博士――でも、他の字は存在しませんよね。*も*も*も*も、見たことありませんよ。

偽モッキンポット師――存在せ〜へん字やて。なんでわてがそないな字ぃ知ってるんやろ。

偽博士――偽作者のアキラがセリフを書いたんでしょう。たぶんこの字もアキラの造字ですよ。「造」の字にこだわりがあるみたいですし。

偽モッキンポット師――勤め先やからな。はて、なんでわてが知ってるんやろ。

偽フン――製造、改造、鋳造、偽造、捏造、変造、紛造、墳造、焚造、糞造、憤造も文学者の使命だ。でもって私は大物憤造作家の大友憤。

偽博士――(無視して)厦の字はひさし先生のお父さんの作品に所縁があるんですよ。

偽モッキンポット師――なんやて。

偽フン――どういう意味じゃ。

絨毯が反転すると、裏側に「次回、文学史の知られざる謎のひとつが解き明かされる」と書いてある。

上記の*は造字。

1は「まだれ」と「春」を合成して一文字に。

2は、厦

3は「まだれ」と「秋」を合成して一文字に。

4は「まだれ」と「冬」を合成して一文字に。

5は「まだれ」と「季」を合成して一文字に。

<参考文献>
井上ひさし『ブンとフン』(新潮文庫、1974年)
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