2012年04月13日発行 1227号

【関電の「電力不足」はウソ 大飯原発再稼働へ向けての脅し】

 全国に54基ある原発は定期検査で次々と停止し、残るは泊原発3号機(北海道電力)1基の みとなった。それでも停電は起きず、市民生活も企業活動も動い ている。この事態に危機感を抱く関西電力は、またも「電力不足」の脅しで福井県大飯原発の再稼働を正当化しようとしている。そのウソを暴く。

「電力不足」訴える関電

 電力会社で構成する電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は3月16日の記者会見で、今夏の見通しについて「各社が火力など供給力の上積みをしている が、原発の再稼働がなければかなり厳しい」とし、昨夏並みの電力需要が発生すれば、関電では「41日間の供給不足が生じる」との見通しを示した。

 関電の場合、昨夏は4基稼働していた原発がいまはゼロとなっており、このままだと供給力は昨年より550万kw少ない2398万kwとなり、昨夏の最大 電力需要を下回る日が7〜9月で41日間発生するという(3/16産経夕刊)。
 一方、東京電力は火力発電や揚水発電、ガスタービンの新増設などで供給力を増やし昨夏並みの約5700万kwの確保にめどをつけたとしており(3/26 毎日)、関電ほどの切迫感はない。

 原発依存が高かったにしても、関電が言っていることは本当なのか。

昨夏並みの供給力はある

 2月20日、高浜原発3号機が停止し、関西電力の原発11基がすべて止まった。翌21日の供給力として関西電力が発表したのは2766万kwだった(表 1)。八木関電社長が示した2398万kwは、それよりも368万kwも少ない。なぜ、夏までに供給量がそんなに減ってしまうのか。

 関電のこうした数字操作には前歴がある。この冬も関電は「電力不足になる」として大々的に節電を呼びかけた。だが、供給力に対する電力の使用率が90% を超えたのはわずか5日だった。それぞれの節電努力によって需要が思ったほど伸びなかったということもあるだろうが、根本は関電が供給力見込みを意図的に 低く設定していたことにあった。

 関電のホームページに「関西電力の電源設備(各月の供給力の内訳)」(2011年11月1日現在)が載っている。これを見ると、関電の全原発が停止した 後の3月の供給力見込みは2265万kwとなっている(表2)。だが実際には、3月1日時点でも2646万kwの供給力は確保されていた(表1)。この差 をどこから調達したのか。

表1.でんき予報(関西電力発表)
2 月20日 使用 2340万kw 81%
供 給 2859万kw




2 月21日 使用 2240万kw 80%
供 給 2766万kw




3 月1日 使用 2140万kw 80%
供 給 2646万kw


 朝日新聞(3月24日付)がまさにこの問題を取材をしている。それによると、揚水発電は「原発が動かないため深夜も電力不足になる」として低く見積もっ ていたが、予想より199万kw増えたという。夜間の余った電力を使って水を汲み上げておき、昼間のピーク時に水を落として発電するのが揚水発電で、もと もとは発電量に融通の利かない原発とセットで造られたものだが、ピーク時に対応した発電には有効だ。

 また、一般水力発電も渇水を想定して低めに見ていたが、実際は62万kw増えた。他社からの電力融通や自家発電業者からの調達も最低限しか計算しなかっ たが、実際は予測より62万kw増えたという。

 関電が電力不足を訴えるために、実際には使える供給力を意図的に低めに見積もっていたことは明らかだ。

 これから見ても、夏の供給力も意図的に低く設定されていることは疑う余地がない。全原発停止後の供給力が少なくとも2766万kw以上あることは間違い ない。昨夏、電力需要がこれを超えたのはわずか1日(8月9日の2784万kw)しかない。しかもピーク電力というのは、1日の中でもせいぜい2〜3時間 のことだ。夏の暑さが昨年並みなら、電力は不足しないことになる。

火力発電の増設に消極的

 ただ猛暑になる可能性もあり、供給力を高める努力が求められる。八木社長は「休止中の火力発電所の立ち上げや、ガスタービン発電機の設置など供給力上積 みに努めている」(3/24朝日)と述べているが、実態は違う。

 火力発電の設備容量は1691万kwあるが、先の3月の供給力見込みでは1454万kwとなっている。これは、宮津エネルギー研究所(京都府宮津市) 1、2号機、多奈川第2(大阪府岬町)1、2号機、海南(和歌山県和歌山市)2号機の5基(出力合計は約240万kw)が長期休止中だからだ。このうち夏 までに再稼働する予定があるのは海南2号機(出力45万kw)だけだ。

 宮津市や京都府が宮津火力発電の再稼働を、また岬町が多奈川第2火力発電の再稼働をそれぞれ要望しているが、関電は「主要部品を替える必要があり、新設 に近い金額がかかる」として再稼働に否定的な態度をとっている。山田京都府知事は「遊休施設がある一方で、電力が足りないから節電をと言われても府民は納 得しない」(2/29毎日)と不満を表明している。

 また和歌山県と和歌山市は、着工準備中の和歌山火力発電所(出力計370万kw)の早期着工を求めているが、関電は「原発が再稼働すれば過剰投資にな る」として着手を見合わせている。

表 2.関西電力の電源設備(各月の供給力の内訳) 
      (2011年11月1日現在)
電源 設備容量(万kw) 供給見込み(万kw)
2011年2月 2011年3月
原子力 977 57 0
火力 1,691 1,454 1,454
水力 820 324 311
  一般 331 150 157
  揚 水 488 175 154
再生エネ 1 0 0
その他*   576 501
合計 4,080 2,412 2,265
*その他は、電源開発、新日鉄、神戸製鋼所、ガス&パワーなどからの 買い取りや他の電力会社からの融通など。

 関電は原発の再稼働を前提に供給計画を立てており、再稼働ができない場合の対策は最初から放棄している。それは、原発を動かさずに他の方式で発電すると 燃料費などが「余分」にかかる=儲けが減るからだ。ここに至っても、安全・人の命より、あくまで利益最優先の傲慢な態度を許すわけにはいかない。

 「電力不足」のウソはもう通用しない。「何の必要も大義もない原発の再稼働は許さない」の声で関電を包囲しよう。


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