2012年04月20日発行 1228号

【野田政権 消費税増税法案を閣議決定 グローバル資本の積年の要求】

  野田政権は3月30日、消費税を14年4月に8%へ、15年10月に10%へ引き上げる ことを内容とする消費増税法案を閣議決定した。与党民主党内にも反対論が根強い中、閣議決定を強行した背景には、グローバル資本の強い意志がある。資本の 下僕としての立場を鮮明にした野田内閣を徹底的に批判しなければならない。

3年後までに税率10%へ

 消費税率の引き上げは、グローバル資本の積年の要求だ。安住淳財務相が昨年10月15日に米倉弘昌経団連会長と会談し「来年には消費税の(増税)法案を 必ず出す」と約束した際、米倉会長は「法案に、2015年度までに10%まで引き上げることを明記してほしい」とあけすけに求めた。

 野田首相が、民主党の選挙公約を破り「政治生命をかける」とまで公言して消費増税法案の閣議決定を強行した背景には、こうしたグローバル資本との約束が あった。「公約違反」などの批判に対し、野田首相は「やるべきことをやり抜いて民意を問う」(1月16日民主党大会で)と開き直っている。 

消費税収の割合は欧州並み

 連日、マスコミの消費税増税キャンペーンが続いている。日本の債務残高は対GNP(国内総生産)比200%で、このままでは「第2のギリシャになる」、 日本の消費税率はEU(欧州連合)諸国にくらべて極めて低い、というのが引き上げ論者の言い分だ。

 たしかにEU諸国の消費税にあたる付加価値税率は英国20%、イタリア20%、スウェーデン25%で、日本は消費税5%、うち国税分4%だ。

 だがEU各国の国税収入全体に占める付加価値税収の割合をみると、英国20・5%、イタリア27・0%、ドイツ38・4%、フランス51・6%(09年 度決算、「財務金融統計月報」2011年8月)と国によって差があるものの、日本は25・3%で英国よりも高くイタリアとほとんど変わらない。これは、欧 州では生活必需品などに軽減税率が適用されているからだ。英国では食料品・新聞・医薬品は0%、家庭用燃料・電力は5%、イタリアでは食料品・新聞・書 籍・医薬品などは4%だ。

 仮に消費税率が政府案のとおり10%に上がり、他の条件がいまと同じだと仮定すれば、消費税収入は税収全体の43%ぐらいまではね上がりドイツを抜く。 消費税増税は景気をいっそう冷え込ませるため、法人税や所得税がますます落ち込む。しかも法人税率は現行の30%から25・5%に引き下げられることがす でに決まっている(3年間は復興増税とほぼ相殺)から、消費税の比重は50%ほどにまで高まるおそれがある。これは異常な姿だ。

国民から大企業に所得移転

 消費税は1989年4月に3%の税率で導入され、97年4月に5%に引き上げられた。消費税収は96年度の6・1兆円から97年度には9・3兆円に増 え、国税収入も52・1兆円から53・9兆円に増えた(表)。それ以降消費税収入は10兆円ほどだが、国税収入(一般会計)は97年度の53・9兆円を超 えたことは一度もない。

 これは、消費税増税そしてそれとセットで実施された医療・年金改悪などで景気が悪化し、税収が落ち込んだこととともに、法人税や所得税の最高税率の引き 下げが大きく影響している。消費税導入以降、消費税収入の累計は238兆円に達するが、その一方で法人税収入は累計で221兆円も減っている(図)。つま り消費税で国民から搾り取った税金をグローバル企業にそのまま横流し(所得移転)したのと同じだ。

 財界は「日本の法人税はまだまだ高い」と不満を言うが、大企業優遇税制によって大企業ほど実際の税率は低い。また厚生年金等の雇用主負担分を加えた企業 の公的負担は欧米にくらべて低い。ところが関西経済同友会は厚かましくも、消費税増税分を財源に地方法人税を撤廃するよう要求している(4/5朝日)。

主要税目の税収(一般会計分)の推移
年 度  国税収入(兆円) 消 費税収入の割合(%)
  所 得税 法人税 消費税
1996 52.1 19.0   14.5   6.1   11.7
1997 53.9 19.2   13.5   9.3   17.3
1998 49.4 17.0   11.4   10.1   20.4
1999 47.2 15.4   10.8   10.4   22.0
2000 50.7 18.8   11.7   9.8   19.3
2001 47.9 17.8   10.3   9.8   20.5
2002 43.8 14.8   9.5   9.8   22.4
2003 43.3 13.9   10.1   9.7   22.4
2004 45.6 14.7   11.4   10.0   21.9
2005 49.1 15.6   13.3   10.6   21.6
2006 49.1 14.1   14.9   10.5   21.4
2007 51.0 16.1   14.7   10.3   20.2
2008 44.3 15.0   10.0   10.0   22.6
2009 38.7 12.9   6.4   9.8   25.3
2010 41.5 13.0   9.0   10.0   24.1

内部留保と富裕層に課税を

 いま日本ではグローバル企業だけが富を独り占めする状態が続いている。最近の10年間(98年末から08年末まで)で、国の資産(土地・固定資産・純金 融資産の総計)が261兆円減り、家計(個人企業を含む)の資産も188兆円減る中で、法人企業(金融機関を除く)の資産だけが165兆円も増えた。

 超富裕層1%への批判の高まりもあって、富裕層への課税強化が世界的な流れになっている。野田政権も、消費税増税への怒りをなだめようと所得税と相続税 の最高税率をそれぞれ5%引き上げる方針を盛り込んだが、まったく足りない。大企業優遇税制や富裕層優遇税制を真っ先に廃止し、法人税も少なくとも税率を 引き下げる前の水準に戻さなければならない。

 大企業(資本金10億円以上)がため込んでいる利益剰余金は、財務省「法人企業統計」でも220兆円(09年度末)にのぼっている。国民から奪い取られ たこの内部留保を税金や賃上げで吐き出させ、内需を拡大することも必要だ。そのためにも、「働く貧困層」である非正規労働者の正社員化と賃金・待遇の抜本 的改善を図らなければならない。

 グローバル資本の負担を軽減するための消費税増税を断固阻止しよう。


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