2012年04月27日発行 1229号
【未来への責任(100)強制連行被害者補償財団の設立へ】
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「日帝強制動員被害者支援財団(仮称)の設立に向けて準備が進んでいる」。第5回強制動員
真相究明全国研究集会(4/7)で張完翼(チャン・ワニク)弁護士(太平洋戦争被害者補償推進協議会共同代表)はこう報告した。
韓国では、強制動員真相糾明法、被害者支援法を制定し、被害認定、被害者支援を進めてきた。しかし、この真相糾明法と支援法が一体化した対日抗争期強制
動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援特別法(以下、特別法)は2012年末に期限切れを迎える。
他方、強制動員被害者は日韓請求権協定資金(5億ドル)によって設立された韓国最大の製鉄会社POSCOに対し、被害者補償を求める訴訟を起こした。請
求権資金が開発独裁―POSCOをはじめとする国策会社設立などに投入され、強制動員被害者らへの補償のためには使われなかったこと、しかも韓国政府が日
韓請求権協定で強制動員被害者の未払い金問題などは解決したとの見解をとっていることに対抗するためだ。この訴訟で裁判所は、請求を棄却しつつPOSCO
に対しては「基金」をつくって被害者支援を行うよう勧告した。同社の会長は勧告の受け入れを表明した。
このような動きを受けて、韓国国会は、特別法の中に強制動員被害者支援財団を設立することができるとの規定を新設する法改正を行った(同法第37条)。
財団設立によって特別法廃止後の被害者支援事業の継続を図るとともに、POSCOなどに強制動員被害者支援を実質的に義務づけることとしたのである。
今年の年初、財団設立に向けての基本原則の協議が始まり、3月9日には財団設立準備委員会が構成された。準備委員には遺族代表、大韓弁護士協会弁護士も
加わった。同16日には、POSCO理事会に資金出資も要請した。
現在、準備委員会は財団の目的・事業などを規定する定款の検討を進めている。慰霊事業、調査・研究事業を財団の事業とすることについては改正特別法に明
記されている。問題は、「その他関連事業」に何を含めるか、である。被害者らは福祉事業(経済支援)、教育事業を財団の事業とするよう求めているが、政
府・企業の財団出資額は未定である。
財団への出資者に日本の企業(強制連行企業)を含めるか否かも検討の俎上に上っている。かりに日本企業に出資させるとなると、当該企業は「法的安定性」
を求めてくることは必至である。それを認めるか否か、被害者らの悩みは深い。しかし、今年7〜8月には財団の設立登記が行われ、遅くとも年内には財団が出
帆する。
問題は、またしても日本である。私たちは、強制労働被害者問題解決に向けて、「補償財団設立法」(仮称)の立法化を目指している。ただし、国会提案の見
通しは立っていない。韓国の運動と連携し、政府・企業の責任追及の闘いを強化していくことが引き続き問われている。
(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク事務局長 矢野秀喜)
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