2012年06月08日発行 1234号
【非国民がやってきた！（１３５）〜泣くのは嫌だ 笑っちゃおう（７）】
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偽モッキンポット師――博士の冗談は石破茂のクイズ以下や。馬蚊馬蚊しいにもほどがある。く
だらん。
偽博士――あっ、ここでそれを言っては、大変なことに・・・
偽モッキンポット師――石破茂から抗議でも来るんかいな。
偽博士――違います。もっと大変なことに。遅筆堂にはひさし先生、いないようですから、手遅れにならないうちに早く他へ行きましょう。
偽フン――何を焦ってるのか知らないが、故郷の山形に井上君がいないなら、次に探しに行くのは仙台だな。ンン？ あれれ、痛っ、なんだ。
偽モッキンポット師――痛っ、痛っ。うわっ、なんや。（周囲を見回して悲鳴を上げる）なんや、この黒いやつは！
偽博士――蚊です。蚊の大群です。絨毯！ 逃げて、早く逃げて！ 仙台へ。
しかし、巨大な真っ黒の塊が一気に絨毯を呑み込む――あでや蚊、はなや蚊、しとや蚊、おおら蚊、ほがら蚊、なんと蚊、そして、蚊（老大蚊）が３人を取り囲
む。
偽博士――老大蚊さん、ごぶさたしておりました。
老大蚊――やあ博士、元気そうだな。
偽フン――そうか、井上君の『仇討』だ。たしか1982年11月14日、ＴＢＳラジオの文化庁芸術祭参加作品の２時間ドラマとして放送された。初出は
『海』1983年１月号だったかな。江戸後期の武士の忠義と孝行が無意味な仇討に転嫁するストーリーに、蚊や蚤と人間が対立する構図をからませたブラッ
ク・ユーモアだ。及川孝之進（牛久山口家家中・火之番役）、その妻・糸、父・神右衛門、山崎蔵人（同家中）、伊藤銀蛾（牛久山口家藩儒）とともに、登場人
物として７匹の蚊と２匹の蚤。お笑い劇だが、最後にしんみりと考えさせられる。
偽博士――モッキンポット先生の失言、見逃していただけませんか。
老大蚊――その手に乗せられて大目に見てきたが、甘やかし過ぎたせいか、人間が傲慢になって蚊格侮辱が目に余る。
偽モッキンポット師――蚊格やて（笑）。一寸の虫にもナントヤラいうけど、一寸もない蚊にも蚊格なんてあるんかいな。
偽博士――モッキンポット先生、ダメですったら。
老大蚊――許せん。蚊格破壊ここに極まれり。もはや寛容容赦赦免免責の余地なし。全員総攻撃！
――あでや蚊、はなや蚊、しとや蚊、おおら蚊、ほがら蚊、なんと蚊、老大蚊が急降下攻撃を始める。
続いて東の空から、あざや蚊、うかう蚊、うらら蚊、おだや蚊、かろや蚊、きよら蚊、ささや蚊、さわや蚊、したた蚊、しなや蚊、しめや蚊、すこや蚊、すずや
蚊、たおや蚊、たから蚊、ちかち蚊、どかど蚊、なごや蚊、なだら蚊、にぎや蚊、にこや蚊、ぴかぴ蚊、ふかふ蚊、ふんわ蚊、ほかほ蚊、ぽかぽ蚊、ほんわ蚊、
まろや蚊、むかむ蚊、やわら蚊の編隊攻撃。
偽モッキンポット師――痛っ、痒っ、痛っ、堪忍してくれまへんか。
――さらに西の海から、あかい蚊、あおりい蚊、うちわい蚊、おながい蚊、くびながい蚊、くらげい蚊、こうい蚊、さきい蚊、するめい蚊、だるまい蚊、だんご
い蚊、なつめい蚊、ひめい蚊、ひれぎれい蚊、ぼうずい蚊、ほたるい蚊、もんごうい蚊、やりい蚊、ゆうれいい蚊の波状攻撃。
偽フン――助けてくれ〜〜。痒い、痛い、痒い！
――お次は北の花畑から、あんぜり蚊、おだまきあ蚊、きんせん蚊、きんりゅう蚊、きんれん蚊、ごくらくちょう蚊、こんろん蚊、さざん蚊、ひとりしず蚊、べ
ろに蚊、ほうせん蚊、ゆっ蚊、りゅうきん蚊、えり蚊、じゃのめえり蚊、すずらんえり蚊、さわぐちえり蚊、おくだえり蚊の奇襲攻撃。
休む間もなく、えん蚊、おうえん蚊、かくめい蚊、ぐん蚊、こう蚊、さんび蚊、しょう蚊、そうもん蚊、ついとう蚊、ばん蚊、りょう蚊、ろうどう蚊、わ蚊、た
ん蚊、ちょう蚊、きょう蚊の撹乱攻撃。
＜参考文献＞
井上ひさし『仇討』（中央公論社、1983年）
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