2012年10月05日発行 1250号
【日本共産党の「尖閣」見解/「棚上げ」をだらしのないと批判/あまりに露骨な選挙めあて】
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日本共産党の志位和夫委員長は9月20日、尖閣諸島問題に関する「見解・提案」を藤村修官
房長官に申し入れた。その内容は以下のとおり(9/21赤旗)。
まず尖閣諸島の領有権について。共産党は以下の理由で「日本の領有は歴史的にも国際法上も正当である」と主張する。「日本は、1895年1月に、尖閣諸
島の領有を宣言したが、これは、『無主の地』の『先占』という、国際法上まったく正当な行為であった」「日清戦争による台湾・澎湖(ほうこ)列島の割譲と
いう侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為であった」
次に、共産党は「歴代の日本政府の態度には、重大な問題点がある」と批判する。具体的には「領土問題は棚上げする」という暗黙の了解を中国と交わしたの
は間違いだというのである。これは「だらしのない外交態度だったといわなければならない」。
共産党は同趣旨の文章を9月11日付『赤旗』(選挙のページ)にも掲載している。このような見解で「意思統一」を迫られる共産党員が気の毒でならない。
共産党の見解は歴史を見誤っている。古賀辰四郎という民間人が1885年に尖閣諸島の開発許可を願い出た際、明治政府は「清国の領土かもしれない」との
理由で領有を見送っている。「事情も違ってきている」として、日本領編入を閣議決定したのは10年後の1895年のことだった。
態度が変わった背景に何があったのか。日清戦争の勝利である。日本が連戦連勝を重ね、台湾を占領し今後の領有に備えるという作戦が始動したまさにその時
期に、尖閣の編入は行われた。これを「侵略主義と性格が異なる行為」と言い張るのは無理がある。
そもそも「無主地先占」は帝国主義国による領土拡張・植民地獲得を正当化する法理である。そんな泥棒の理屈に「侵略戦争と植民地支配に反対を貫き」
(9/11赤旗)という政党が依拠するのはおかしい。
「棚上げ」を「だらしのない外交態度」と批判するに至っては、右翼顔負けの民族主義的偏向だ。日中双方が「毅然とした態度」で尖閣諸島の領有を争えば収
拾がつかなくなる。領土対立が武力衝突に発展した事例は多々あるが、そうなってもいいのか。
なるほど共産党の見解は「軍事的対応論」を批判し、「冷静で理性的な外交交渉」よる解決を求めてはいる。だが、日本のアジア侵略を軽視した歴史認識で尖
閣の領有権を主張すればどうなるか。中国民衆の感情を逆なでし、事態を悪化させることは目に見えている。
共産党がこのような見解を出したのは、解散・総選挙を控え、領土問題で批判されることを恐れたからであろう。その結果が野田政権とほとんど同じ主張とは
情けない。日本帝国主義と闘った同志たちが草葉の陰で泣いているぞ。 (O)
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