2012年10月19日発行 1252号

【みる…よむ…サナテレビ237 アブグレイブ刑務所の虐待は続いていた―マリキ政権の犯罪】

 2012年6月SANAテレビは、バグダッドの西32キロにあるアブグレイブ刑務所前に集 まった人びとを取材した。米軍はイラク占領中ここに何千人もの市民を投獄し、暴行、電気ショック、性的拷問、殺害など、身の毛もよだつ虐待行為を繰り返し た。

 昨年12月、占領は終わった。しかし、マリキ政権は現在もアブグレイブ刑務所で人権侵害、虐待行為を続けている。訴える人びとの家族は、裁判も受けられ ないまま投獄されている。

 ある女性は「私の息子は何もしていないのになぜ7年間も刑務所に入っているのでしょうか」と訴える。次の女性は「息子は4人の娘のめんどうを見なければ なりません。政府が息子を奪ってしまうなんて、私たちがどんな悪いことをしたというのですか」と憤る。

 投獄者たちが逮捕された状況もひどいものだ。仕事につくのを待っていただけなのに、いきなり45人の労働者が逮捕された。ある男性の息子は何の犯罪の証 拠もないまま1年9か月も取り調べを受け、拷問を受けて虚偽の自白を強要された。「私は息子がうけた拷問の診断書を持っています。政府はあの子を犯罪者に 変えてしまったのです」と当局を告発する。

 アブグレイブ刑務所での市民に対する人権侵害と虐待は終わっていなかった。怒りがこみ上げてくる。

 米軍占領時代に拘束された人たちがそのまま何年間も投獄されている。マリキ政権は、政府の腐敗を追及し、まともな生活を求める市民のデモや集会を弾圧 し、何の罪もない人たちを「テロリスト」として裁判なしに投獄する。これがマリキ政権の「民主主義」だ。

 アブグレイブ刑務所の現在の実態を伝えるのは、サナテレビがほとんど唯一ではないか。イラク戦争検証委員会の設置要求の中で、マリキ政権の人権蹂躙の実 態も明らかにしていかなければならない。

 世界では、クアラルンプール民衆戦犯法廷(2012年5月)やオーストラリアでのイラク戦争検証委員会設置要求運動(2012年8月開始)など、新たに 戦争責任追及の動きが広がっている。このような取り組みと連帯し、人権と権利を守るイラク市民の闘いを共にすすめていきたい。

 (イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)


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