2012年12月07日発行 1259号
【未来への責任(115)領土問題ではなく植民地問題だ】
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10月27日、東京で「強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」(以下、日韓共同行
動と略す)結成の集いと記念シンポジウムが行われた。日韓共同行動の目的は、これまでの枠を大きく超えて立法化運動を広げることである。
第1部では、母体である強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワークの持橋多聞共同代表からあいさつがあり、独島(竹島)・尖閣諸島(釣魚島)問題等に
よる日韓・日中の軋轢(あつれき)の中での戦後補償問題解決の重要性が提起された。
第2部のシンポジウムは、タイムリーで非常に興味深いものだった。
韓国・東北アジア歴史財団研究員の南相九(ナム・サング)さんは言う。日韓関係の悪化の根底にあるのは、独島問題を歴史問題であるとする韓国と、歴史問
題から切り離す日本との違いであり、日韓共同の世論調査で「歴史問題が日韓関係の障害に大いになると思う」との見方が日本では15%だったのに対し、韓国
では43%あった。日本は謝罪したというが、閣僚や影響力のある政治家からそれを否定する発言がこれまで繰り返しなされている。「アジア諸国の人びとに対
して多大なる損害と苦痛を与えた」と言いながら、その事実の調査・確認を行ってこなかったために、このような否定発言が生まれる。日本は侵略と植民地支配
への反省がなく、平和国家とは見られていないのだ。
韓国最大の保守系紙『朝鮮日報』は、日本のイラク派兵部隊がA級戦犯を合祀する靖国神社に最敬礼している戯画を躊躇なく掲載した。戦中をまるまる引き
ずっている―これが韓国の日本観である。
よく比べられる戦後のドイツについて、佐藤健生・拓殖大学教授は指摘した。9か国と国境を接するドイツは「ヨーロッパの一員」として生きていくことを選
択し、最初は押し付けられた謝罪と賠償を自らのものとし、「過去の克服」のための具体的取り組みを行ってきた。だから、「再発防止=二度と起こさない」を
欧州の誰もが認めている。日本とは対照的だ。事実の認知と解決のための具体的行動がその基礎にある。
樋口雄一・高麗博物館館長は、主催者から要請された「コロニアリズムを超えていくとは/日本に問われていること」というテーマに少し違和感を感じると述
べていた。日本人は植民地支配についてどの程度認識しているだろうかと提起し、「植民地支配といえば日本人は創氏改名などを思い浮かべる。しかし、それは
韓国では“巨大な監獄”と表現されている。“巨大な監獄”を生きてきた朝鮮人のことをもっともっと知らなければならない。それが戦後補償を進めていく上で
日本企業や日本人を納得させる条件の一つとなる」と訴えた。
立法化は、困難ではあるが平和な日韓関係を創造する重要な取り組みである。要(かなめ)は、これまでになく強まっている日韓市民の連帯した運動だ。侵略
と植民地支配の実相を掘り起こし、立法化運動を広げていきたい。
(グングン裁判の要求実現を支援する会・御園生光治)

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