2012年12月14日発行 1260号

【IAEAが福島に拠点/被害隠ぺいする原発マフィア】

 IAEA(国際原子力機関)が福島県に拠点作りを進めている。年明けにも建設工事開始とい われる。いったいIAEAとは何者なのか。

軍事利用の後始末

 戦後、東西冷戦が激化する中で、米ソ両国は核開発に躍起となり、1950年代に入ると相次いで水爆実験に成功した。米国は水爆開発の事実を隠し続けてき たが、第五福竜丸事件(米国が南太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で、近くで操業していた日本の漁船・第五福竜丸が被爆)で世界に知られると、一転して 「核物質の管理強化」を訴え始める。1953年、アイゼンハワー米大統領が「アトムズ・フォー・ピース」(核の平和利用)を訴え、IAEAの設立と IAEA管理下での核物質の「平和目的」転用を訴えた。このとき「平和利用」の方法として考案されたのが、発電への転用だった。原発は、軍事目的で開発し た核物質の管理に困った核保有国が核物質の転用策として考え出したものだ。

 1957年に発足したIAEAは「全世界における平和的利用のための原子力の研究、開発及び実用化を奨励し、援助する」ことを目的とする。国際的な原発 推進組織だ。

 軍事面では、核拡散防止条約(NPT、1970年発効)に基づき、非核保有国に対し、核兵器を開発していないか査察を行う。核保有国にはNPTにより核 兵器削減が義務づけられているが、核兵器の削減は容易に進んでいない。NPT・IAEA体制は事実上、核保有国だけに核兵器独占の特権を与えている。

健康被害を隠ぺい

 WHO(世界保健機関)という国際機関がある。「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的に必要な条約や協定を制定し、加盟国に勧告 を行うことができる。ところが、世界の人々の健康を守るためにWHOがこうした権限を行使すると原発推進に支障が出ると考えたIAEAは、WHOから健康 管理に関する権限を奪おうと試みた。その結果、1959年にWHOとIAEAの間で協定が結ばれた。

 この協定では、WHOとIAEAが活動する際の重要事項は互いに相手の合意を得るよう義務づけている。IAEAはWHOの活動に制限を加えることができ るという内容であり、WHOが原発・核兵器に由来する健康問題に関してIAEAと異なる見解を発表することは不可能だ。

 IAEAは、チェルノブイリ原発事故の際にも、被害の著しかった地域に調査団を派遣した。この調査団は、原発事故による死者は「50人」、甲状腺がんで 亡くなった子どもは「9人」とするなど、事故の影響を極端に過小評価する報告書をまとめた。チェルノブイリの悲惨な健康被害をもみ消した。

 このときのIAEA調査団の責任者が重松逸造。メンバーとして健康被害の隠ぺい・もみ消しを行ったのが、長瀧重信と山下俊一である。

 長瀧は、首相官邸の「原子力災害専門家グループ」の一員として、チェルノブイリ原発で処理作業にあたった「リクビダートル」と呼ばれる人びとにすら健康 被害はなかったと主張している。山下は、言うまでもなく福島で行われている健康管理調査の責任者。福島での調査は初めから、チェルノブイリで健康被害を隠 ぺいした「A級戦犯」の手でスタートしたのだ。

除染研究の名の下で

 福島県が「福島県環境創造センター」(仮称)の名称で設置を予定している施設は福島県南相馬市と三春町の2か所。IAEAから研究者を受け入れるほか、 IAEA関係者が福島入りした際の足場になるという。

 福島県の「基本構想」は、県内各地を早急に放射能汚染から回復させるため、除染と放射線に関する研究を行う拠点として2016年度の全面開所を目指すと している。福島県民のための研究施設を装うが、真の狙いは、反原発の声を抑え込み、最も被害の酷い福島で健康被害をもみ消しながら、国際原子力ロビーと原 発の生き残りを図るための拠点とすることにある。

 12月、IAEA受け入れに先立ち、日本政府主催の「原子力安全に関する福島閣僚会議」が郡山市で開かれる。これに対し、「原発いらない福島の女たち」 を中心に12月14〜16日、反IAEA行動が取り組まれる。国際原子力ロビーによる健康被害隠ぺいと巻き返しを許してはならない。

フクシマ・アクション・プロジェクト

12月14日(金)〜12月16日(日)

対福島県アピール(福島県庁前)/IAEAへの申し入れ(ビッグパレット)  /福島県内外団体との連帯行動(郡山市) /フクシマ・アクション・プロジェクト市民集会(郡山女子大学)

http://npfree.jp/fukushima.html
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