2012年12月21日発行 1261号

【放射能問題を無視する医者とメディアにどう対抗するか/ヘレン・カルディコット医師講演会/官邸前行動で「白衣デモ」 を】

 11月18日、都内でヘレン・カルディコット医師講演会(主催・みんなのカルテ/共催・放 射能防御プロジェクト)が開かれ、約200人収容の会場が埋まった。

 ヘレンさんはオーストラリア出身。IPPNW(核戦争防止医師会議)の上部組織、PSR(社会的責任を果たす医師団)の創立会長で、『原子力は温暖化へ の回答ではない』などの著書がある。

 ヘレンさんは、チェルノブイリ原発事故当時のヨーロッパの汚染状況を「英国でも汚染のため閉鎖される農場が出た。ドイツではイノシシの汚染が深刻になっ た」と報告。「チェルノブイリには脳の小さな子どもたちが多い」と、放射能が子どもたちに与える影響を具体的に指摘した。

  市民を被曝から守るために今後何をすべきか、との問いに、(1)土壌・水・食品の十分な測定(特に飲料水は毎日測定し、太平洋側で採れた魚もすべて測定す ること) (2)汚染食品の流通禁止 (3)ゴミ・がれき焼却の禁止 (4)汚染地からの避難―が重要、とした。

   *  *  *

 講演会の後半は、放射能問題に向き合おうとしない医師やメディアとどう対抗すべきかをヘレンさんと参加者が議論した。

 首都圏の開業医は「日本の専門家は組織化されすぎて、ひとりひとりが自由に考え発言・行動できないことが問題だ」と、医師会が医療従事者に対する抑圧機 構となっている現状を報告。埼玉県の別の開業医は、フェイスブックに放射能による健康被害の可能性がある症例を書き込んだところ「世間の不安を煽るな」と 福島県の医師から猛烈な抗議を受けたという。

 福島県内の医療従事者のこうした隠ぺい、もみ消し加担の動きに対し、ヘレンさんは「大変憂慮すべき事態。私に日本医師会で講演する機会を与えてくださ い」と応じた。

 メディアが放射能問題を一切取り上げない現状に対しては、「医療従事者が数十人単位でまとまって行動し、社会の注目を集めることが必要だ。金曜日の官邸 前行動で『白衣デモ』をしてはどうか。白衣で官邸前を占拠すればいい」といった具体的な行動提案も。

 ヘレンさんは、自らの反核運動の経験から「レーガン米大統領に会って反核を訴えたら、その後、レーガンとゴルバチョフ・ソ連共産党書記長との会談で核軍 縮が実現した。1人の医師にもできることがある」と行動することを訴えた。


ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS