2014年01月04日・11日発行 1263号
【インタビュー MDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長/命よりカネのグローバル資本と闘う/MDSととも
に】
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12月総選挙結果をどうみるか。現在の運動の課題と
MDS(民主主義的社会主義運動)の役割は何か。2013年の展望を佐藤和義委員長が語る(12月20日)。

自民に支持なし
総選挙結果について多くのメディアが「自民圧勝」と報じたが、実は、自民党は全く支持されていない。
大敗した前回2009年の選挙から比例区で200万票以上も得票を減らした。2005年の小泉郵政選挙の2600万票からは1千万票近く減らしている。
全有権者の16%の得票しかなく、不公正な小選挙区制によって議席をかすめ取ったにすぎない。東京新聞などは「比例区で後退、民意を反映していない」と
ちゃんと報じている。
一方で、民主党政権が有権者の意思に反して強行した原発再稼働、消費税増税、オスプレイ配備などの政策を、国民が認めないことがはっきりした。民主党は
自滅した。
戦後最低の投票率、自民党単独過半数は、投票前にメディアが「自民党大勝」予測を何度も何度も流し、人びとをあきらめさせてきた結果だ。
日本維新の会が「第三極」でも何でもないこともはっきりした。3年前、民主党に入った票の一部が流れただけで、爆発的な動きはなかった。一時期、自民に
取って代わるかのようにメディアは流布していたが、そうはならなかった。橋下の「本拠」の大阪でも、入れ墨調査拒否処分撤回署名の集まり方を見れば、橋下
批判はかなり広がっている。
維新の議席は、自民党にとっては何の価値もない。憲法に手をつけようとするときに多少意味があるくらいで、連立の対象にすらならないのだから、役割は小
さい。
2012総選挙党派別議席数と比例区得票数(12月16日) |
|
|
議
席 |
公
示前議席数 |
比例区得票 |
09年比例区得票数 |
|
選挙区 |
比例区 |
計 |
得票数 |
得票率 |
|
|
|
|
|
千
票 |
% |
千
票 |
自民 |
237 |
57 |
294 |
119 |
16,624 |
27.7 |
18,810 |
民
主 |
27 |
30 |
57 |
230 |
9,629 |
16.0 |
29,845 |
維
新 |
14 |
40 |
54 |
11 |
12,262 |
20.4 |
- |
公
明 |
9 |
22 |
31 |
21 |
7,116 |
11.9 |
8,054 |
み
んな |
4 |
14 |
18 |
8 |
5,246 |
8.7 |
3,005 |
未
来 |
2 |
7 |
9 |
61 |
3,424 |
5.7 |
- |
共
産 |
0 |
8 |
8 |
9 |
3,689 |
6.1 |
4,944 |
社
民 |
1 |
1 |
2 |
5 |
1,421 |
2.3 |
3,006 |
大
地 |
0 |
1 |
1 |
3 |
347 |
0.6 |
433 |
国
民 |
1 |
0 |
1 |
2 |
71 |
0.1 |
1,220 |
無
所属 |
5 |
0 |
5 |
10 |
- |
- |
- |
合
計 |
300 |
180 |
480 |
479 |
60,180 |
100.0 |
70,370 |
都知事選型陣形はできず
では、なぜ反原発運動の「原発やめろ」の意思を選挙結果に反映させられなかったのか。東京都知事選で実現したような反原発・原発即時ゼロの陣形が衆院選
ではできなかったからだ。
都知事選では、宇都宮候補を立てて、共産党、社民党、未来の党、さまざまな反原発グループも支援に入った。政党の組み合わせではなくて、反原発や被災者
支援に関わってきた多くの人たちが主体となった。そうした統一の方向が国政レベルで実現していれば、結果は変わっていただろう。小選挙区制で勝とうとすれ
ば、こういう壮大な統一を実現しなければならない。
日本未来の党は反原発世論の支持を得られなかった。単純なことで、橋下とともに大飯原発を再稼働させたのは代表の嘉田知事なのだから、支持されるわけが
ない。
さらに、福島原発被災者の生活再建、原発事故の責任追及を明確にし、福島県内と県外でダブルスタンダードをとることなく、被災者の権利をきちんと主張し
ていかなくてはならない。反原発運動を作ってきた新しい力を反映する選挙の構想と選挙運動がなかったことが、共産、社民などが議席数で敗北した理由だ。
同時に、反原発運動の中に「脱組織・脱政治」というような空気があった。それは、日本の左翼運動・民主主義運動が抱えてきた弱さ、官僚主義的な弱さに対
する批判として表れた。
既成政党の側もその弱点に頬かむりし、擦り寄れば票が入るかのように錯覚をしているけれども、反原発連合の票は共産党に入ったか? 入っていない。
今回の都知事選型の運動がすべての地域でできていれば、衆院選もこうはならなかった。いずれにしろ、運動を強めていけばいいし、そうでなければならな
い。

あきらめ≠ニ脅し
今後どうなるのか。安倍らは、自分たちが支持されていないのは分かっている。そこで「自民党が圧勝した」との「錯覚」を利用して、できなかった政策を
やっていこうとする。
支配層の手口は同じだ。支持されていない人たちだから、結局あきらめ≠ニ”脅し”を使うしかない。選挙結果を「いくら反対したところで、こうやって自
民党は勝つんだよ」と思わせ、あきらめさせる。警察が反原発運動に対する執ような挑発・逮捕を繰り返しているように、脅しにかかって運動の中のフワッとし
た層を怖がらせる。
彼らは「これから先、もうこんなチャンスはない」と考えて、一気にやろうとするかもしれない。原発再稼働、消費増税、TPP(環太平洋経済連携協定)な
どだ。憲法にも手をつけたいと思っているだろう。
しかし、現実には16%の支持しかなく、錯覚を利用して強行しようとしているにすぎない。落ち着いて構え、反撃していけば十分に突破できる。
支配層は、敦賀原発の活断層問題のように一つや二つは停止・廃炉にするだろうけれど、基本的には再稼動を狙っている。電力資本に儲けさせようとしてい
る。だから、姑息な手口に対して、粘り強く闘っていく必要がある。
支持されていない者が政権を担う下では新聞・テレビ・インターネットなどのメディアで流れる情報は権力側の意図に沿ったものが多い。あきらめさせる、怖
がらせるという意図を持った情報だ。
そうしたときに、情勢を科学的に分析し、グローバル資本の弱点を厳しく追及する方向を打ち出す理論と情勢分析が必要だ。権力の動向にひるむことなく、挑
発に乗ることなく闘っていく組織的力がますます必要になる。
アメリカのオキュパイ運動の中のアナーキスト(無政府主義者)たちのように、「組織すべてを否定する」といった考えでは闘えない。
グローバル資本のしつこさと強大さに立ち向かうためには、闘う組織の必要性がますます明確になってきている。
われわれMDSは、原発事故の当初から即時廃炉を主張してきた。その道筋として、再稼働を阻止することで廃炉へ、と一貫して言ってきた。既存の諸政党
は、最終的には原発ゼロ・即廃炉を掲げるようになったが、なかなかそこまで言わなかった。
議論を避けるのではなくて、主張すべきことを主張する。原子力支持の人たちの考えをも変革していく立場に立てば当たり前のことであって、何も難しいこと
ではない。
福島で「避難してもいい、避難すべきだ」と言うと評判は悪くなるかもしれない。けれども、それは民衆の本質的要求だ。福島のメディアで非難されることが
あっても、福島の県民の一部から批判されることがあっても、正しいことは正しいと貫いていけば変わっていく。


ウソのシステムは通じない
2012年の世界を振り返ってみれば、グローバル資本主義の新自由主義が世界的に後退・崩壊していく局面だった。彼らに対する鋭い抗議の運動が全世界に
広がった。そういう時代だ。
完全に勝利したところはないかもしれないが、運動の中で民衆が解放されていき、ヨーロッパのように「緊縮財政を認めない」とグローバル資本を追及する形
で運動はずっと続いている。一度切りひらいた意義は大きい。二度と後退はしない。
日本では、これまで権力・政府・資本・メディア・学会が結託して「原発は安全だ、推進すべきだ」と言ってきた。この「ウソのシステム」のばかばかしさに
みんな気がついた。これはもう変わらない。だから、選挙結果を見て「自民党が勝ってよかった」と言う人はあまりいない。せいぜい3割程度で、大半は「なん
だこの結果は」と思っている。
選挙結果がどうあろうと「ウソのシステム」に気づいた人びとはもうだまされない。その力、変革をもたらした運動に確信を持って働きかけを強めなければな
らない。今こそ強めるべきときだ。
なぜなら、繰り返しになるが、選挙結果の錯覚を利用して、政府・電力会社は、原発を再稼働しようとする。いろんなことを仕掛けてくる。だが、彼らは「こ
のチャンスにやらなければできない」とあせっているだけだ。だから「やられっぱなしだ」と思う必要はない。
でたらめな安倍インフレ策
ここで特に警戒しなければならないのは、安倍の経済政策だ。
いったいこの「インフレターゲット」とは何だ。これは、じゃかすか金をばら撒いてインフレにさせて儲けようというでたらめなものだ。
インフレになって賃金が上がるのは一番最後。損をするのは労働者だ。
「日本の景気が悪い、デフレだから悪い」というが、それは労働者の賃金が減らされ続けているからだ。安倍はデフレの原因、不況の原因を全くすりかえてい
る。
非正規労働者ばかりを増やして給料を減らすから、買う人がいなくなっている。みんな車を買うほど給料はもらっていない。全世界で労働者の給料を下げて、
物が売れないのは当たり前だ。
グローバル資本は、儲かった金で人を雇うのではなく、博打(ばくち)につぎこんでいる。金利ゼロの資金を使い放題に供給することは、投機資金を提供する
だけだ。博打の資金を政府が供給する必要など全くない。その金を取り戻さなければいけない。安倍のインフレターゲット、インフレ政策は絶対に認めてはなら
ない。
グローバル資本は取った金をまた違ったところで使う。労働者と民衆は物価が上がってますます苦しくなる。その上、消費税が増税されたのではたまったもん
じゃない。ついには破産せざるを得なくなる。そんなばかげた政策だ。「物価が上がって金回りがよくなれば、そのうちにきっとよくなるだろう」とは絶対にな
らない。
デフレの克服には、まず給料を上げること。公共事業ではなく被災者に対して完全な補償を行うこと。何十兆円も使うならその金で完全な補償を行う。それ
が、日本の経済社会をまともにしていく。
変革のためのMDS
「99%」はすべて同じ問題を抱えている。働きかけることは決して難しくはない。
MDSは当初から「原発推進の背景はグローバル資本主義。その代表が金融資本だ」と言ってきた。「99%」の敵である「1%」が誰か、を繰り返し明確に
し、仲間たちが、反原発運動に来る人たちが「いったいなぜこんなことになるのか」と考える原因を明らかにし、システムの間違いを正していく。こうすること
で変革は可能となる。
そのためにこそ、情勢分析や宣伝をする政治組織があり、機関紙『週刊MDS』があり、働きかけがある。MDSの役割は、ますます重要になってきていると
思う。
ストレートに単純明快に「誰がこの事態をもたらしたのか。どうすべきか」と語りかける。その中で、反原発・原発即時ゼロを中心とした闘いを推進し、グ
ローバル資本の横暴に歯止めをかけ規制する。それを全世界の仲間と連帯して進める。その先にこそ勝利は見えてくる。



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