2013年08月02日発行 1291号

【反戦イラク帰還兵 普天間に呼びかける/2012 アーロン&アッシュ スピーキング・ツアー/マブ イ・シネコープ制作/DVD作品/46分/軍事主義の壁をのりこえて】

 2012年11〜12月、アートやスピーチで反戦活動を続ける二人のイラク帰 還米兵が来日し、各地でスピーキング・ツアーと作品展示を行いました。一人はアッシュ・キリエ・ウールソンさん (写真左)。2008年の9条世界会議以来毎年来日し、これが8回目でした。もう一人はアッシュの友人である アーロン・ヒューズさん(写真右)。アッシュの語る沖縄の人びとの米軍基地反対闘争や日本の反戦運動に強い関心 を持ち、今回の来日となりました。このドキュメンタリーは、二人の沖縄および大阪での活動の記録です。

 彼らが来日した当時の沖縄では、日米両政府によってオスプレイが普天間基地に強行配備され、住民の抗議行動が 盛り上がっていました。沖縄の人びとの抗議の対象である「米軍」の一員であったアーロンとアッシュは、沖縄の人 びとや基地に出入りする米兵に対して、どのような言葉で語りかけたのでしょうか?

 二人の言葉の端々からは、「軍隊は住民も兵士も守らない」という強い信念が伝わってきます。アッシュがイラク に派遣されてまず教えられたのは、イラクの人びとを「ハジ」と呼ぶこと。「ハジ」とは、イラクやアフガニスタン の人びとを「自分たちとは違う人間」として、殺人を行いやすくするために使われる蔑称です。アッシュは、「たか がハジのために車を止めるな」と上官に諌(いさ)められ、爆撃を受けて瀕死の状態になったイラク女性を救えな かったことに自責の念を感じている、と語ります。

 一方、軍隊の構成員である兵士たちの心と身体も、暴力に蝕(むしば)まれています。米兵たちは平均3回戦地に 派遣され、防弾チョッキの支給すらなく、現役兵の50%以上がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでい る現実があります。加えてアーロンは、1957年以来、長い年月と莫大な費用をかけたオスプレイ開発計画の中 で、36人の米兵が犠牲となり、25人が重傷を負ったことを指摘し、「軍隊は人間を一切考慮しない」と断言しま す。

 アーロンとアッシュは、普天間ゲート前の抗議行動に参加した際、軍隊によって消耗品のように扱われる兵士に対 して「ヤンキーゴーホーム!」と叫び続けることは、効果がなくかえって憎しみを生んでしまうと感じたそうです。 代わりに彼らが選んだのは、「海兵隊員の仲間たち(Devil Dogs)」に対して「自己の良心に忠実たれ!(Semper Fi!)」「一緒にやろう!(Join us!)」と呼びかけることでした。

 沖縄の人たちの「怒り」の底には「痛み」があることを忘れるわけにはいきませんが、軍事主義によって分断され た人びとがつながることが、巨大な軍産複合体に立ち向かう第一歩なのだと気づかせてくれる1シーンです。戦争が 「敵」を生み出し、非人間化することであるならば、二人の活動は、「敵」とされている人びとと同じ目線に立って 暴力をなくしていくための営為であると言えるでしょう。(大学院生・中村)

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・問い合わせは、マブイ・シネコープまで。(FAX 06-6786-6485)
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