2013年08月16日・23日発行 1293号
【麻生「ナチスに学べ」発言/民主主義絞殺の手口に学びたい!?/改憲勢力の恥ずべき歴史認識】
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日本の大臣が世界にまた恥をさらした。麻生太郎財務相(副総理)の「ナチスに
学べ」発言である。
問題の発言は7月29日夜、改憲や国防軍の設置などを提言する「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)が
都内で開いた討論会でのもの。パネリストとして出席した麻生は憲法「改正」をめぐりこう語った。
「(戦前のドイツでは)憲法はある日気づいたらワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんです
よ。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」
その後、麻生は「憲法改正は落ち着いて議論することが重要だと強調する趣旨」だと釈明し、発言を撤回した。し
かし、普通に聞けば、憲法「改正」はナチスの手口に学べと言っているとしか解釈できない。誤解した報道が悪いと
言わんばかりの主張は見苦しいの一言に尽きる。
政治家失格の暴言
麻生発言は歴史的事実に反している。まず、「ナチス憲法」なんてものは存在しない。ヒトラー率いるナチス政権
は「全権委任法」(議会の関与なしに政府が立法権を行使できる法律)を成立させることによって、当時の欧州で最
も民主的なワイマール憲法を実質的に停止したのである。
この法案成立には国会の3分の2の賛成が必要だったが、ナチスは国会議事堂放火事件を口実に共産党議員らを拘
束し、可決に持ち込んだ。騒然たる「非常事態」を演出することによって、ヒトラーは独裁体制を確立させた。決し
て「誰も気づかないで変わった」のではない。
こうしたナチスの手口に学んで憲法「改正」に臨めと言うなら、とんでもない話である。まずは、「中国や北朝鮮
の脅威」を煽りつつ、集団的自衛権行使の容認をはじめとする「解釈改憲」を積み重ね、平和憲法を骨抜きにすれば
よい、ということになるからだ(学ぶどころか、安倍政権の路線そのものだが…)。
そもそも、憲法が「誰も気づかないで変わった」手口に学べとは、どういうことか。新憲法案の危険な中味には気
づかれないようにして改憲手続きを進めよ、ということか。民主主義の否定もはなはだしい。
ユダヤ人虐殺など最悪の人権侵害をもたらしたナチスの手口に「学ぶ」と語ること自体、政治家失格である。ユダ
ヤ人人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センターは7月30日に発表した声明で、「ナチス政権のどのやり方
―民主主義を密かに無効にするやり方―に学ぶ価値があるのか」と問いかけた。
こんな男が財務相では日本経済にとってマイナスだ。発言撤回では不十分。麻生は直ちに閣僚及び議員を辞職すべ
きである。
あの橋下が擁護
ところが、麻生は辞職を否定し、安倍政権のお仲間は「これで決着だ」(菅義偉官房長官)と幕引きを図ってい
る。先に「慰安婦」暴言で非難を浴びた橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)に至っては、「ちょっと行き過ぎ
たブラックジョークだったのではないか」と、麻生を擁護した。
「ナチスの手口に学べ」がジョークで済まされるはずがない。世界の非常識、人権意識の欠落もはなはだしい。だ
が、こんな連中が有力政治家としてのさばっているのが日本の現実だ。麻生のナチス発言は、憲法「改正」を狙うグ
ローバル資本の代弁者たちの醜悪な正体を浮かび上がらせた。

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