2013年10月11日発行 1300号

【1300号主張 民営化の破たんは明白 命よりカネ路線は退場だ】

107人殺しても無罪

 2005年のJR福知山線脱線事故で強制起訴されたJR西日本の3社長に対し、神戸地裁は9月29日、無罪判 決を言い渡した。労働者いじめの「日勤教育」など事故を生み出した企業体質、列車が所定時刻通りに走れない過密 ダイヤ、人減らしなどの問題にいっさい触れないまま、107人を殺した国策企業JR西日本の誰も罪に問わず免罪 した。司法はグローバル資本の番犬ぶりをさらけ出した。

 JR西日本の「天皇」と呼ばれ、強権的な企業体質を作った張本人の井手正敬・元社長は、事故以降、公の場に一 度も姿を現さず遺族・被害者との対話にも応じなかった。法廷でニヤニヤ笑いながら上を向く傲慢な態度に、遺族は 「ナイフでも手元にあったら投げつけてやりたい」と怒りを爆発させた。

相次ぐ事故と安全破壊

 JR北海道でも事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きが連日明らかになっている。07年に相次いだレール破 断から危険が表面化し、11年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難。今年に なって、車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 安全無視の実態も明らかになった。自社で決めた保守点検マニュアルすら守らず、線路は4センチ近くも広がった まま放置。歪みが見つかりながら1年も修理されない場所もあった。現場が本社に資材の更新を要求しても予算はつ かず、人員も減らされた現場は疲弊。ついにミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハ ンマーで破壊する事件まで起きた。乗客の安全を守るべき鉄道の現場で、労働者が極限まで追い詰められている。

 北海道以外のJR各社も同じだ。JR東海は、会社発足以来、新幹線の保線を担当していた熟練労働者を外国人で あることを理由に解雇。JR西日本でも、偽名で登録させられ仕事で負傷しても労災適用の受けられず、また、多重 下請構造の中で誰に雇用されているのかわからない下請労働者が多数送り込まれている。原発下請構造と同様に、労 働者をモノ扱いする企業の違法行為が安全を崩壊させ市民の生命を脅かしている。

元凶は新自由主義

 危機的事態をもたらした根本的原因は、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人 もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やり たい放題社会の入口になった。

  安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権 利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起 き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業に移され、事実上再公有化された。日本で も、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作りだそう。

   (9月30日)
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