2014年01月24日発行 1314号

【本当のフクシマ/原発震災現場から/第47回/支援法つぶしの黒幕は経産省だった】

 「内閣府チェルノブイリ視察 支援法理念、報告書で否定」との見出しで、毎日新聞が報じたのは、2013年12月1日。被災者の自己決定権を認め避難・残留・帰還にかかわらず支援するよう定めた画期的な「子ども・被災者支援法」。そのモデルとなった「チェルノブイリ法」を否定する報告書を作成するため、内閣府が公費で職員をウクライナ、ベラルーシなどに派遣していた、というスクープだった。

 視察日程は2012年2月下旬から3月上旬。報告書は原子力被災者生活支援チームが作成した。内閣府に属するチームだが、視察者のほとんどは経産省関係者。出張旅費も経産省が支出しており、報告書の作成が経産省主導であることは明らかだ。

 ジャーナリストの木野龍逸氏が情報公開請求によって報告書を取り寄せ、インターネット上で公表している。被災者と支援法に対する憎悪むき出しのひどい内容だ。チェルノブイリ法による移住基準は「政治的背景に基づくもので過度に厳しい」、補償や支援策が「既得権」になっており「安易に被害者認定」が行われている、「膨大なコストに見合う効果はない」などの誹謗中傷が並ぶ。ここまで来ると、在特会の「ヘイトスピーチ」なみだ。

 その上、ベラルーシの「エートスプロジェクト」(汚染地区でどう生活するかを教える内部被曝促進運動)について、「住民が主体的に参加して自ら問題発見を行い、その解決により環境改善を行う」として手放しで礼賛する。

 これが彼らの本音だ。同時に、子ども・被災者支援法実施に抵抗し続けた復興庁というのは見せかけにすぎず、支援法つぶしの黒幕が経産省だったことに改めて確信を持った。支援法の実効ある実施の道は、中央では閉ざされているように見える。

 私たちは今後、どうすべきなのか。自治体で独自に避難・移住者受け入れを始めた長野県松本市や、健康診断支援・保養プログラム助成、公営住宅支援の弾力的運用などの請願を県議会で可決した滋賀県の動きが参考になる。住民に最も近い「基礎自治体」に支援を考えさせ、実施させるのだ。

 従来から国は、医療・福祉など利権にならない住民サービスには無関心であり、事実上、自治体に丸投げしてきた。人口減少社会の中、各自治体は人口の維持に苦慮している。避難者への独自施策のように住民サービスをまじめに行う自治体には、避難者のみならず住民が集まると理解されれば、突破口は必ず開ける。

     (水樹 平和)
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