2014年11月21日発行 1355号
【ミリタリー/続発する自衛隊「いじめ自死」事件 /殺人組織の本性露呈】
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4月23日、東京高等裁判所が自衛官の「いじめ自死」についての「たちかぜ事件」裁判控訴審で、遺族の主張を認め、元先輩自衛官と国に対する賠償許容額も7700万円と一審から大幅に増額する判決を言い渡した。
「たちかぜ事件」とは、2004年10月、海上自衛隊横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」の一等海士(電測員)が鉄道に飛び込み自死。03年に入隊したこの隊員は先輩隊員から、執拗ないじめ・暴行・恐喝を受けていた。自死の直後、自衛隊の警務隊は遺族に「原因は借金」だと説明。ところが警察が現場で発見したリュックから手帳や遺書が発見され、いじめの事実が明らかになったものだ。
情報隠しは当たり前
大きな注目を浴びたのは、自衛隊の内部で繰り返されているいじめの実態とともに、自衛隊の組織ぐるみの事実隠しだった。海自は、隊員の自死後「たちかぜ」全乗員に暴行や恐喝の有無を尋ねるアンケートを実施したが、遺族の公開要求に対して海自側は「アンケートは破棄した」と回答。12年4月、調査に関わった三等海佐(三佐)が東京高裁に「アンケートは残っている」との意見陳述書を提出し内部告発するまで、うその回答を続けたのである。
内部告発したこの三佐に対して、「内部調査文書のコピーを持ち出した」として自衛隊側が懲戒処分手続きの対象としていたことも露見。さすがに批判沸騰確実であろう三佐への処分はされなかった。とはいえ、アンケート隠蔽工作に関わった海自組織の関係者処分の最高が停職5日であることを見れば、自衛隊がいじめや暴力の根絶よりも組織体制の保持を最優先する組織であることが分かる。
自衛隊員による他の不祥事、たとえば飲酒運転などの処分も、他の公務員に比べて驚くほど軽い。それは、自衛隊で最も重い罪が「命令違反」であるとする軍隊として当然の規範からきている。隊内での直接的な指示・命令とは関係のない飲酒運転などとるにたりない「軽犯罪」にすぎないのだ。
「たちかぜ事件」は氷山の一角である。横須賀基地の護衛艦「はたかぜ」事件(07年12月)、佐世保基地の護衛艦「さわぎり」事件(98年〜99年)など、表に出た「いじめ自死」は少なくない。海上自衛隊だけでなく、航空自衛隊や陸上自衛隊にも同様の「いじめ自死」事件が発生、露見している。また「自死」ではないが、「徒手訓練」と称した集団暴行致死事件(13年、原告勝訴判決)も記憶に新しい。だが訴訟になった事案はほんの一握りだ。「いじめ自死」以外でも、隊内では様々な人権侵害事件が続発している。
旧日本軍の「精神」
このような自衛隊内のいじめや人権侵害事件は根絶できるのか。できないと言うしかない。自衛隊は暴力の行使を目的とした組織=軍隊そのものであるからだ。軍隊が、その暴力性を外部だけでなく、内部に向けるのは必然であり、体質とも言える。これは、世界のどの軍隊も共通だ。とりわけ「新兵いじめ」が普通であった旧日本軍の「精神」をも引き継ぐ自衛隊に陰湿ないじめを含む暴力がはびこるのは当然である。
自衛隊が、その本質である「武力行使組織」の機能を放棄しないかぎり、これらの事件は繰り返し起こる。
豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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