2014年11月28日発行 1356号

【沖縄県知事選挙 新基地反対の翁長さん圧勝 新基地は作らせない 県民が選択した誇りある豊かさ=@これで歴史が変わる】

 新基地建設を強引に進める安倍政権。沖縄県民の怒りはどう表れるのか。知事選挙の投開票日を前後する11月15日〜17日、沖縄現地を訪れた。新基地反対候補翁長雄志(おながたけし)さんが圧勝。「歴史が変わる」「緑の革命だ」との声を聞いた。沖縄県民の怒りは明確に示された。次は全国で民衆の怒りを表現する時だ。     (T)

 選挙事務所内に用意されたパイプ椅子は200以上ありそうだが、すでに満席。周りも支援者、報道関係者で溢れかえっている。屋外にもテントが張られ、多くの支援者がテレビ画面を見つめる。

県民の見識が先行

 11月16日午後8時、投票終了時刻だ。間髪を入れず、テレビ画面に「翁長雄志当選確実」の文字が出た。歓声と拍手が選挙事務所内外に響きわたった。待ちかねたように、琉球新報、沖縄タイムスが号外を配り始めた。開票作業は0%。いわゆる「ゼロうち」だ。「圧勝」との感触が広がる。「やったー」「これで歴史が変わる」「変えよう」。駆けつけた支援者はお互いの健闘をたたえあうように肩をたたき、握手を繰り返した。

 モノレールの壷川駅から歩いて数分。マンション跡地にプレハブ小屋を建て、翁長選挙事務所の総本部とした。保革の枠を乗り越えた選挙態勢がしかれた。各政党、労組、市民団体はそれぞれの選挙事務所がある。それらを束ねる役割がこの事務所だ。

 翁長さんはテレビカメラに向かって「県民の皆さんの意識は(選挙態勢の)枠組みの先を行っていた」と述べた。投票前日の15日、最後の決起集会でも同様の発言をした。「新しい歴史の1ページを切り開いてほしいという県民の気持ちが"オール沖縄”の形を作った。政治の力より県民の力のほうが先を行っていた。沖縄のあるべき姿を政治家に示した県民の見識が心を一つにした」と語っていた。

若者に夢を与える

 これまでの沖縄の知事選挙は「保革対決」が続いた。今回、新基地建設をめぐり自民党が割れ、経済界が割れ、そして革新側が保守候補を受け入れた。その背景に県民の強い願いと闘いがあった。

 「数年前には考えられないこと」との声があちこちから聞こえてくる。50代の女性は「子どもたちの未来が心配。次の時代に何を残すのか。県民の心が一つになった。新しいリーダーにふさわしい」と基地建設阻止の願いが保革を超えた選挙態勢を作ったことを評価した。そして「就職難は基地があっても変わらない。むしろ北谷(ちゃたん)や那覇(基地返還後の再開発)で結果が出ている。基地返還後、若者に夢が与えられる」と続けた。

 仲井真陣営は「革新不況」のネガティブキャンペーンを張った。事前の世論調査で、年代が若くなるに従い基地受け入れの率が高くなる傾向と報道されていた。高失業率、就職難の影響と解説される。だが、選挙結果はそれを打ち消している。

 40代の男性は「経済的なことにはなびかなかった。仲井真知事が辺野古をOKしたことが、県民の心を固めた」と語った。「基地がなくなった沖縄が見たい」と20代の学生が語り合っていた。沖縄なかまユニオンの若いメンバーは連日、ビラ入れ、手振り、メガホン隊に奮闘した。翁長候補が「誇りある豊かさを!」と訴えたことに響きあう。

 安倍政権は基地建設強硬姿勢を崩していない。辺野古埋立承認取り消し訴訟弁護団長であり、本島北部東村(ひがしそん)高江の「ヘリパッドいらない訴訟弁護団」団長でもある池宮城紀夫(いけみやぎとしお)弁護士は「これは”緑の革命”だ。保革を乗り越える態勢で日米両政府、国家権力に対する闘いに圧勝したんだ」と力強い口調で語った。緑は翁長陣営のシンボルカラーだ。「1609年、琉球は薩摩に支配された。明治以後は植民地だった。昭和天皇が(沖縄を)売り渡した犯罪的状況にノーを突きつけた」と歴史認識の重要性に言及した。基地問題は沖縄の問題ではなく、日本の問題であることを改めて思った。

 沖縄県民は、安倍政権が沖縄を犠牲にし戦争国家へ突き進むのに待ったをかけた。その力となったオール沖縄≠作り出した闘いの現場、新基地建設に反対して座り込みを続けている高江と辺野古に足を運んだ。   《続く》





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