2015年02月20日発行 1367号

【「冷たい・まずい」 生徒7割が食べ残し 橋下のでたらめデリバリー給食】

 橋下大阪市政のでたらめ教育施策の一つに今年度から強引に全員実施したデリバリー給食がある。大阪市の現場教員から報告が寄せられた。

 大阪市内の公立中学校の給食で、生徒が「カレーのルーのないカレーライス」を食べさせられた―。

 2013年度までは温めたレトルトカレーを袋ごと受け取った生徒が自分で開けて食べていた。今年度からはカレーを大きな「食缶」に入れ、それを生徒が小さな容器に詰め替えて食べる方式に変わった。ところが、「たくさん取りすぎた」生徒がいて、全員に配るだけのカレールーが足りなくなってしまった。

 その結果、「カレールーのないカレー」、ただの白米とわずかばかりの野菜やソーセージのおかずだけという生徒が何人も出た。民間業者からは「カレーのルーのなかった人の昼食代金は頂きません」と言ってきただけだ。

 この「カレー事件」は、橋下大阪市長が急ごしらえで始めた民間業者によるデリバリー給食が引き起こした数多い失態の一つにすぎない。

10℃の煮込みハンバーグ

 もともと大阪府の公立中学校の給食実施率は全国水準(82・4%、10年)よりはるかに低い10・5%(同)。特に大阪市はほとんど未実施で、橋下市政以前から市議会決議でも実施を促されていた。橋下は公約の"目玉"に「給食完全実施」を掲げていたこともあり、とにかく急いでコストをかけずに強引に実施した。昨年度まで希望する生徒(実際は約1割)が業者に注文する選択制だったが、昨年4月入学の中学1年生から全員に給食を食べさせることになった。これがひどく不評だ。

 一番の理由は、「冷たく、まずい」こと。ご飯だけは温蔵庫で70℃で保管するが、おかずは「食中毒防止」のために冷蔵庫に入れて10℃にしてある。おかずを温め直す機器はない。それにパックの牛乳(これも冷たい)がつく。

 毎日のおかずが「煮込みハンバーグ」であろうが「すき焼き」であろうが、全部10度。一度食べればわかる。10℃の「煮込みハンバーグ」がおいしいだろうか。

 全員が食べさせられている中学1年生には、「はっきり言っておいしくない。おかずが冷たい」と批判する生徒が多い。一部には「おなかがふくれたら、それでいいから…」とあきらめの声も聞かれる。食べるならまだましで、「ほとんど食べない」と言う生徒もかなりいる。「給食に手を付けない生徒が目立ち、午後は空腹からイライラしがちになっている」という学校さえある。

 昨年6月、市教委の調査では、給食を「全部食べている」と答えたのは10・8%しかいない。「ほとんど食べていない」29・0%、「少しだけ食べている」18・2%、「半分くらい食べている」16・2%。給食を食べ残している生徒は実に73・4%にのぼる。
 さらにもう一つ、大阪市の公立中学校の給食は危険ですらある。

 給食に異物が混入する事態が続出している。明らかになっただけで、髪の毛、輪ゴム、繊維くずが入っていた。虫が入っていた事例もある。

コスト至上が原因

 原因は明白だ。それは、橋下市政が、中学校の給食を校内で調理するシステムにするのではなく、民間業者にデリバリー方式の給食として発注したことによる。学校の中で調理できない以上、おかずは決して温かくならない。

 なぜ民間企業によるデリバリー給食なのか。大阪市の全中学校に給食調理施設を作れば120億円かかるが、「デリバリー方式ならその4分の1の費用で済む」からだ。自校に調理施設のある小学校でも民間委託を進めている橋下にとって、中学校での自校調理などコスト上、論外となる。民間デリバリー給食は、業者を儲けさせ、中学生に被害を押し付けているだけだ。

 コスト至上でなく、子どもや親、現場の声に真剣に耳を傾けさせることが必要だ。カジノや大規模事業の予算を完全給食のための予算に回し、全中学校に校内調理方式による安全・安心な温かい給食を実現しなければならない。

    (大阪市教員・F)

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