2015年02月20日発行 1367号

【安倍の卑劣な責任逃れ/「政府批判はテロリストの味方だ」!?/改憲ムード作りへ批判を封殺】

 自称「イスラム国」による日本人人質事件を、自衛隊派兵の拡大や憲法「改正」のムードづくりに最大限利用しようとしている安倍政権。だが、連中には致命的な弱点がある。人質2人を見殺しにした事実だ。政権の命取りになりかない問題だけに、安倍の応援団のメディアを使い、責任逃れの世論誘導を必死に行っている。

派兵拡大に利用

 安倍晋三首相がおかしい。いや、おかしいのは前からだが、後藤健二さんの殺害が明らかになって以来、『軍艦マーチ』が頭の中で鳴り響いているかのような発言が続いている。「テロリストを許さない」「罪を償わせる」「日本人にはこれから先、指一本触れさせない」等々。

 日本人人質2人を卑劣なテロで殺された怒りでテンションが上がっているのか。そうではあるまい。一連の発言は明らかに9・11事件後のブッシュ米大統領(当時)のそれを意識している。安倍は「テロと戦う強いリーダー」としてふるまう自分の言葉に酔っているのだ。

 今回の事件で日本は米英仏と同じ立場になったと安倍は考えているのだろう。ならば、次なる狙いは「帝国主義国列強」の一員たる証を立てること。すなわち「テロとの戦いへの貢献」を口実とした自衛隊派兵の拡大である。

 対「イスラム国」空爆の後方支援はしないと安倍はくり返しているが、これは世論の反応をみているだけのこと。「憲法上は可能」(1/25NHK日曜討論)という認識を示すなど、いつでもGOサインを出せるのだという含みを持たせている。

 さらに、国会答弁で憲法9条の「改正」に言及するなど(次世代の党議員の質問に対して。2/3参院予算委)、事件を改憲の世論喚起に使いたい魂胆が丸見えである。来年の参院選後に改憲発議を行うことを見据え、当面は「憲法9条のせいで日本人を守れなくていいのか」という議論を起こすことが目標らしい。

馬鹿げた安倍擁護

 もっとも、人質救出の努力を怠り2人を見殺しにした事実が知れ渡ってしまったら、世論誘導どころではなくなる。政権崩壊の引き金を引くことになりかねない。安倍の御用メディアや文化人が政府批判を封じ込めようと躍起になっているのはこのためだ。

 馬鹿げた安倍擁護のサンプルを見たければ、産経新聞にごまんと転がっている。たとえば、2月2日の紙面に掲載された佐々淳行(さっさあつゆき)(元内閣安全保障室長)の一文だ。佐々はまず安倍の対応を「際立って毅然とした陣頭指揮」「危機管理宰相として頼もしい限りだ」とほめちぎる。

 続いて、殺害された人質家族の反応を上から目線で評価する。いわく「政府に対して最善の努力をしてほしいと懇請しつつ、政府や国民に対して感謝をし、迷惑をかけていることのお詫びをしている。約10年前のイラク人質事件のときに最善の努力をしていた小泉純一郎首相を被害者親族が声高に罵(ののし)ったのと比べると大きな成長だ」

 お国に迷惑をかけぬようにふるまい、批判がましいことは言わない。それが日本人の「卓越した市民意識」(2/3産経)というわけだ。政府批判を口にすれば徹底攻撃(自己責任キャンペーン)するくせに、よくもこんなことが言えたものだ。安倍応援団の品性下劣さにはあきれ返る。

明らかに見殺し

 いくらごまかそうが、人命を軽視した日本政府の対応が最悪の事態をもたらしたことは明らかだ。ジャーナリストの常岡浩介によると、外務省は事件が表沙汰にならぬよう、後藤さんの妻とシリア人の現地ガイドに口止めをしていたという(女性自身2/17号)。

 犯人からのメールを外務省が把握したのは12月3日。衆院選公示の翌日だ。人質にされた事実が発覚すれば、集団的自衛権の容認が大きな争点となっていた選挙に悪影響を及ぼす−−そうした判断から口止めに動いたのである。

 また、安倍の中東歴訪について、外務省はパリのテロ事件もあり総理官邸に見直しを進言していたが、官邸が行くと決断したという(2/2報道ステーション)。「イスラム国と戦う国々に2億ドル援助する」との安倍のスピーチも、「総理官邸が主導して作成した」(外務省幹部の証言)と同番組は報じている。

 情報漏えいに怒り狂った安倍に突き上げられたのか、外務省は『報ステ』に文書で抗議した。その文面がすさまじい。「このように事実に反する報道を行うことは、国民に無用の誤解を与えるのみならず、テロリストを利することにもつながりかねない」

 政府批判につながる報道は「利敵行為」だと言うのである。「戦時中か!」と突っ込みたくなるが、安倍と取り巻き連中にとっては「気分はもう戦争」なのだ。だから言論統制でも何でもやる。

 安倍は2月4日の国会答弁で、「外国での邦人に対するテロ事件であり、(特定秘密保護法の指定対象に)該当し得る情報が含まれ得る」と明言した。悪法やメディア支配を使って自分に都合の悪い情報を隠ぺいし、戦争国家づくりに突き進む安倍政権。その暴走を早く止めないと大変なことになる。    (M)



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