2015年05月08日・15日発行 1378号

【「都構想」イメージ戦略を暴く/「大阪市の権限とカネをむしりとる」(橋下)/生活破壊・改憲連合に反対票を】

 「大阪都構想」住民投票が5月17日に迫った。住民説明会の会場は限られ、有権者約215万人(20歳以上の日本国籍を持つ大阪市民)の1%ほどしか入れない。説明も橋下大阪市長がながながと持論を語るだけ。橋下は「世界で闘える大阪」とのイメージのみを振りまくが、投票で問われるのは「大阪都」の賛否ではない。大阪府並の権限を持つ政令市大阪を廃止し、一般市にも及ばない権限の特別区5つと1つの事務組合に分割することの賛否だ。このままでは市民生活がどんな悪影響を受けるのか明らかにされないまま投票日を迎えてしまう。圧倒的な反対集中のために、「都構想」のデマを暴く。

東京は手本か?

 「これは僕の説明会ですから」。反対意見を封じ込め、繰り出す橋下市長のイメージ戦略。「停滞する大阪」と危機感を煽り、「何かしなければ」と自らの土俵を設定する。その上で「繁栄する東京のようになれる」という幻想を抱かせ「都構想しかない」と賛成へ誘導する。

 橋下は、これまでの大阪市政の失敗プロジェクトを列挙し、「大阪市が府の仕事もしている。二重行政が大阪停滞の原因」と説く。「全体で考えるものは東京都のように強力な府庁で、教育・福祉・医療は特別区と分担することが必要。これが都構想の目的。賛成か反対か」と問う。

 大阪衰退の原因は、基礎自治体として行うべき福祉や教育を切り縮め、都市乱開発・ハコモノ行政に投資してきた自公民市政の結果であり、橋下維新市政はさらに純化させている。赤バス(コミュニティバス)廃止、敬老パス有料化、福祉減免・家賃補助の廃止、競争原理を煽る教育改悪。福祉・教育切り捨ての例はきりがない。安心して暮し、働ける生活環境こそ必要なのだ。

 橋下は「繁栄する東京」のイメージで「都構想」の売り込みを図りたいのだろうが、東京は手本ではない。弱肉強食の新自由主義政策の競い合いは都市間格差を広げ、東京は労働者を切り捨て、貧困を作り出す最先端に位置する。東京の税収が多いのは、資本にとって一番利潤が上げやすい「東京一極集中」を意味しているにすぎない。

 「強力な大阪都庁にすれば東京のように発展する」とは悪質なデマだ。「強力な大阪都庁」はますます住民切り捨ての新自由主義競争にのめりこみ、これまで以上の財政赤字を重ねることになる。

「都」の支配下

 橋下は「住民が特別区長を選挙で選ぶから住民サービスが充実する」と言うが、特別区制度には問題が多い。住民サービスの充実はそのための予算をどれだけ優先して確保するかにかかっている。東京とは違い、大阪府、大阪市とも国から地方交付税交付金を受けているが、特別区は交付金が受けられない。ただでさえ財源不足の特別区は国からの交付金総額が減った上、固定資産税など大半が府に移る。

 12年度決算を元にした試算では、少なくとも約2200億円が大阪市(5特別区)から府の税収に移る。現大阪市民一人当たり年間8万円の減額に相当する。府は特別会計に入れ従前の行政サービスを維持することになっているが、全額繰り入れるわけではない。旧大阪市域で使われる額、使途は府主導で決まる。「住民サービスは従来どおり、市が行っていたものを府が引き継ぐ」というのは、言葉だけで保証は何もない。

 5つの特別区のうち3つは政令市の要件である人口50万人を超える。だが権限は一般市に及ばない。「福祉・教育・医療に専念する身近な特別区」が執行できる財政規模は圧倒的に少なくなる。これは実際に起きている。東京都23特別区。一般市であれば自らの財源となるものが特別区であるために都の収入となり、都から再配分を受ける。23区が設立した特別区協議会は、都区間の財政調整制度は都主導となり問題と指摘し、特別区制度の廃止も求めている。

 橋下は大阪府知事時代に「都構想」の狙いを包み隠さず語った。「大阪市が持っている権限、力、おカネをむしりとる」。大阪市から府並の広域開発を進める権限を取り上げ、都市計画税など大阪市の収入であった税を府にむしりとるために大阪市を廃止する。それはとりもなおさず、住民サービスに向けられる予算の削減を意味する。

 「身近な公選区長が住民の声を聞いて、福祉・教育・医療を充実させる」ことがまやかしであることは橋下市政を見ればわかる。政令市解体は政府や大阪府にとって都合がいいだけで、住民にとっては百害あって一利なしなのだ。

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 改憲勢力は、デマ、ごまかし、何でもありの「大阪都構想」住民投票を憲法改悪の国民投票の予行演習と位置づける。自民党本部は大阪府連が行う都構想反対キャンペーンに費用は出さない。公明党は市議選途中で反対を「解禁」したが、住民投票実施賛成の責任は重大だ。安倍首相は橋下・維新を取り込むために「都構想」実現に動き、自公維新による戦争・改憲連合の形成を図った。こんな危険な「都構想」に絶対多数の反対票を突きつけよう。改憲の動きをストップさせよう。

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