2015年06月26日発行 1384号

【1384号主張/安倍が戦争法制に固執するワケ/軍事力のグローバルな先制発動】

苦しい「合憲」弁明

 政府は、憲法審査会での参考人全員「違憲」陳述に衝撃を受け、戦争法案「合憲」の弁明に躍起になっている。

 安倍はドイツでの記者会見で「国民の命と幸せな暮らしを守ることは政府の責務。憲法の基本的な論理は貫かれている」と述べた(6/8)。政府が国会に提出した文書(6/9)も「国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置。従来の憲法解釈との整合性は保たれている」とした。

 しかし、戦争法制づくりのバックボーンである「積極的平和主義」について安倍が海外で語る際は、「国民の命」「幸せな暮らし」「国の存立」といった言葉はいっさい登場しない。

相手よりも先に攻撃

 例えば、米国の保守系シンクタンクにおける演説(13年9月)。「私を右翼の軍国主義者と呼びたければ呼べ」とすごんでみせたあの演説だ。「日本は、米国が主たる役割を務める地域的またグローバルな安全保障の枠組みにおいて、鎖の弱い環であってはならない。脅威が国境を越えた世界で任務を果たす。世界の繁栄と安全保障に掛け値なしの貢献者となる。私は愛する国を積極的平和主義の国にしようと決意している」

 各国の政財界首脳が集まる世界経済フォーラム(14年1月、スイス・ダボス)の演説では、日本が平和に貢献した国として、いずれも自衛隊が派遣されたカンボジア、フィリピン、ジブチの3つをあげ、「どの国も一国だけでは平和を守れない。世界の課題解決には、国と国、人と人の連携が不可欠。新しい日本は積極的平和主義の旗を掲げる」。演説後の各国メディアとの懇談で、日中関係を第1次大戦前夜の英独関係になぞらえる時代認識をふりまいて顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 第13回アジア安全保障会議(14年5月、シンガポール)の講演ではこうだ。「自衛隊は南スーダンで汗を流している。そこにいる各国NGOに武装勢力が襲いかかっても、自衛隊は助けに行けない。それでいいのか。国際社会の平和と安定に多くを負う日本として、もっと積極的に世界の平和に力を尽くしたい」

 このように、安倍の積極的平和主義は日本国民の「命」や「幸せ」とは全く無関係。グローバルな安全保障(=軍事力展開)に参画し、地球の裏側まで自衛隊を送り出すことだ。積極的(proactive)とは、辞書によると「事が起きるのを待って対応するのではなく、事を起こすことで状況をコントロールする」。つまり、相手に先んじた軍事力の発動によって自らの利益を実現することを指す。「○○事態」「××事態」と戦争法案が書き並べているのはすべて、海外で武力行使に踏み出すための方便でしかない。

歴史の修正許さない

 安倍はポツダム宣言について「第6項の世界征服の部分を含め、当時の連合国側の政治的意図を表明した文書」と説明した(6/1)。日本に世界征服の野望があったというのは勝者のプロパガンダにすぎない、とする歴史修正主義丸出しの歴史認識だ。

 侵略と植民地支配の過ちを現代によみがえらせる戦争法案を絶対に止めよう。止めることはできる。6月24日、国会包囲行動に全国から総結集しよう。

  (6月11日)
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