2015年12月25日発行 1409号

【未来への責任(190)植民地歴史博物館の建設へ】

 11月14日、東京で「『植民地歴史博物館』と日本をつなぐ会」の結成集会が開催され、約80名の参加者で会場はいっぱいとなった。

 今、韓国では「植民地主義の克服と東アジアの平和を実現するための運動の発信地」にしていくことを目指し、「植民地歴史博物館」の建設に向けた取り組みが進められている。建設を呼びかける民族問題研究所は1991年に韓国の民主化とともに発足し、すでに7万点余りの日帝植民地支配の資料等を収集している。これをベースに2016年中にソウル市内に博物館を建設しようというものだ。「つなぐ会」はその建設運動を日本側で担う団体となる。

 結成集会では、「つなぐ会」共同代表の庵逧(あんざこ)由香立命館大学教授、任軒永(イムホニョン)韓国建設委員会代表(民族問題研究所所長)のあいさつに続き、太平洋戦争被害者補償推進協議会共同代表の李熙子(イヒジャ)さんが発言した。「植民地歴史博物館は、韓国に来られた日本の方々が誰でも、いつでも訪れることができ、被害者・遺家族と出会える場、さらに日韓の市民と後世たちが出会える場になる。そのような出会いを通じて、また新しい縁ができ、新しい力がつくられていくでしょう」とアピールした。

 シンポジウムのパネリストは池田恵理子さん(wam「女たちの戦争と平和資料館」館長)、樋口雄一さん(高麗博物館館長)、そして韓国から金丞垠(キムスンウン)さん(民族問題研究所資料室長)。池田さんは、開館10年を迎えたwamについて「戦時性暴力の被害と加害の証言と資料を集めた日本で唯一の資料館」であり、「慰安婦」の記憶を抹消しようとする動きの強まる中で是非とも必要なものだったと報告。樋口さんは「この植民地歴史博物館は、本来日本が作らなければならないもの」と強調しつつ、韓国と日本には民衆の連帯の歴史もあり、「日本人にとっても大きな学びの場」になると訴えた。

 金丞垠さんは「記憶の力、真実の力―韓日市民連帯の歴史で満たす植民地歴史博物館」と題して資料を紹介し、博物館の構想を報告した。現在、韓国に5枚しかない「(三一運動の)独立宣言書」のうち1枚が所蔵されている。石川という検事が残した「大正8年(1919年)保安法事件」の綴りの中で見つかったものだという。

 貴重な植民地期の資料は、立命館大学国際平和ミュージアム等で開かれた特別展示「巨大な監獄、植民地朝鮮に生きる」や韓国国会図書館で開催された「侵略神社靖国」特別展など、すでに多くのところで活用されている。建設にあたっては、このような資料をさらに集中し、研究・展示するとともに、総合的なアーカイブスを構築する。

 今後の日本での取り組みとしては、1口1000円の建設賛同金(10口以上フリーパス券贈呈)、資料提供への協力が呼びかけられている。共同で作り上げたい。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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