2016年01月01・08日発行 1410号

【ウソつき安倍の「新三本の矢」を斬る(2) 絵に描いた餅≠フ「希望出生率1・8」 貧困拡大しどこが子育て支援か】

 「アベノミクス第二ステージ」は、第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」として「希望出生率1・8」を目標に掲げた。だが、これも絵に描いた餅=B安倍の進める政策では、若者は結婚も子育てもできなくなる一方だ。

現実から離れた希望

 希望出生率とは「若い世代の結婚・出産の希望が叶うとした場合の想定の出生率」。なぜ「1・8」か。民主党議員の質問に答えた厚労省担当者は、国の調査で結婚を希望する若者が約9割に上ること、夫婦が希望する子どもの平均数2人を挙げて「0・9×2=1・8」と説明した。まさにただの希望≠ナある。

 現実は、少子化が止まる気配のない厳しい状況だ。出生率の直近10年間での平均値は1・37である。突然3割増とならなければ1・8には達しない。現実性はなく、「夢をつなぐ」「希望」という口当たりがいいだけのスローガンでしかない。

 問題はそれだけで済まない。国家が人口政策を掲げた時は人権侵害が起こる。戦争中の1941年に人口政策が閣議決定され、そのときのスローガンが「産めよ、増やせよ」であった。いわゆる骨太の方針が「50年後に人口1億程度」を掲げたことで、人口政策が実に73年ぶりに閣議決定された。菅官房長官は9月29日、ある芸能人の結婚にふれて「女性は子どもを産んで国家に貢献して」と発言した。権力者の根底に流れる思想は今も昔も変わらない。

少子化の原因は経済問題

 なぜ少子化が止まらないのか。経団連の報告書「人口減少への対応は待ったなし」(4/14)がその答えを示している。同報告書は、人口減少の主な原因は未婚率が上昇したことにあり、その背景を「結婚後の家計を維持することができるかどうかという経済的問題が、若者の結婚行動を妨げる大きな要因」と分析する。経済的問題が少子化に大きく影響していることを経団連も認めざるをえない。

 経済的問題の重要性は、厚労省の「人口減少社会に関する意識調査」(10/27)からも明らかだ。若者世代が出産・子育てに前向きになるために必要なことの質問に対し、最も多かったのが「安定した雇用と収入」(複数回答)72・4%。親世代に子ども夫婦への育児支援上の制約を問うと「経済的余裕がない」35%が1位だった。経済的問題は少子化の決定的要因だ。

 雇用の非正規化・不安定化と低賃金が貧困をもたらし、結婚をしたくてもできない状態を作り出している。政府も財界も少子化の原因を知りながら改善しようとせず、貧困を深刻化する政策を強行している。少子化対策には、まず雇用の安定と賃上げが最優先されなければならない。

待機児童問題も解消されず

 緊急対策では「希望出生率」について20項目が上げられた。うち「特に緊急対応」の4項目は、不妊治療への助成拡充、待機児童解消のため50万人の整備拡大と認可保育所等の整備前倒し、認可保育所以外の多様な保育サービスの受け皿整備、三世代同居と近居の環境整備である。

 中でも保育所関連の対策は問題だらけだ。50万人の整備拡大が打ち出されているが、45万人分については市町村がすでに整備計画を出しており、5万人分の上乗せにすぎない。潜在的な保育所利用希望者数は100万人を超えるといわれ、このままでは待機児童問題はいっこうに解決しない。

 増える保育所需要にどう対応するのか。前述の経団連報告書は、待機児童解消のために「株式会社を含めた多様な経営主体の参入を促す視点も重要」と提言している。これを受けて無認可保育所以外の多様な保育サービスが「特に緊急対応」とされた。すなわち、保育士ゼロでも運営できる小規模保育所を増やそうというのだ。そこには儲けのための保育所設置の狙いがあり、保育水準を維持し高めることなど二の次でしかない。

 「夢をつむぐ子育て支援」というなら、安心して子育てのできる雇用と賃金を確保し、認可保育所増設をはじめ公的責任で保育環境を整えることが不可欠だ。安倍はそれと真逆の道をひたすら歩もうとしている。
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