2016年01月01・08日発行 1410号

【寄稿/日印原子力協定「原則合意」に抗議する/戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション(コアネット)事務局長・三ツ林安治さん】

 12月12日、訪印中の安倍首相はインドのモディ首相と会談し、日本の原発メーカーの機材と技術を輸出するための原子力協定について「原則合意」したと発表した。

 戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション(コアネット)は、満身の怒りを込めてこの暴挙に抗議する。

核開発に拍車

 以下、この日印原子力協定の「原則合意」を批判する。

 第一に、インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、2度の核実験を行い、現在も核兵器増産を目指していることである。

 インドは1998年の2度目の核実験の後、「自発的な」モラトリアム(一時停止)を宣言した。これを「評価」して、米国やフランスなどインドに原発を売り込みたい国々で構成されるNSG(原子力供給国グループ)がNPT枠外での原子力協力を認めたことから、インドでの原発建設に拍車がかかった経緯がある。インドはIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れるなどNSGの要求に一部応えてきたが、「核実験を行えば協力は中止」という条項の挿入は、米印間の協定でも拒否してきた。

 日印協定をめぐる交渉でもこの点が最大の障害とされてきた。これは2010年、当時政権にあった民主党が「岡田外相の条件」としてこの条項の挿入を協定締結の前提としたことによるとされる。被爆国日本が核兵器の開発を進める国への核協力など決してしてはならない。

 にもかかわらず、「原則合意」の中にはこのことに関わる文言はない。合意についての「覚書」では「必要な国内手続きに関するものを含む技術的詳細が完成した後に署名」とされている。また、朝日新聞(12/13)によれば、日本政府は「安倍首相は、インドが核実験を行った場合は協力を止めることを伝えた。この発言がインドへの歯止めになる」とする。だが、2国間の協定で文書化されない約束が歯止めになるはずがない。

 懸案とされていた「使用済み核燃料の再処理容認」の扱いも明らかになっていない。「技術的詳細」と表現されているところを見れば、米国が定めたのと同様に、日本が関与する原発で使用されたウラン燃料の核反応後のプルトニウム転換を「技術的」に計算することで兵器転用を防ぐことを意味すると考えられる。しかし、仮にこれが可能だとしても、査察を受けないインド国産ウランからの軍事用プルトニウム転換が行われ、隣国パキスタンとの核軍拡競争が激化することは明らかだ。

 批判の第二は、福島原発事故が収束しておらず、多くの被害者が被曝に苦しんでいるさなかに、他国への原発輸出を拡大して原発産業の延命を図ろうという姿勢は決して許されないことである。

国際署名4千筆

 私たちは、核兵器廃絶、反原発に取り組む団体と共同で11月「日印原子力協定阻止キャンペーン」を行ってきた。

 その成果は、1週間足らずで世界で4千筆近くを集めた「国際アピール賛同署名」、広島市長と長崎市長の連名による「協定交渉の中止要請」に結実した。インドでは、ジャイタプールのヴャイシャリさん、デリーのクマールさんたちが連日の抗議行動に取り組み、その写真などがフェイスブックを通じて世界中に配信された。彼らは、「原則合意」にも屈することなく運動を強化すると伝えてきた。

 今回協定の正式調印ができず、今後にゆだねられたのは、安倍―モディの弱さの表れである。私たちは、インドをはじめ世界中の友人と連帯して正式調印阻止に向けて引き続き行動する。

 闘いはこれからだ。



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS