2016年01月01・08日発行 1410号
【非国民がやってきた!(223)尹東柱(4)】
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尹東柱の詩集『空と風と星と詩』には、「序詞」と、18篇の詩が収められました。
「人里離れた井戸」の中に月と雲と空と青い風と男を見出す「自画像」。「紅葉(もみじ)のような悲しい秋」の「少年」。「せつない心でぼたん雪」が舞う「雪降る地図」。
「思想がりんごのようにおのずから熟れて」いく「帰って見る夜」。若い女が日光浴をしている「病院」。「峠を越えて村に」続く「新しい道」。
「みんな訪問客(きゃく)ばかり」の「看板のない街」。「紅(くれない)の花が咲き出した」「太初の朝」。「まっ白に雪」が積もった「また太初の朝」。
そして、「夜明けがくるときまで」が続きます。
すべて死にゆく人びとに
黒い衣を着せなさい。
すべて生きゆく人びとに
白い衣装を着せなさい。
誰かが「俺」を呼ぶ「怖しい時間」。「陽の光」が十字架にかかる「十字架」。「風が吹いて」では、「ただ一人の女を愛したこともない。時代を悲しんだこともない。」と歌う。「白いチョゴリ・チマ」の「哀しい同族」。暗い夜を「眼を閉じてゆく」。
ふるさとへ帰ってきた夜
おれの白骨がついて来て 同じ部屋に寝転んだ
暗い部屋は宇宙へ通じ
天空(そら)からか 音のように風が吹いてくる。
こう始まる「もうひとつの故郷」は、「白骨にこっそり 美しいもうひとつのふるさとへゆこう。」と終わります。
尹東柱が「白骨にこっそり」旅立った「美しいもうひとつのふるさと」とはどこだろうか、と誰もが問わずにいられないことでしょう。
1941年の「もうひとつの故郷」は予言詩ではありませんから、1945年の尹東柱の「もうひとつのふるさと」を想起するのは適切ではありませんが。
「失くしてしまいました。なにを どこで失くしたのかわからず」と始まる「道」は、次の2連で終わります。
草一本ないこの道を歩いてゆくのは
石垣の彼方にわたしが残っているからで、
わたしが生きているのは、ただ、
失くしたものを探し索(もと)めるためなのです。
「秋の星々をひとつ残らずかぞえられそうです」としながら、「今すべてかぞえられないのは」、「まだ私の青春がおわっていないからです。」と確認する「星をかぞえる夜」は、「星ひとつに美しい言葉をひとつずつ唱えてみます」と母に呼びかけます。 |
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