2016年01月01・08日発行 1410号

【戦争法廃止、辺野古新基地止め、改憲阻む/地域を変革し支配を打ち砕く】

 安倍政権は戦争法国会通過を強行し、執拗に改憲策動を続けている。だが、反原発闘争から戦争法反対闘争へと連なる闘いはかつてない市民の立ち上がりを生み出した。世界に目を移すとグローバル資本主義諸国は「対テロ戦争」に突き進んでいる。グローバル資本の戦争政策と対決する闘いの到達点と展望をMDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長に聞いた。(12月11日、まとめは編集部)



 パリで悲惨なテロ事件が起きた。その時、オランド仏大統領はベルサイユ宮殿に上下両院の国会議員を全員集めて大演説をし、IS(「イスラム国」)を打倒すると宣言した。仏大統領がここで上下両院合同会議を開き演説したのは、この150年間で2度目だといわれる。なぜ、このような異例なことをしたのか。

 オランドは人気低迷を打開したかった。そこに、テロが起きた。9・11テロのブッシュにならい、全員でラ・マルセイエーズ(フランス国歌)を歌い全員で対テロ戦争への決意を新たにした。そして、オランドは原子力空母シャルル・ドゴールを派遣し、空爆を圧倒的に強化した。

 だがテロの原因は、グローバル資本の側にある。彼らが移民・難民を社会の底辺でこき使い搾取している。その子どもや若者たちは将来に展望を失い、社会を変えていく展望も失って、絶望的な社会を破壊する行動に出る。テロの土壌をどんどん作り出している。しかも、その難民なるものを生み出しているのは、米国やグローバル資本主義諸国が寄ってたかって引き起こしたアフガニスタン戦争、イラク戦争、シリア内戦であり、対テロ戦争だ。

 難民を生み出し、入国した難民を搾取・差別しテロの土壌を増やしている。テロリストたちの資金・武器の供給源は、グローバル資本主義大国やその意を受けたサウジアラビアなどだ。テロは彼らが作り出したものだ。

ウソで改憲隠す安倍

 自ら生み出したテロを利用し、ブッシュがそうだったように、オランドもまた、自分たちの石油利権のために、中東・アフリカ全体の支配に踏み出している。空爆強化は直接的には軍需産業が大いに利益を得る。同時に、彼らは民主的権利を抑圧している。

 ベルサイユ宮殿で、オランドは非常事態を3か月間に延長すると宣言した。現行法の下では12日間しか許されていないにもかかわらずだ。現在パリでは集会・デモは禁止されている。そして、令状なしの無差別家宅捜索が平気で行われている。

 パリのテロは、オランドにとっては渡りに船≠セったということになる。グローバル資本は、中東・北アフリカ民主革命や米国のオキュパイ運動、欧州の緊縮財政反対の闘いの広がりに対抗する方策としてテロを利用している。

 安倍は、今のフランスを見て、同じようにしたくてしようがないんだ。

 日本も軽空母を建造し侵略のための軍拡に走っている。アフリカ・ジブチに自衛隊の基地を作り中東・アジア全域に出ていこうとしている。そのために安倍は戦争法を強行した。

 だが、戦争法阻止闘争の展開と高揚は安倍政権に大きなダメージを与えた。これは戦争勢力にとって計算外だったと思う。彼らは、改憲に有利と考え選挙権を18歳に引き下げたが、戦争法に反対し18歳から20歳代の学生たちが随分立ち上がった。その中で、公明党は動揺し、民主党の改憲派議員も最後まで法案に反対せざるを得なかった。安倍らは危機感を抱いた。その総括のもとに打ち出してきたのが「新三本の矢」だ。

 直接的に改憲を言わず、論点を経済政策にそらせて議席を確保しようという魂胆だ。

 だが、「新三本の矢」も底が割れている。

 「介護離職ゼロ」というが、介護離職は彼らが公的な介護制度を切り捨ててきた中から起きている。できる根拠は何もない。子育て支援にしたところで、保育所の整備というけれども、非常に水準の低いおよそ保育≠ニ呼べないものをたくさん作り保育士資格を持たない人まで関わらせる。社会を担う子どもたちを育てるために予算を割く気は一切ない。そのくせ、法人税減税など税制改革は富裕層・大企業優遇だ。

 年金財政にしたって、この間の株価下落で約8兆円の損失を出した。リーマンショッククラスの下落なら、20兆円を超える損失だったという。将来の国債や株価の大暴落で年金支給不能となる事態まで視野に入ってきている。

 アベノミクスは薄氷を踏むどころではない。すでにバリバリと割れだしているんだ。

新基地は自衛隊のため

 目先をそらすために直ちに改憲は言わないといっても、実態を進めようとしている。

 そのひとつは、沖縄の辺野古新基地建設だ。政府と県の集中協議で政府は話し合ったふりをしただけで全く論議を進展させようとしなかった。その後、いろんな手を使って工事を続行している。だが、今行っているのは本体工事の準備作業にすぎない。それを「本体工事」と呼んでいる。注意が必要なのは、安倍政権の特徴はこのように平気でうそをつくことだ。しかも本人もそれを信じ込んでいる。

 辺野古で計画されているのは100年、200年と居座り続ける恒久基地だ。普天間のような狭い基地ではなく、もっと大規模だ。こんなものは「移設」ではない。政府は「普天間基地が危険だ」と新基地を建設するというが、計画どおり進んだとしても完成まで10年はかかる。普天間基地が危険だというのなら直ちに何とかしなければならないのに放置すること一つとってもでたらめだ。つまり、在沖米軍に基地を提供するにとどまらず、本当の目的は自衛隊が使うことにある。これは我々も当初から指摘してきたことだが、かなり広く定着してきた。

 戦争法の具体化としての辺野古新基地建設に対する現地の運動は、自己決定権の確立をめざして怒りを集中し大きく高揚している。しかも本土にも運動は広がっている。東京から警視庁の機動隊を国費で沖縄に派遣し暴力をふるうなど、でたらめな弾圧や強硬姿勢に対する怒りが広がっている。これから先、裁判や様々な県の許可権限を考えたとき、政府が越えなければならないハードルは高い。日本政府がもたついているうちに米国政府の方が自分たちの戦略が完全に狂わされることに恐れを抱く可能性もある。ひとつずつ闘いを積み重ねれば勝てる運動だ。

維新は改憲パートナー

 辺野古新基地が戦争法実質化、改憲と戦争への既成事実化だとすれば、その政治体制づくりを狙ったのが、11月の大阪ダブル選挙だ。

 結果は大阪維新の会の勝利だったが、国政政党・おおさか維新の会を存続させようとする安倍政権の強い支援があった。安倍改憲路線の重要な手ごまとしておおさか維新を使うためだ。

 安倍政権は、中央レベルで公明党もあわせ共闘するために、おおさか維新を育てなければならない。維新を育てることによって改憲勢力で参院の3分の2を確保できると考えている。橋下維新は、W選挙に負ければ完全につぶれるから、それは困るとあらゆる援助をした。大阪に出向いて関係者に会ったり、公明党中央から大阪の公明党に対して自民党候補を支持することがないよう圧力をかけ、結果、公明党支持者たちは基本的には選挙に行かなかった。自民党の中にも様子見で中央本部に従う人たちも出てきた。

 消費税軽減税率の自公合意をうけて、橋下はツイッターで「これで完全に憲法改正のプロセスは進んだ。参院選で3分の2を達成すれば、いよいよ憲法改正」と書き込んだ。そして「安倍官邸恐るべし」とおべんちゃらを言う。改憲のパートナーだ。

 安倍は改憲に向けて、辺野古新基地を一地方の問題だと片付けようとし、おおさか維新を存続させて野党を分断する。おおさか維新は次期参院選で全選挙区で候補を立てると言い、野党を分断しようとしている。

 安倍や橋下などグローバル資本の手先は、民衆に対して「納得してもらわなくて結構」という路線だ。

 正社員はハードな労働で、非正規労働者は非常に低い賃金と劣悪な労働条件で苦しめられ、目の前の生活のことしか考えられない。新聞やテレビも見ず、社会や政治について考えられないようにしておいて、自分たちの勝手な政策を押し付ける。「新経済政策」だの、「希望出生率1・8」「大阪都構想」などをパッとぶち上げる。そんなもので民衆の生活がよくなるわけがないことはすぐにわかるのだけれども、小選挙区制度を利用して2割以下の支持でいい、その瞬間、瞬間の支持だけあればいいという無責任な立場だ。

 自民党の古い人たち、元議員だった人たちは、少なくとも正統性をもった支配をしようとしていたから、正統性など眼中にない安倍のこうしたやり方を批判する。

 自己増殖する価値≠ニいうのが資本の定義だ。グローバル資本主義によってここまで膨れ上がった資本が今まで以上の利潤を上げなければならない。

 だが、これほど搾取を強化して賃金を抑制し、非正規労働者を増やしているわけだから、買い手がいなくなって利潤もだんだん少なくなってくる。

 そうなると、社会保障の分野や福祉・医療といった生きるために最低限必要な分野にまで手を突っ込んでくる。たとえば病気になるのを待つのではなく、必要のないワクチンを打たせる。効果も怪しい薬を売りつけるために検査値の基準を上げたり下げたりする―あの手この手で「病気」を作り出し製薬資本を儲けさせる。その結果、健康保険財政が赤字になれば、健康保険料を増やし公的医療給付を減らして民間保険会社が有利になるようにする。また、軍需産業のように需要は政府にしかなくとも、対テロ戦争をあおることでその正当性・必要性をアピールして軍事費をつぎ込む。そういう手口で何とか自己増殖≠維持しようとしているのだ。

 そんな手口もだんだんわかってくる。中東・北アフリカでも、米国、欧州でも、日本でも戦争法反対闘争などあちこちでグローバル資本の支配が大きく揺さぶられ後退してきた。その中で、何とか巻き返そうとしている。だが、瞬間的に安倍政権の支持率は上がっても、アベノミクスは失敗する。辺野古新基地建設も支持されない。安倍はこのような状況で参院選、あるいは衆参同時選挙を考えているかもしれないが、乗り切らなければならない。

 連日連夜にわたり数万人が国会を包囲し、全国で展開された戦争法反対の闘いは、国会内での反対の動きをも強め、国会通過を大幅に遅らせた。この闘いを受けて、戦争法廃止の野党共闘が提案され、共産党の連立政権構想も打ち出されている。次の参院選で戦争法廃止の議員を一人でも多く生みだし、戦争法廃止・護憲勢力の結集を実現する。その展望は、辺野古新基地建設反対運動や戦争法廃止2000万人署名運動の力で切り開くことができる。

展望は地域変える闘い

 グローバル資本の意を受けた安倍は、少数支配を維持するため、ブッシュに学んだオランドのように、戦争を挑発し、やれ非常事態だ、秘密保護だと人権を抑圧し、黙らせようともくろんでいる。

 権力の側も必死だから、例えば橋下が職員に押し付けた入れ墨調査や「君が代」の口元チェックのように「自ら進んで従え。立場を鮮明にせよ」と迫ってくるだろう。それほど彼らも不安なのだ。集会ひとつとっても「政治的だ」といって公共施設を使わせない、大学も使わせない。日野市のように封筒に印刷された「憲法」の文字すらわざわざ消す。そういう地域末端に至るまでがんじがらめに思想統制し、秘密保護法で抑圧する。

 マイナンバーも、地域で、企業でまとめてカードを取得させる動きを作ってくると思う。いずれは、身分証明書として携行を義務付けるという格好にするかもしれない。情報産業に膨大な資料を提供することでもあるが、本質的には、国民一人ひとりの情報を一元管理し支配する体制がほしいのだ。グローバル資本の側が少数であるのは間違いないけれども、支配を維持するための政策を見過ごしたり、「この程度のことなら」と軽く見たり、「自分一人が…」と躊躇(ちゅうちょ)すると、彼らにからめとられることになる。

 安倍のこの戦争政策と人権抑圧にMDSはどう闘っていくか。

 今年は非常に大きな変化を遂げた。それは、春の地方選から始まっている。われわれは東京・大阪で「平和と民主主義をともにつくる会」の候補とともに地域変革でグローバル資本と根本的に対決した。結果、東京足立区で当選し、大阪で前進した。

 地域変革とは何か。グローバル資本による民衆支配の具体的政策は、貧困、非正規雇用、教育・医療・福祉切り捨てとして地域で顕在化する。その最先端で闘い、解放を勝ち取り対決することだ。

 大阪では、他候補があいまいな態度をとった橋下維新の大阪都構想を明確に批判し地方選挙を闘った。これにより都構想に焦点が当たり、住民投票で都構想ノーを突き付けて勝利した。さらにそこから戦争法反対への市民投票運動を展開し、地域の運動を作り上げた。

 グローバル資本の支配との最前線で、まさに民主主義を貫徹し闘っていくという方向を打ち出せた。

 戦争法反対闘争の新しさは学生・青年層を含めて全階層が立ち上がったことにある。貧困で疲弊させて何も考えられないように仕向け、力で抑圧し、民衆に声を上げさせないという権力の思惑は完全に崩れた。「発言させない」という一点を突破した民主主義の力は、安倍の支持率が少し上がったくらいでついえるものではなく、これからより強固に構築していける。

 その展望は、辺野古新基地反対の大きな闘いであり、戦争法廃止の2000万人署名の運動にある。

 2016年、新基地阻止、戦争法廃止、改憲阻止を闘い、参院選での野党共闘を築き、安倍を打倒して勝利することは可能だ。

 MDSは民主的変革目標を堅持し、情勢を分析し、方針を討議し、行動する。グローバル資本とのせめぎあいを突破し、解放されるために、MDS組織の存在が意味を持つ。

 MDSに結集し、ともに闘いましょう。









ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS