2016年01月15日発行 1411号

【IRAQ―戦争と抑圧のない世界へ―JAPAN/イラク政府 賃金40%削減の新体系導入/撤回求めるデモ・ストが拡大】

 2015年10月13日、イラクのアバディ政権は公営企業の労働者の賃金を40%も下げることを狙った新賃金体系を決定した。石油価格の下落による政府収入の減少と財政悪化を労働者の賃金を極限まで切り縮める緊縮政策で乗り切り、新自由主義路線を進めるためだ。

 労働者、市民はこんなやり方を認めない。

あらゆる職種で闘い

 12月7日、マイサン州電力区労働者が2か月間にわたる賃金不払いに対し州政府ビルの前で抗議デモを行った。参加者は「マイサン州電力区の2850人の労働者が賃金を受け取っていない」と怒りをぶつけた。

 同14日、ワーシット州政府に勤める契約労働者が10か月以上の賃金支払い停止に抗議して州政府ビル前でデモを行った。参加者のアブドラーさんは「賃金未払いは初めてではない。何日も何か月もたっても解決しないから、州政府と首相に私たちの声を届けるためにデモをしている」と訴えた。

 首都バグダッドでは16日、中央選挙管理委員会の契約スタッフが常勤雇用を要求してデモを行った。17日にはイラク国営銀行の労働者が新賃金体系に反対してデモとストライキを敢行した。

 労働者の権利獲得の闘いは全国に、あらゆる職種へと広がっている。

 特筆すべきは石油労働者の闘いだろう。11月1日、バスラにあるイラク最大の石油企業、南部石油会社の本部前に数百人の石油労働者がデモを行って、政府の新賃金体系撤回を要求した。このデモには南部石油会社、バスラ・ガス会社の労働者擁護委員会、ディカール油田の労働者などが参加した。南部石油会社労働者委員会のアブ・ワタンさん(2015年全交に参加)は訴えた。「石油企業で働く兄弟である労働者こそが歴代の政府を成り立たせた基礎なのだ。イラクの富である石油を生み出している労働者がまともな生活をすべて奪われる。腐敗した連中が盗み取った富はそのままに、我々には鉄のこぶしで殴ってくる。すべての労働者が団結して声を上げよう。我々は権利を求める」

直接交渉で成果

 12月17日には南部石油会社の労働者3千人がバスラ会計監督事務所の前でデモを行った。会社はこれまで売り上げからバスラ州に1930億ドル(約23兆円)を納めている。だが、一定以上の余剰利益が出た場合に労働者に分配する契約を無視し、過去2年間で2千億ディナール(約217億円)の分配金を労働者に支払っていない。アブ・ワタンさんは「会社は油田開発費用に充てようとしているが、裁判所は余剰利益の分配と投資費用は分離しなければならないと命令している」と訴えた。

 石油労働者は、バスラ州知事、財務省当局との直接交渉で余剰利益の50%の支払いを受けることで合意した。さらにトルコがIS(「イスラム国」)対策を名目にモスルに地上軍を派兵したことに即時撤退を要求している。

 イラク労働者はグローバル資本の搾取と戦争政策に反対し立ち上がっている。



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