2016年01月22日発行 1412号

【ミリタリー 着々と進む軍学共同 カネで戦争協力を誘導】

 大学の軍事研究に反対する署名運動が始まっている。日本学術会議現会長が学長を務める大学が昨年7月の防衛省の戦後初の軍事に関する研究公募に応募し、採用されるという驚くべき事態が起こっているからだ。

 日本学術会議は日本の学問研究者を代表する機関とされる。同会議は、前の大戦で、学問が戦争に全面的に加担した歴史への反省に立って1950年「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、67年「軍事目的のための科学研究を行わない声明」の2度にわたって軍事研究は行わないことを宣言した。この宣言に込められた日本の研究者の良心と誓いを公然と投げ捨てようとするのが現会長の姿勢である。

 2度の宣言を投げ捨てるとの批判に対し、会長は「2つの声明は共に堅持している。戦争目的の軍事研究は認められない。だが、自衛まで否定されているとは思わない」と居直る。防衛省、自衛隊所管の軍事、武器研究なら戦争目的ではない=\自衛≠ニさえ言えば、憲法や国際法が禁止する戦争や軍事とは違うという戦争勢力の使い古されてきた屁理屈である。

 この会長の態度は決して唐突なものではない。14年の東大五月祭では自衛隊のブースが出された。大学と自衛隊の間にもはやバリアーは存在しない象徴的な風景だ。軍学共同は着々と進んでいる。東大大学院情報理工学系研究科は同じ14年12月にガイドラインを変更し、「一切の例外なく軍事研究を禁止」とした文言を「軍事・平和利用の両義性を深く意識しながら個々の研究を進める」と改めた。

 昨年、防衛省が大学・研究機関などに1件当たり最大年3千万円を提供して技術開発を支援し、防衛装備品(兵器)への活用を検討する「安全保障技術研究推進制度」を始めたことで大学・研究機関から応募が急増した。資金提供は防衛省だけでなく、米軍や他の省庁、政府機関も行っている。国立大改革や独立行政法人化による予算削減で研究費を締め付ける一方、防衛省や米軍が資金提供というエサをぶらさげる。こうして大学の自治や学問の自由は政府・防衛省、米軍が操るカネによって確実に脅かされつつある。

 政府と一部大企業は、世界の武器市場に参入し、武器輸出での大儲けをめざしている。これまで武器市場参入の妨げとなっていた旧「武器輸出3原則」を撤廃し、「防衛装備品移転3原則」なる武器輸出解禁策を打ち出したが、一からの武器開発、軍事技術の高度化はコストがかかりすぎる。

 そこで、「民生技術の積極的な活用」としたのだ。この方針は、「防衛計画の大綱」(13年12月閣議決定)に「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術の積極的な活用に努める」と盛り込まれている。

 教育や学問、研究をアベ政治による軍事大国化の道具にさせない。大学自治、学問の自由を守る闘いは、戦争法廃止を求めるすべての市民の重要な課題である。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会 
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