2016年01月22日発行 1412号

【問題だらけの福島県「支援策」/区域外避難者の帰還促進に導く】

 福島県は12月25日、新生ふくしま復興推進本部会議を開き、区域外避難者への「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」を発表した。避難先にとどまる者に対しては家賃補助と住居移転の初期費用補助、公営住宅等の確保(努力目標)だけで、災害救助法に基づくこれまでの住宅無償提供に代わる新たな支援策とは名ばかり。区域外避難者への唯一の支援だった住宅を奪い、帰還促進に導く内容である。

収入実態を無視

 具体的には、家賃補助は、2017年4月から1年目は2分の1(1か月当たりの上限3万円)、2年目は3分の1(同2万円)を支給。17年4月以前に引っ越しを希望する世帯には数か月に限り前倒しで支給する。引っ越しの際に生じる礼金など初期費用の負担軽減のため10万円を別に補助。応急仮設住宅等からの退去後、住宅確保が困難な世帯に、公営住宅等への優先的な入居や空き住居の活用ができるよう進める、としている。

 昨年8月段階の福島県の支援策は、避難先にとどまろうとする者には所得300万円以下の世帯への家賃一部補助のみだった。その後、避難者の署名運動や集会、要請行動、また12都道府県からの申し入れなどがあり、今回の発表となった。しかし、焼け石に水、問題だらけの支援策である。

 第1に、避難生活の実態に合わない収入要件を設定し、家賃補助・初期費用補助の対象を厳しく制限した点である。1人世帯は所得金額(給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」の右に記載された「給与所得控除後の金額」)189万円、月額にして約15万8千円以下の者が対象。親子3人世帯は265万円・月約22万円以下、4人世帯は303万円・月約25万円以下の者が対象となる。東京23区内の場合、家賃は2部屋以上なら10万円はかかる。光熱水費・電話代が3〜4万円として、残る額でどうやって家族4人の食費、衣料品代、交通費、教育費などをまかなえるというのだろうか。この基準は、都営住宅の一般向け所得基準表に準じており、非課税世帯を念頭に置いている。被害者・避難者であることに伴う出費増は全く配慮されず、非課税世帯の水準にならなければ1円たりとも支援しない、と言っているに等しい。そもそも避難者への支援を収入で区分すること自体が問題だ。

住まいすら確保せず

 第2は、支援期間2年間の設定である。補助対象となる「低所得世帯」が2年で「自立」する保証はどこにもない。福島県避難者支援課は「打ち切りまでの残る1年数か月と支援2年間の約3年のうちに『自立』のめどを立ててほしい」(12/15キビタキの会などの要請に対する回答)と希望を述べただけで、避難者の平均的な所得の計算や今後の就労状況の把握の上に立ってシミュレーションし判断した2年間ではないことを認めている。県のいう「生活再建に向けた総合的な支援策」にはなっていない。

 第3の問題は、現在の応急仮設住宅等から退去した後の「住宅確保が困難な世帯に支援を進める」とするが、県外にとどまる者への支援は「雇用促進住宅」「UR(都市再生機構)賃貸住宅(旧公団住宅)」くらいである。それさえ、雇用促進住宅は宮城や山形の一部の空き住戸だけで、東京などは対象外。URも、申し込み資格や基準月収額の算定方法の緩和を検討している程度で、希望者の入居確保とは程遠い。県避難者支援課は「県外の公的住宅管理者と協議し、確保の協力を願っている」と希望的観測を述べるにとどまり、県外自治体頼みが実態だ。

抜本的な見直しを

 その他、家賃補助の上限額月3万円とした基準6万円設定の低さ、初期費用(敷金・礼金・運搬費)10万円の低さ、住宅購入・ローン返済者への補助の欠如など問題は多い。

 今回の支援策は、避難先にとどまることを選択する避難者の声―「現在の住居の継続使用」「子どもが大きくなるまでの住宅無償提供」「生活再建のメドが立つまで個別事情に基づいた住宅支援」―に何ら応えるものではない。

 県は1月下旬から、区域外避難者の住宅「意向調査」を開始する。要請行動での追及に「支援策は固まったものではない。緊急性、必要性があれば補正もある。意向調査の結果、再来年度の新たな施策も考えられる」と答えている。抜本的な見直しを粘り強く求めていこう。

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