2016年01月29日発行 1413号

【マイナンバー制度はつぶせる 世論も不安・不要が大多数 個人番号カードはつくらない】

 1月1日からマイナンバー(共通番号)制度の運用が始まった。しかし、市民の多くがこの制度に不安を感じ必要としていない。大企業の利潤を確保し戦争国家を支える徴税強化と監視社会作りを進めるという制度の狙いを暴き、政府が国民に取得を促す個人番号カードをつくらない取り組みを広げればマイナンバー制度はつぶせる。

持ちたくないは65%

 日本世論調査会の全国世論調査(12/5〜12/6)によると、制度に不安を感じる人は78%で、理由は「個人情報が漏えいし、プライバシー侵害」が最多。個人番号カードを持ちたくない人は65%にのぼり、全世代で6割を超えた。制度をよく知っている人は13%しかおらず、キャッシュカード、クレジットカードとしての利用に反対する人は84%、2018年からのマイナンバーと銀行口座をひも付けして徴税強化に使う方針には半数以上の人が反対した。

 政府は利便性を強調するが、個人番号カードは17年7月からの国と自治体の情報連携開始までは身分証明書の役割しか果たさない。それ以降も国税では住宅ローン控除の住民票添付がなくなるのみだ。

 個人が行政手続きを行うことは一生でそれほど多くなく、日常で利便性が向上することはない。そこで、政府は昨年10月の番号法施行前に法「改正」し、18年10月からの預貯金口座への個人番号ひも付けや特定健診・予防接種管理等に利用することを決めた。さらに戸籍、旅券、医療・介護、預金口座への強制付番、自動車検査登録などに利用拡大することを閣議決定している。しかし、多くの市民は、これらを利便性としてではなく徴税強化とプライバシー侵害と見抜いている。

 「個人情報の漏えい」については、日本年金機構の情報流出に加え、昨年末には病院から10万3千人分の健康保険証番号の漏えいが発覚し、厚労省が調査を開始する事件も起きた。17年1月から利用開始のマイナポータル(インターネットサイト)は、個人番号と暗証番号さえ入手すれば個人情報にアクセスできる。政府自身「セキュリティーの面では一段落ちる危険性」を認めている。これらの例は、国、自治体や全住民の情報を集中管理する中間サーバーからの漏えいにとどまらず、従業員から個人番号を収集する民間事業者から漏えいの危険性を示している。

 8割近くの人が不安を感じるのは当然だ。

運用強行で混乱続出

 未配達で市町村保管となった番号通知カードは1月でも362万通に上る。手元に届いていない不達率は6・2%、人口にあてはめると800万人分近くとなる。制度の運用開始は無謀でしかない。

 こうした状況での強引な制度運用の開始は、自治体や民間事業所に混乱をもたらしている。自治体窓口で個人番号を書かないと申請書を受け付けないと言われる(後に撤回)、市の通知カード返戻通知書に「通知カードを受け取らねば住民票を削除」と受け取られる文言を記す(受け取らないだけで職権削除は不可能)、個人番号を書かなくても税務署が受け付けることを知らずに民間事業者が従業員に強要する―などの例が続出している。「いったん運用を止め、制度の必要性の国民的議論を」(1/5琉球新報社説)と主張するメディアも出てきた。

記入なしに不利益なし

 一方、市民団体による交渉や議員の議会質問で、自治体当局が「記載なくても不利益はない」「(個人番号カードの)集団申請は行わない」と確認させている例が増えている。「番号いらないネット」による政府交渉(12/14)でも「個人番号の記入がなくても不利益はない」(内閣府、厚労省、国税庁)と確認させている。これからの闘いが重要である。

 個人番号カードについては、全国で320万枚が申請(1/12読売)と報道されているが、政府目標の3月末1千万枚には遠く及ばない。

 世論に依拠し、個人番号カードを取得しない取り組みが求められる。取得せず所持しないことは、制度に協力しない意思表示となる。制度の普及定着を阻み、所持しなければ盗難・紛失による個人情報流失の心配はなくなる。

 大事なことは、プラスチック製の個人番号カードを持たないこと。これは任意であり、市町村に申請しなければ勝手に作られることはない。グローバル資本は、全国民に個人番号カードを所持させ、生活全般にわたって利用を推進し、個人番号カードのICチップで個人の蓄積された情報を戦争国家を支える監視や企業の利潤確保に使おうと狙っている。

 個人番号カードを持たないことは、番号制度をつぶす誰もができる有効な手段だ。 

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