2016年01月29日発行 1413号

【約束破った国・福島県 富岡町での受け入れ表明した知事 除染廃棄物「最終処分場」】

 福島県富岡町に除染廃棄物の最終処分場を建設する計画を国が提示、12月3日内堀県知事が受け入れを表明した。だが、国は福島県を除染廃棄物の最終処分場にしないと約束し、法律にまで書き込んでいる。この重要な約束を、住民同意もなく一方的に破る国・県の姿勢は許されない。

最後は「金目」で法も破壊

 富岡町は、福島県浜通り、福島第一原発の地元・大熊町のすぐ南にある。隣接する楢葉町とともに福島第二原発の立地自治体だ。



 ここに除染廃棄物の最終処分場建設の計画が持ち上がったのは2013年12月。原発事故以前から民間企業による産業廃棄物処分場として使われていた施設「フクシマエコテッククリーンセンター」(クリーンセンター)を除染廃棄物の最終処分場に転用する案が環境省から示された。原発事故で富岡町が避難指示区域となったため、操業を中止している施設に環境省が目をつけたものだ。

 除染特措法で定められた1`あたり8千ベクレルを超え10万ベクレル以下の廃棄物は被災12都県で合計16万6千トンに及ぶ。これらを処理する計画だ。

 だが、そもそも国は2011年、福島県を除染廃棄物の最終処分場にしないことを法律に書き込んでいる(注)。環境省の提案は、国自らこの約束を破るものだ。

 福島県も、(1)クリーンセンターの国有化(2)安全確保と地元理解(3)富岡町、楢葉町(クリーンセンターへの輸送路が一部通る)との協議(4)この2町の「地域振興策」―を要望しただけだった。県内を最終処分場にしないという法律がありながら、放射能汚染を拡大させ住民を危険にさらす処分場計画を、住民帰還を計画している地域で「地域振興策」つまりカネと引き替えに受け入れるでたらめぶりだ。

 その上、福島県は、富岡、楢葉両町が最終処分場を受け入れば100億円を交付すると表明、受け入れに向け圧力をかけた。まさに「命よりカネ」「最後は金目」だ。

 自分たちが作った法律も破り、住民との約束も反故(ほご)にする―戦争法や新基地を強行し、憲法も平然と破る安倍政権の無法ぶりは福島でも際立っている。沖縄と違うのは、そうした立憲主義、法律破壊に県も加担していることだ。

広がる福島集約論

 「福島県を除染廃棄物の最終処分場にしない」との方向性が変わり始めたのは安倍政権成立後の2013年頃からだ。除染廃棄物の最終処分地選定が進まず、焦る環境省が福島に隣接する栃木や宮城で処分地の選定を強行しようとしたものの、相次いで失敗したことが背景にある。

 栃木県塩谷町(日本有数の観光地・鬼怒川温泉の地元)では住民が予定地につながる林道を封鎖。行動に町長も参加するなど住民・自治体一体の反対運動で環境省の現地調査を阻止した。宮城でも、予定地候補となった栗原町、大和町、加美町の3町が環境省の強引な姿勢に反発し「予定地を返上」すると表明。村井嘉浩宮城県知事が「反対するなら裁判に訴えろ」と恫喝したが地元は屈しなかった。

 加美町長は、福島県飯舘村に建設予定の処理施設で廃棄物を処分する独自案を示した。放射性廃棄物はできる限り集約して保管処理を行い拡散すべきでないとの理由から、除染廃棄物の福島集約論が福島県外を中心に広がりつつある。

十分な安全管理と補償を

 原発事故後の震災がれき広域処理は新たな放射能汚染の拡散を生んだ。放射性廃棄物の保管や処理の拠点について高汚染区域である帰還困難区域への集約という論議が今後行われていくとしても、住民の居住地域に放射性廃棄物の最終保管・処分場を作るべきでないという原則は福島県内にも適用されなければならない。富岡町への最終処分場計画は撤回すべきであり、撤回しないなら、富岡町の避難指示は継続する以外にない。

 最終処分場の建設はいずれ避けられないが、問題は安全管理と補償だ。昨年秋の北関東大水害では、茨城県を中心に大量の除染廃棄物が流出した。今後は除染廃棄物の厳重な管理とともに、帰還できなくなる住民への十分かつ完全な補償が必要だ。

(注)中間貯蔵施設の運営についての「中間貯蔵・環境安全事業株式会社法」で、国の責務として「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」と明記した。
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