2016年01月29日発行 1413号

【安倍のデタラメ答弁/まさに確信犯的反知性主義/ウソとごまかしのオンパレード】

 筋の通らぬ話やウソ八百を並べることに抵抗がない。矛盾や誤りを指摘されてもしらを切り、厳しく追及されると怒り出す…。安倍晋三首相の国会答弁にはこうした特徴がある。“どうせ最後は数の力で決める。答弁などその場しのぎで構わない”と、たかをくくっているのだろう。安倍のデタラメ答弁ぶりを直近の事例から見ていく。

パート25万円論争

 まずはネットで話題となったパート論争から。1月8日の衆院予算員会で民主党・山井和則議員が実質賃金の減少について質問したところ、安倍はこう答えた。

 「景気が回復し雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら、(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから2で割って平均は下がるわけです」

 この発言が「庶民の生活実態をわかっていない」との反発を招いた。実際、パートで働いて月収25万円はまずありえない。「世帯主の配偶者の平均収入」は月6万円程度なのだから(内閣府「家計調査」より)。当然、その後の国会質問でも「感覚がずれている」と批判された。

 すると安倍は「妻がパートで25万円とは言ってない」と反論(文脈上、そうとしか読みとれないが)。あげくのはては「枝葉末節な議論だ。こんなことばかり言っていては、民主党も支持率は上がらないのではないのかと心配している」(1/13衆院予算委)と言い出した。議論とは関係のない民主党攻撃で逃げようとしたことは明らかだ。

 そもそも、今回の件は「月収25万円」が例え話として適切か否かという問題ではない。安倍は「平均賃金が下がったのはアベノミクスで雇用数が増えたから。世帯収入は多くなるので何の問題もない」と言いたいようだが、それ自体が嘘っぱちなのである。

 2人以上の勤労者世帯の「勤め先収入」を内閣府発表のデータからみてみよう。2015年11月は42万5692円。前年11月から5851円、前々年11月からは1万601円減っている。つまり「世帯収入は増えている」との主張は成り立たない。というか、明らかな虚言である。

求人倍率のカラクリ

 「地方にもアベノミクスの成果」説も怪しいものだ。安倍は13日の衆院予算委員会で、地方の有効求人倍率の上昇について「働いている人の絶対数が増えた結果だ」と述べ、自身の経済政策が景気回復に結びついていると強調した。本当だろうか。

 安倍が最近よくとりあげる高知県の例をみると、たしかに有効求人倍率は近年上昇しているが、その背景には求職者が減り続けているという現実がある(前年同月比で33か月連続の減少)。分母にあたる仕事を探す人が減れば、仕事の件数が変わらなくても求人倍率は上がるという寸法だ(図参照)。

 ではなぜ求職者が減ったのか。条件のいい仕事を求め若者が大都市圏に流出したからである(高知県の場合、14年連続で県外への転出が転入を上回る)。これは地方に共通した現象だ。アベノミクスの恩恵などないのである。それなのに安倍はデータを都合よく解釈して成果だと触れまわる。調べればすぐにバレるウソなのに。およそ一国の首相がやることではない。


「拉致利用」で逆ギレ

 痛いところを突かれると逆ギレするのも安倍晋三の特徴だ。先月、拉致被害者家族連絡会元副代表の蓮池透さんが『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』という著書を出した。この本を民主党の緒方林太郎議員が取り上げ、「安倍首相は拉致を使ってのし上がった男なのか。政治利用したのか」と問うた(1/12衆院予算委)。

 これに対し、安倍は「議論する気すら起きない。その質問をすること自体が政治利用だ」と声を荒げて反論。「いまここであなたが批判することが北朝鮮の思うつぼなんですよ」と強弁し、議論を打ち切ってしまった(独自調査がないなど追及の甘い質問も問題。逃げを許した)。

 蓮池本が数々の実例をあげているように、安倍は拉致問題を利用して「闘う政治家」のイメージを作り上げてきた。だが、実際には国民の安全や生命など気にかけていない。福島しかり、沖縄しかり、被害者はいつも置き去りだ。この本性が露呈することを安倍は恐れたのである。

   *  *  *

 このほかにも、根拠のない断定をくり返すわ、都合の悪いことは答えないわ、野党へのあてこすりを連発するわ、野次を飛ばすわ等々、安倍のデタラメな振る舞いは数え切れない。まともに議論する気などないのである。

 ところが、新聞やテレビはそんな安倍の姿を隠してしまう。NHKのニュース番組が典型だが、超絶編集によって国会審議が淡々と進行しているように見せている。アベチャンネルこそ安倍政権の延命装置なのだ。その役割は犯罪的と言ってよい。  (M)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS