2016年02月05日発行 1414号

【みるよむ(385) 2016年1月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan 浸水に苦しむバグダッドの市民の怒り】

 2015年12月、サナテレビはバグダッドで起きている浸水の問題について市民にインタビューした。

 イラクというと熱く乾燥した国とのイメージが強い。たしかに乾季の夏にはほとんど雨は降らず、気温は摂氏50度にもなる。ところが、雨季の冬にはある程度の雨が降る。世界的な大河チグリス・ユーフラテス川の上流の山岳地帯はさらに降水量が多く、川の増水は相当なものになる。

浸水で学校も閉鎖

 映像のはじめ、近代都市バグダッドの路上に水があふれている。場所によっては自動車が川の中を動いているようにさえ見える。これまでもサナテレビは、雨水が排水されず、水があふれ、泥だらけの道路となる雨季の様子を報道してきたが、今回はそれに輪をかけてひどい状態だ。

 ある市民は、こんな事態になっているのに「政府からは誰も来なかった」と怒りの声を寄せる。住居は浸水し、学校は閉鎖されて、子どもは学校にも行けない。バグダッドのあちこちの地域が浸水で機能不能に陥っている。「政府は恥を知れ」と憤る。

 別の市民は「交通が止まり、洪水になり、被害が出て感電する危険があります。亡くなった人もいる」と訴える。人命に関わる大変な事態だ。「投げ込まれた生ごみが排水溝のパイプを閉ざしてしまった」と言う市民もいる。

 占領終結から5年にもなるのに、なぜこんなことが起こるのだろうか。

政府と市当局の腐敗

 バグダッド市の行政当局は何の対策もしていない。サナテレビのナベル・ハミードさんは「政府が排水設備に問題があるのに修理を怠っている」と指摘し、「行政サービスを行う当局が腐敗しているからだ」と批判する。

 この惨状を招いたのは、イラク政府とバグダッド市当局が市民の生活に最低限の資金も回していないからだ。資金は政治家の汚職に使われているのである。日本政府は、こんなイラク政府に数百億円のODA(政府開発援助)を与え、グローバル資本の利権を確保しようとしている。

 イラクの市民と連帯し、日本政府に抗議の声を上げよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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