2016年02月05日発行 1414号

【原爆の図丸木美術館で「牧場−山内若菜展」/命の叫びを描きたい】

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)会場の背景画制作などで本紙読者にもおなじみの山内若菜さん。原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)で個展「牧場」を開くことになった。「運動に携わる方、美術関係者の枠を超えて観ていただければ」と、絵に込めた思いをつづる。

これが私の希望の形 山内若菜

 「私も声をあげよう。私は絵で声をあげよう」。そう思って描いてきた福島の牧場です。

 追いやられてもふんばる人びとや、声なき動物の惨めさがあるけれどその中に人の強さを描きたいと思いました。強い怒り、命の叫びを描きたいと。

 闇は深く、悲しみに引きずられるかとふんばるこの牧場、このまきば。話を聞いたり泊まったりして取材を重ねた浪江町の希望の牧場、飯舘村の細川牧場です。

 そこで見てきたたくさんの場面、“小さい”が“大きい”をつくってきた過程をふみながら、だんだんとひとつの動物になっていき、はからずも無意識にペガサスらしきものが出てきました。不死の象徴の生き物が飛んで行く。これが私の今の希望の形なのだと、絵におそわりました。

 牧場主たちが、こんなもんじゃないといってもらえるくらいの旅をこの先に、つなげていきたいと思っています。牧場を、この先も見ていただきたいです。

「牧場ー山内若菜展」によせて

 美術評論家 中野中(なか)さん

 和紙に水彩と墨による作品は、何を描いたか直截(ちょくせつ)にわかる世界ではない。

 足で歩いて現場に立ち、良く見て感じて、考える。自分の存在の意味を、絵を描くことの本来を。

 そして線を引く、いろんな思いを孕(はら)み、いろんなものを生み出す線が好きなのだ。「今、戦争の時代に生き、3・11の人災の直後に生き、それを肌で感じずに絵が描けるでしょうか」と自問し、発する。
 奇妙に頭の中に残る作品群だった。

  ――――――

 丸木美術館学芸員 岡村幸 宣さん

 浪江町の牧場を取材した際の風景を題材に描いたという壁いっぱいの大作。

 一見儚(はかな)げで、しかし、土と風の匂いのするような作品。現実の風景と心象風景が入り混じったようでもあり、過去と現在の時間が折り重なるようでもあります。

山内若菜さんプロフィール

 神奈川県藤沢市生まれ。99年、武蔵野美大専攻科卒。

 11年から福島や岩手に行きフィールドワーク、福島の母や被曝の牧場を描いた展示を各地で開催。

 13年ZENKO東京大会の背景画『フクシマの母』、丸の内デモで掲げられた『つながりあう火』を制作。

 14年ZENKO大阪大会の背景画『声をあげよう』、ミュージカル『ガマ人間あらわる』のポスターを制作。

 17年ロシア極東美術館で「牧場」巡回展を予定。

牧場ー山内若菜展

 期間:3月5日〜4月9日(毎週月曜日休館)
 会場:原爆の図丸木美術館
 (埼玉県東松山市下唐子1401TEL: 0493-22-3266) http://www.aya.or.jp/~marukimsn/(山内若菜特集ページあり)





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