2016年02月12日発行 1415号

【みるよむ(386) 2016年1月30日配信 イラク平和テレビ局in Japan 美術大学校での男女分離を拒否】

 2015年12月、サナテレビは、バグダッド大学の芸術学部にあたる美術大学校で、イラク政府が進めようとする男女の分離について市民や学生にインタビューした。

 日本では、イラクはイスラム教の国だから女性の髪を隠すヒジャブが当たり前で男女の分離も当然と見られているかも知れない。

 しかし、最初に登場する作家は「バグダッドでは40年前から作家や知識人が『女性のヒジャブやベールの着用にノー』『男性との平等』を呼びかけていた」と語る。イラクは、ずっと政教分離国家であったし、何より市民が男女の同権を求め女性の権利を獲得してきた歴史を持っている。

政教分離の歴史

 メディア関係者の男性は「男女分離をするなら、議会や大統領府で女性が男性と一緒に働くこともやめさせなければなりません」と批判し、「夫と妻のドラマで、政府の連中は男性の頭にカツラをかぶせて妻の役を演じさせたいのです」と皮肉る。

 美術大学校の関係者もはっきり意見を表明する。ある学生は「イランで失敗したイスラム化政策を当てはめようとするイスラム主義政党に耳を貸すな」と主張する。アバディ政権に強い影響を与えるイラン・イスラム共和国でさえ、芸術や演劇の勉強の場で男女分離などしていない。

 美術大学校の教員は、1940年代に設立された美術大学校演劇科が女性の高等教育を受ける機会を提供してきた歴史を語り、「私は男女を分離するこの決定を完全に拒否します」と断言する。

国民の不満を抑圧

 イスラム教シーア派の宗教政党を基盤とするアバディ政権は、学校教育の場に男女分離を強制している。宗教を利用して権力者の意向に従わせ、緊縮政策を押し付けられた国民の不満を抑え込むためだ。かつて政教分離の立場を取ったサダム独裁政権も、自らの支配が揺らぐとイスラム教を社会に押し付けて支配の延命を図った。アバディ政権もこれと同じだ。

 しかし、美術大学校の学生や教職員は、男女分離反対のデモ、集会を開催し、抗議を続けている。人権を求める学生、教職員、市民の闘いに連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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